アポロ計画のLR V
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「LRV (月面車)」の記事における「アポロ計画のLR V」の解説
1965年から1967年にかけて、月探査に関するサマーカンファレンスが開催され、科学者にNASAの月探査計画に対する評価や勧告を行う機会が与えられた。これにより、LSSMは計画の成功に欠かせないものであり、大きな注目を集めていることが分かった。フォン・ブラウンは、MSFCに月面車タスクチームを結成し、1969年5月、NASAは有人月ミッションにLunar Roving Vehicle (LRV)を使用することを決定し、MSFCの開発したManned Lunar Rover Vehicle Programを採用した。Saverio F. "Sonny" MoreaはLRV計画の責任者に指名された。 1969年7月11日、アポロ11号が月面への着陸に成功する直前頃、アポロ計画のLRVの最終設計と製造の見積依頼が出されることがMSFCにより公表された。ボーイング、ベンディックス、グラマン、クライスラーはこの募集に応募した。3か月間の提案評価と交渉の後、1969年10月28日にボーイングが元請に選ばれた。ボーイングは、ハンツビルのHenry Kudishの下でLRV計画を運営した。主な下請けとして、Ferenc Pavlics率いるゼネラルモーターズの防衛研究所が移動システム(車輪、モーター、サスペンション)を提供した。ボーイングは電子系とナビゲーションシステムを提供した。車両の試験は、ワシントン州ケントにあるボーイングの工場で行われ、シャーシの製造と全体の組立てはハンツビルにあるボーイングの工場で行われた。 最初のボーイングへの支払いは1900万ドルで、最初のLRVを1971年4月1日までに納入することを求められた。しかし、費用が見積もりを超過し、最終的な費用は、NASAの当初の見積もりとほぼ同じ3800万ドルを要した。4台の月面車が完成し、3台はそれぞれアポロ15号、16号、17号に用いられ、残りの1台は中止されたアポロ計画のために作られたものである。Savero Moreaによる論文は、LRVシステムとその開発に関する詳細な情報を与えてくれる。 アポロ15号、16号、17号のミッションで、LRVは素晴らしい移動性を発揮した。最初に用いられたのは1971年7月31日で、月探査の範囲を大きく広げることに成功した。以前のアポロの宇宙飛行士は、かさばる宇宙服のため、着陸地点の周りを徒歩で探査するだけだったが、その制限はLRVによって解消された。しかしこの範囲は、LRVが故障した時に戻れる範囲という運用上の制約を受けた。LRVの設計上の最高速度は約13km/hであったが、ユージン・サーナンは、18.0km/hを記録し、月面上での(非公式な)最高速度記録を作った。 LRVはわずか17か月で開発されたが、大きな故障もなく、月面上で予定された全ての機能が用いられた。アポロ17号のハリソン・シュミットは、「LRVは、我々が期待していたような、信頼できて安全で柔軟な月面探査車であった。これなしでは、アポロ15号、16号、17号での重要な科学的発見はなし得なかったし、我々の現在の月の進化の理解も実現できなかっただろう」と述べた。 LRVに小さな不具合が生じることはあった。アポロ16号のLRVの後部のフェンダーは、ジョン・ヤングがチャールズ・デュークを助けるためにLRVをぶつけた際、失われてしまい、車輪から出た塵が乗組員やコンソールや通信装置を覆った。これによりバッテリーの温度が高くなり、そのため消費電力が多くなった。修理は行われなかった。 アポロ17号のLRVのフェンダーは、ハンマーを持ったユージン・サーナンとたまたまぶつかった際に破損した。サーナンとシュミットはテープで貼って戻したが、表面が塵で汚れていたため接着が悪く、1時間の走行でフェンダーは失われ、宇宙飛行士は塵をかぶることとなった。2度目の船外活動の際、船外活動地図とダクトテープ、月着陸船のクランプを用いて、代替のフェンダーが作られ、取り付けられた。帰還の際、必要なクランプを回収するためにこの代替品は分解された。地図は地球に持って帰られ、現在は国立航空宇宙博物館に収蔵されている。塵による摩耗は、間に合わせのフェンダーの一部であった証拠である。 LRVの前面に取り付けられたカラーのテレビカメラは、地上のミッションコントロールセンターから、旋回、傾け、拡大等の遠隔操作を行うことができた。これにより、以前のミッションよりもはるかに良い画像を撮影することができた。 LRVは、ソビエト連邦のルノホート1号やルノホート2号と同様に、月面に残され、月にある人工物の1つとなっている。
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