作者の問題とは? わかりやすく解説

作者の問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:55 UTC 版)

西遊記の成立史」の記事における「作者の問題」の解説

小説『西遊記』作者不詳であり、一般的には呉承恩という人物とされることも多いが、確たる根拠はなく、甚だ疑わしい作者不明なのは、『西遊記』古刊本作者明示されものがないためである。かつては清代の『西遊道書』の序文西遊記原序」(虞集序とも)に、作者を「丘長春真君」とする記述があったことから、チンギス・カン仕えた道士丘処機長春真人)が作者とされていた。確かに長春真人には「西遊記という名の著作があるのだが、これは紀行であって小説ではない(この旅行記同行した弟子志常が記録したもので、現在では区別のため『長春真人西遊記』と呼ばれる)。後述するように、長春真人作者としたのは清代書店による権威の箔付けであり、事実ではない。 それに対し最初に呉承恩作者として挙げたのは、清代考証学者の丁晏1794年1875年)らと言われる20世紀入り中民国時代魯迅が『中国小説史略』でこの説を採用し胡適同様に主張して以降定説化したのである呉承恩(字は汝忠)は明代官僚で、多く著作残したというが、現在そのほとんどが伝わっていない。作者擬せられた理由天啓年間の『淮安府志』巻12文目」に「呉承恩射陽集四冊 巻、春秋列伝序、西遊記」との記述があるためである。ここに記された「西遊記」が小説『西遊記』のことと解釈され呉承恩作者とする説が生じた。しかし「西遊記」という書名は、上記長春真人の例でも分かる通り西方への旅行記を指す一般的な名詞でもある。ゆえに『淮安府志』に記された「呉承恩西遊記」もまた小説『西遊記』意味するものとは限らないそもそも王朝が公式に作成した正史準ずる存在である地方史淮安府志』に、当時士大夫知識人)層から軽蔑され白話小説作者であることが堂々と記載される蓋然性も低い。明代著作集めた黄虞稷『千頃堂書目』において「呉承恩西遊記」が巻8史部輿地類」に分類されていることからも、この書が地理志ないし紀行文であって小説だった可能性は低いとみられる。また現存するすべての刊本において、作者呉承恩記載したものは1点存在せず呉承恩小説『西遊記』作者であるという説は、現在ではかなり疑わしいとされる『西遊記』という小説は、宋代の講談元代雑劇などで培われた逸話群に由来持ち明代長篇小説として成立した経緯から、一人作者特定するのはそもそも不可能で、せいぜい長年培われた伝説をまとめ上げた編者存在想定できる程度である。それとて長春真人呉承恩といった人物が、候補として見なしがたいというのは上記見た通りである。同様の成立過程を持つ『三国志演義』水滸伝』も、それぞれ羅貫中施耐庵などの名がしばしば作者として挙げられるが、彼らも作者ないし最終編者として見なすには根拠薄弱似た状況にある(詳細三国志演義の成立史水滸伝の成立史参照)。『西遊記』最終的な編者が誰であるか、証拠発見されていないため、現時点では不明言わざるを得ない。以下に『西遊記』小説として形成されていく過程概観する

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作者の問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 15:54 UTC 版)

水滸伝の成立史」の記事における「作者の問題」の解説

小説水滸伝』の作者については、古くからいくつかの説が存在し大まかに 施耐庵施耐庵/羅貫中その他の説 に分けられるその他の説とは施耐庵羅貫中ペンネーム正体別の作家だとする説や、グループ執筆が行われたため個人作者特定できないとする説、そもそも数多く講談雑劇寄せ集めた作品であるため特定個人作者はいないとする説などを含む。特定作者推定する場合も、元になった話の骨格各回構成する逸話は、講談雑劇等で培われていたことが前提の上であり、一から小説書き上げた作者というよりは、多く要素をまとめた編者ないし完成としての役割想定されている。

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