北冬書房
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/15 04:24 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動北冬書房(ほくとうしょぼう)は、権藤晋(本名:高野慎三)によって1972年に設立された東京都目黒区にある出版社。
概要
1966年に青林堂に入社した権藤晋は、約5年間にわたり月刊漫画『ガロ』の編集に携り、つげ義春、つげ忠男、林静一、佐々木マキ、滝田ゆうなど個性的な漫画家が活躍する同誌の黄金時代を演出した。特に青林堂への入社を希望したのは、つげ義春とゆっくり話がしてみたいと思ったからである(著書『つげ義春1968』より)。
1967年には石子順造、菊池浅次郎(山根貞男)、梶井純らとともに漫画研究のための雑誌『漫画主義』を創刊。
その5年後の1972年に青林堂を退社、北冬書房を設立し、漫画・評論誌『夜行(やぎょう)』、映画評論誌『加藤泰研究』などを編集・刊行。
その後、『夜行』のコンセプトを継承する雑誌『幻燈』を創刊するなどユニークな出版活動を続けている。
出版物一覧
※ 冊数が多いため、伸縮型のメニューとして掲載する。
- 雑誌「漫画主義」全12号(13号と14号はそれぞれ「夜行」7号と8号に吸収される)
- 雑誌「夜行(やぎょう)」全20巻 (1972〜1995)
- 雑誌「幻燈(げんとう)」現在14巻まで(1998〜2017/10/1)
- 雑誌「蒼い馬I」(1974年)堀江豊示・本牧清美・菅野修・川猫めぐみ・南日れん・石井隆 (1号のみでストップ、1000部のみ発行)
- 秋野すすき
- 『晴れときどきミステリー』2005年4月 ISBN 978-4892891205
- 秋山清
- 『反逆の信条』1973年 ASIN B000J9P110
- 『わが夢二』1976年 ASIN B000J93FDQ
- 安部愼一
- 『新版 私生活―安部慎一短編集』2007年8月 ISBN 978-4892891250
- 天野天街
- 『平太郎化物日記』2008年12月 ISBN 978-4892891298
- 『天野天街萬華鏡』2009年7月 ISBN 978-4892891304
- 『つげ義春「必殺するめ固め」映画用絵コンテ』2013年10月 ISBN 978-4892891397
- 『夢+夜―天野天街脚本集』2016年4月 ISBN 978-4892891427
- 伊藤重夫
- 『踊るミシン』1986年11月
- うらたじゅん
- 『真夏の夜の二十面相―うらたじゅん作品集』2003年8月 ISBN 978-4892891144
- 『嵐電―うらたじゅん作品集』2007年2月 ISBN 978-4892891229
- 『冬のプラネタリウム―うらたじゅん作品集』2015年5月 ISBN 978-4892891410
- おんちみどり
- 『古本海岸 おんちみどり作品集』2016年6月 ISBN 978-4892891434
- 梶井純
- 『現代漫画の発掘』1979年
- 『骨董遊行 (風景とくらし叢書)』1996年12月 ISBN 978-4892891014
- 加藤泰
- 『日本侠花伝 : 加藤泰シナリオ集』1973
- かわぐちかいじ
- 『死風街』1973年
- 『風狂えれじい』1974年
- 菅野修
- 『冬哭』(1982年)
- 『娼婦―菅野修劇画作品集2』1984年6月 ASIN B000J6WK6C
- 「象を見た男」1986年 40部限定
- 『犬泥棒の夜―菅野修作品集』1990年4月 ISBN 978-4892890819
- 『夏の雲―菅野修作品集』2010年2月 ISBN 978-4892891328
- 久保隆
- 『戦後アナキズム運動試論』1976年 ASIN B000J9OU5S
- 高野慎三
- 『旧街道 (風景とくらし叢書)』1990年12月 ISBN 978-4892890840
- 『郷愁 nostalgia』2005年1月 ISBN 978-4892891199
- 権藤晋
- 『街道案内〈1〉 (風景とくらし叢書)』1996/7 ISBN 978-4892890901
- 斎藤種魚
- 『コシヒカリの見た夢』2007年2月 ISBN 978-4892891243
- 佐々木通武
- 『短編集 影絵の町―大船少年記』2017年5月 ISBN 978-4892891441
- 佐藤完児郎
- 『美と教育のポエジア』⑴1990年1月 ISBN 978-4892890833 ⑵2004年9月 ISBN 978-4892891175
- 鈴木翁二
- 『東京グッドバイ』1998年8月 ISBN 978-4892891052
- 『マッチ一本の話』1998年12月 ISBN 978-4892891069
- 鈴木清順
- 『花地獄』1972年 ASIN B000J977R6 新版1996
- 『孤愁』 1981
- 『まちづくし』1982.6
- 『夢と祈祷師』1991年8月 ISBN 978-4892890888 新版1991
- つげ義春
- 『夢の散歩―つげ義春新作集』 1975年 ASIN B000J91Q96
- 『定本・夢の散歩』1985年2月 ASIN B01LTI09PC
- 『山野記』風景とくらし叢書 1989年10月 ISBN 978-4892890802
- つげ忠男
- 『狼の伝説 (つげ忠男選集 (1))』1994年9月 ISBN 978-4892890956
- 『昭和御詠歌 (つげ忠男選集 (2)) 』1995年4月 ISBN 978-4892890963
- 『丘の上でヴィンセント・ヴァン・ゴッホは―つげ忠男初期作品集』1998年4月 ISBN 978-4892891045
- 『屑の市(まち)』つげ忠男選集3 1999年11月 ISBN 978-4892891076
- 『曼陀羅華綺譚』2011年 ISBN 978-4892891366
- 『雨季 : つげ忠男名作選集』1978.3
