商用コンピュータの始まり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 10:11 UTC 版)
「計算機の歴史」の記事における「商用コンピュータの始まり」の解説
世界初の商用コンピュータは、1951年2月にマンチェスター大学に納入された Ferranti Mark 1 である。Manchester Mark I を元に設計された。Manchester Mark I からの主な改良点は、記憶装置の容量増、乗算器の高速化、命令の追加である。基本サイクル時間は1.2ミリ秒で、乗算を約2.16ミリ秒で実行した。真空管を4050本使っており、その4分の1が乗算器に使われている。2号機がトロント大学に売れ、その後さらに改良を施した Mark 1 Star が完成した。Mark 1 Star は少なくとも7台が1953年から1957年までに売れており、シェルのアムステルダムにある研究所にその1つが納入された。 1947年10月、イギリスの外食・ホテル産業大手 J. Lyons & Company の経営陣は新たな経営技法に興味を持っており、商用コンピュータ開発を推進する役割を果たすことを決めた。それによって1951年4月、LEO I (Lyons Electronic Office) が稼働開始し、世界初の会社の通常業務を処理するジョブを実行した。1951年11月17日、J. Lyons では傘下のパン屋の毎週の売り上げ集計をLEO上で行い始めた。これが世界初のビジネスアプリケーションであり、ここからプログラム内蔵式コンピュータの商用利用が始まった。 1951年6月、UNIVAC I (Universal Automatic Computer) がアメリカ合衆国国勢調査局に納入された。レミントンランドは46台を売り上げ、1台の価格は100万ドル以上だった(現在の価値に換算すると9650000ドル)。UNIVACは世界で初めて量産されたコンピュータである。5200本の真空管を使い、125kWの電力を消費した。一次記憶装置は逐次アクセス型の水銀遅延線で、11桁の数字と符号(72ビット)を1ワードとして1000ワードを格納可能である。最大の特徴は新たに発明された金属磁気テープと高速磁気テープ装置を備えたことで、それを不揮発性の記憶装置として使っていた。磁気媒体は今も多くのコンピュータで使われている。 1952年、IBMは IBM 701 を発表。700/7000シリーズの最初の機種であり、IBMのメインフレームの始まりである。1954年の IBM 704 では磁気コアメモリを採用し、その後の大型コンピュータで標準的に使われるようになった。世界初の高級汎用プログラミング言語FORTRANも、IBMが704向けに1955年から開発したもので、1957年初めにリリースされた。高級言語としてはコンラート・ツーゼが1945年に設計したプランカルキュールが先だが、こちらは実装されなかった。IBM 701 に対しては、1955年に世界初のコンピュータのユーザーグループが誕生し、ソフトウェアや経験を共有するようになった。 1954年、IBMはより小型で低価格のコンピュータ IBM 650 を発売し、人気を博した。650 は重量が900kg以上あり、付属の電源装置は約1350kgである。それぞれ別々の筐体となっていて、寸法はそれぞれおおよそ1.5m×0.9m×1.8mである。価格は50万ドル(現在の価値に換算すると4660000ドル)で、リースの場合は月額3500ドル(現在の価値に換算すると30000ドル)だった。磁気ドラムメモリに当初は2000ワード(1ワードは10桁の数字)、その後拡張されて4000ワードを格納。このようにメモリ容量が小さく、その後数十年間のプログラミング技法に重大な影響を与えた。プログラムは回転する磁気ドラムに格納されており、実行時はそこから命令を読み取る。磁気ドラムメモリでの効率的なプログラム実行には、ハードウェアのアーキテクチャ、次に実行すべき命令のアドレスを含めた命令フォーマット、ソフトウェア、すなわちSOAPというアセンブリ言語が協調し、次の命令を磁気ドラムがその位置まで回転するのを待つことなく読み取れるよう、(ソースプログラムの静的解析でできる範囲で)うまく配置した。 1955年、モーリス・ウィルクスがマイクロプログラム方式を発明し、基本命令セットを組み込みのプログラム(ファームウェアあるいはマイクロコード)で定義し拡張できるようになった。この方式はメインフレームなどのコンピュータのCPUやFPUで広く採用された。例えばマンチェスター大学のAtlasやIBMのSystem/360シリーズがある。 1956年、IBMは初の磁気ディスク装置 RAMAC (Random Access Method of Accounting and Control) を発表。50枚の直径24インチ(610mm)の金属円盤を使い、片面に100トラックで5メガバイトのデータを格納できる。コストは1メガバイト当たり1万ドル(現在の価値に換算すると90000ドル)だった。
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