地上への脱出、救助、そして終局へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)
「千日デパート火災」の記事における「地上への脱出、救助、そして終局へ」の解説
22時50分、ホール内で猛煙と熱気の中をかろうじて凌いでいたホステスの1人は、ハンカチで口を押さえながら壁伝いに移動して男性用トイレに入り、嘔吐しながらハンカチを水で濡らして口に当てた。その後に女性用トイレに入り、意識が朦朧となりながらもエレベーターホールへ出て、クローク奥にあるB階段の出入口まで辿り着き、地上への脱出に成功した。このころには猛煙と熱気、有毒ガス、停電による暗闇により、室内での行動はほとんど不可能になっており、窓際に移動できずにホール中央やF階段近辺、空調ダクト周辺を逃げ回った人たち、ホステス更衣室に滞在していた人たち、または物置の内側に避難路を求めた人たちは、全員が息絶えてしまった。 22時50分から22時55分にかけて、窓際にいた人々もF階段から大量に噴き出す猛煙と熱気による息苦しさに耐えかねて、7階窓から地上へ飛び降りる人が続出し始めた。消防隊のはしご車による救助を待ち切れずに、まだ伸長している最中のはしごに縋ろうとして地面に落下する人もいた。東側の商店街アーケードの屋根を目掛けて飛び降りた人たちは、薄いプラスチック板で作られた屋根を突き破り、無残にも地面に叩きつけられていった。また唯一の避難器具「救助袋」の外側に掴まりながら袋の外側を馬乗りになって滑り降りた人たちは、摩擦熱に耐えられずに地上へ落下したり、また滑り降りる途中で力尽きて墜落したりする者が続出した。脱出者の1人は、救助袋にしがみついてゆっくりと降下していたところ、上から他の人が勢いよく滑り落ちてきて、その巻き添えを食って2人一緒に地上へ墜落した。またステージ裏の小部屋に逃げ込んだ人々も、多少なりとも猛煙から逃れていたが、F階段シャッターの開放によって小部屋にも猛煙が侵入してきて呼吸が困難になってきたために、一部には息絶える者も出始めていた。 22時55分から23時1分にかけて、救助袋から落下してくる人を消防隊が市民の協力を得て設置したサルベージシート(救助幕)で3人を救助することに成功した。このころ消防隊のはしご車による救出活動も本格化し、23時23分までの間に7階プレイタウンの各窓から50人を救助した。 23時10分、デパート電気係によってデパートビル全館の電源供給をすべて遮断した。 23時15分、消防隊は、東側商店街アーケード屋根の上に飛び降りた2人を救助した。 23時23分、消防隊は、7階東側最南端の窓から男性1人を救助したのを最後に、はしご車による救助活動を終了した。 23時30分、消防隊は、この時点で7階からの要救助者が存在しないと判断し、はしご車による救出活動をすべて打ち切った。 14日(日曜日)0時ごろ、火勢が衰えはじめた。消防隊は、救出活動優先から消火活動優先に切り替えた。火災鎮圧までの間、ビル外側と内部から延焼階に放水を継続した。 1時30分ごろ、7階から飛び降りや転落などで23人が死亡したと市消防局が発表した。 1時38分、依然として4階窓から激しい煙が噴出、3階への侵入は不可能と消防隊は判断した。 2時、この時刻までに7階プレイタウン内部で7名の遺体が確認された。 3時7分、なおも4階からは煙が噴出し、2階は延焼中と確認。 3時45分、地下街「虹のまち」に浸水が始まった。 4時50分、地下街の浸水が激しいため、消防隊は地下街管理者に対して排水ポンプを稼働させるよう要請した。 5時、消防隊および大阪府警機動隊による7階プレイタウンの内部探索が始まった。 5時8分から20分にかけて、消防隊および大阪府警機動隊が7階プレイタウンフロアにて多数の遺体を確認した。 5時43分、火災鎮圧。 6時、大阪府警および大阪市消防局は、7階プレイタウンの現場検証を開始した。 7時41分、一旦は「火災鎮火」と発表された。内部探索の結果、7階プレイタウンフロア内で96人の遺体が確認された。また7階からの飛び降りや転落で21人の死亡者を確認し、犠牲者は合計117人となった。 9時、大阪府警・鑑識課、科捜研、大阪市消防局が合同で3階出火元の現場検証を開始した。 9時30分から15時過ぎにかけて、現場検証が終了した7階プレイタウンから5時間半を費やして遺体搬出作業がおこなわれた。大阪市消防局は、遺体搬出に救急隊7隊を投入し、遺体安置所の南区難波・精華小学校および北区梅田・大融寺に搬送した。 13時20分、火災現場を渡海元三郎自治大臣が視察した。同視察には黒田了一大阪府知事、大島靖大阪市長、消防庁幹部、大阪府警関係者も同行した。視察後、渡海自治大臣は遺体安置所へ赴き、遺族と面会した。その後に南消防署・南阪町出張所内で記者会見を行い、「救命器具が完全に活用されておらず、管理者や防火責任者が日頃から訓練を心掛けていれば被害は少なくて済んだ。雑居ビルについては、法的な規制も考えなければならない」と述べた。 16時30分過ぎ、消火救出活動および遺体搬出作業のため、約1キロメートルにわたり全面通行止めになっていた「千日前通」が規制解除により通行可能となった。 14日23時50分、大阪府警捜査一課・南署特別捜査本部(特捜本部)は、火災当日夜に千日デパートビル3階・ニチイ千日前店で電気工事を行っていた工事監督を現住建造物重過失失火および重過失致死傷の容疑で緊急逮捕した。 15日(月曜日)0時15分ごろ、千日デパートビル5階および6階中央部などから白煙が噴き出しているのを通行人が発見し119番通報した。大阪市消防局は、はしご車など4台を出場させ、6階と7階窓から消火作業をおこなった。同日2時ごろ鎮火状態になり、小火程度で消し止めた。6階での小火騒ぎを受けて市消防局は、消火困難個所および内在物品などの燻りがまだデパートビル内に残っていると判断し、消火および防御活動を再開することにした。 15日17時30分、正式に「火災鎮火」と発表された。 火災発生から4日後の17日10時15分、7階プレイタウンの窓から地上へ飛び降りて重傷を負い、大阪市内の病院に収容されていたホステス1人が死亡した。これで千日デパートビル火災の犠牲者は118人となった。また負傷者は計81人にのぼり、プレイタウン関係者47人、消防隊員27人、警察官6人、通行人1人となった。
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