- 中島貞夫
- 『殲滅―中島貞夫の映画世界』1974年 ASIN B000J91WUE
- 野田昌宏
- 『SF考古館』1974年 ASIN B000J9BMPO
- 林静一
- 『化子』1973年 ASIN B000J93C98
- 『花ちる町』1986年1月
- 『紅犯花―林静一絵物語集』1989年7月 ISBN 978-4892890796
- 原マスミ
- 『夢の4倍』1996年7月 ISBN 978-4892891007
- 藤原マキ
- 『私の絵日記』1993年10月 ISBN 978-4892890932
- 古川益三
- 『草原電鉄』2001年3月 ISBN 978-4892891106
- 南日れん
- 『恋語りPart1 南日れん抒情劇画集』(北冬書房、1985年)
- 『恋語り part2 南日れん作品集』2014年9月 ISBN 978-4892891403
- 水木しげる
- 『悪魔くん』箱入り帯付 限定800部 1973.8.15
- 湊谷夢吉
- 『マルクウ兵器始末』1984年9月 ASIN B01ERONQQO
- 『虹龍異聞―湊谷夢吉作品集』1988年12月 ISBN 978-4892890765
- 『魔都の群盲 (湊谷夢吉劇画作品集)』1997年8月 ISBN 978-4892891021
- 三橋乙揶
- 『三橋乙揶読本』1990年6月 ISBN 978-4892890826
- 『くだんの件―天野天街作品集』2001年9月 ISBN 978-4892891120
- 『月の思い出 三橋乙揶漫画作品集』2008年10月 ISBN 978-4892891281
- 三村晴彦
- 『「天城越え」と加藤泰』 2004.10
- 山口健二
- 『アナルコ・コミュニズムの歴史的検証 : 山口健二遺稿集』2003.9
- 山田勇男
- 『戯れ―山田勇男漫画集』2008年4月 ISBN 978-4892891274
- 山根貞男
- 『手塚治虫とつげ義春―現代漫画の出発点』1983年8月 ASIN B000J6VCBG
- 山本正男(監修)
- 『美術教育再生の論理を求めて』1990年 ISBN 978-4892890871
所在地
交通アクセス
営業時間
- 11:00~23:00 不定休[1]。
脚注
- ^ a b “グーグルマップ - 万力のある家”. 2018年9月19日閲覧。
- ^ “北冬書房公式Facebook”. 2018年9月19日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 北冬書房公式Facebook
- 「つげ義春を旅する」高野慎三(Archive)
- 「ねじ式」夜話 権藤 晋(Archive)
- 北冬名鑑30 - ウェイバックマシン(2016年3月4日アーカイブ分)
- 「夜行」展
- 『幻燈』完全目次再現 高田馬場つげ義春研究会 - ウェイバックマシン(2016年10月13日アーカイブ分)
- 『夜行』完全目次再現Ⅱ 高田馬場つげ義春研究会 - ウェイバックマシン(2016年10月16日アーカイブ分)
北冬書房
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 14:27 UTC 版)
その後、1971年暮れに青林堂を退社すると同時に、文具店を営むかたわら北冬書房を興し、『ガロ』の草創期に、“既成のマンガのワクを脱し、新しい創造を!”と謳った白土三平の精神を基本の理念に立ち返り、新たなマンガ誌を計画、1972年に『夜行』を創刊。『ガロ』の定価の三倍であったにもかかわらず大手取次の扱いを受けずに、3000部を売り切った。つげ義春をはじめ、つげ忠男、林静一、秋山清、加藤泰、鈴木清順などの著書を刊行。漫画、映画に関する文章を発表し続け、『漫画主義』、『日本映画研究』などを刊行する。その後のある日、石子順造と会った際に、長井と懇意にしていた石子から、「長井さんが『夜行』を見て、もっても1年だろうね、といってたよ」と言われた。権藤自身2-3年が限界かと考えていた。が、『夜行』は、その後、年間2冊の刊行が、やがて年1冊となりながらも、1995年までに20余年で20冊を発刊し続けた。 一方、10代の頃より宿場、古寺巡りを始め、単行本『宿場行』、『郷愁 nostalgia』、『旧街道』、『街道案内』などに結実した。 また、1970年には藤田治水らの『思想の科学』グループを鋭く批判した論文「マンガ文化の風化と奈落」( 『現代の眼』1970年2月号掲載)で衆目を集め、その後多くの場で漫画評論を展開、発表するようになる。 1980年代には、つげ義春に作品を発表させるための雑誌『COMICばく』(1984年発刊)に本名の高野慎三でエッセイを発表し、その中で『COMICばく』編集長を務めた夜久弘との間でつげ作品をはじめ、劇画の評価をめぐって激しい論争があったことを明らかにしている。権藤はつげ作品には時代を超えた絶対的価値があるとの考えを持っているのに対し、夜久はその絶対的評価の内容を明らかにしないと、独断と偏見を押し付けているとしか見られない。いろいろな作家がいて、いろいろな作品がある、いろいろな読者がいる、つげ作品ばかりを評価せずにそれぞれの良さを評価すべきだ、と反論した。これに対し、権藤はつげ作品ほど人間感情の奥行きを大切に取り込んだものはなく、驚き、喜び、哀しみ、嘆き、失意、といった人間のもつ様々な感情を的確に表現しており、それを言葉だけに依拠することなくペンタッチとコマ割りという劇画独自の表現性を包摂することで可能となるが、そういうつげ作品が好きなのではなく、劇画表現はこうあるべきと反論した。 1999年からは、貸本マンガ史研究会同人として『貸本マンガ史研究』に毎号のように論考を発表し続けている。
※この「北冬書房」の解説は、「権藤晋」の解説の一部です。
「北冬書房」を含む「権藤晋」の記事については、「権藤晋」の概要を参照ください。
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