あさまし
「あさまし」とは・「あさまし」の意味
「あさまし」とは、古語動詞「あさむ」が形容詞化した言葉である。「あさむ」には「驚きあきれる」という意味があることから、その形容詞化である「あさまし」は、「驚きあきれる様子」という様態を表す意味を持つようになった。この「驚きあきれるさま」はさらに派生して、「思いがけず意外である」「あきれてがっかりする」「興ざめになる」「なさけない」「もってのほかだ」「ひどい」などの語義を持つにいたる。「わがもてつけたるをつつみなく言ひたるは、あさましきわざなり・枕草子(自分がふだん使い慣れている言葉を無遠慮に言うのは、なさけないことだ)」は「なさけない」という語義で用いられる例で、「二年が間、世の中飢渇して、あさましきこと侍りき・方丈記(二年の間、世の中は食うもの飲むものにも事欠くありさまで、それはそれはひどいことがございました)」は「もってのほかだ・ひどい」という意味で用いられている例である。「驚きあきれる」という意味では、「宇治拾遺物語」の「絵 仏師 良秀」に一つの用例が見られる。高校の古文の教科書にも頻出する「宇治拾遺物語」は鎌倉時代初期に成立したとされる説話集で、197話に及ぶ教訓話や滑稽話が生き生きとした一般庶民の視線でまとめられている作品集である。「絵 仏師 良秀」はその中の一話で、火事で燃える自分の家を、満足そうに立って眺めている絵仏師の良秀を描いている。まだ妻子が逃げ遅れているのにも関わらず、なぜ平然としていられるのかと尋ねた人に対して、炎の燃え方がこの目で確かめられたのでもうけものだ、と答えたという箇所で、「こはいかに、かくては立ちたまへるぞ。あさましきことかな。物のつきたまへるか(これはどうしたことか、こんな風に平然と立っていらっしゃって。驚きあきれることだ。もののけにでも取りつかれなされたのか)」と、良秀の言動に驚きあきれる心情が語られている。なお、古典に材をとった小説を数多く創作したことで知られる芥川龍之介は、宇治拾遺物語に見られるこの「絵 仏師 良秀」の説話をモチーフに「地獄変」を書き上げている。地獄の猛火に焼かれる牛車をリアルに描きたいがために、自らの娘を車に閉じ込め火を放たせた良秀像を造形し、芸術至上主義に取りつかれた精神の極致とその奈落を描いたものである。
「あさまし」は、現代語の「あさましい」の語源になった言葉であるが、「あさましい」には古語に見られる「驚きあきれる」という意味は薄れ、「みじめでなさけない」「ひどくて見るに耐えられない」などがその主要な意味となる。「あさましい」の用例としては、「宇治拾遺物語」と同じく、高校の国語の教科書に頻繁に採録される中島敦の短編小説「山月記」にその一例が見られる。「山月記」とは、中国・唐の時代を舞台に、秀才の誉れが高い主人公の李徴が、高級官僚の座を捨てて詩人として名を成そうとするものの果たせず、ついには野獣の虎になり果てるという物語である。そのプライドの高さから周囲となじめず、詩人として名を成そうとしても叶わず、理想と現実のはざまで煩悶するうちに家族への愛情すら失いつつある自分を「あさましい身と成り果てた」、すなわち虎への変身という「みじめでなさけない姿に成り下がってしまった」と自嘲する場面で、「あさましい」が効果的に用いられている。
「あさまし」の熟語・言い回し
あなあさましとは
「あなあさまし」とは、「なんとまあ、驚きあきれることよ」という意味となる。「驚きあきれる」は、文脈によって「興ざめだ」「なさけない」「ひどい」などという意味にも言い換えられる。「あな」は古語で、よいことにも悪いことにも用いられる感動詞。「ああ」「なんとまあ」「あれ」などと訳す。
いとあさましとは
「いとあさまし」とは、「たいへん驚きあきれることだ」という意味となる。「驚きあきれる」は、文脈によって「興ざめだ」「なさけない」「ひどい」などという意味にも言い換えられる。「いと」は古語で、程度がはなはだしいという意味を表す副詞。「非常に、たいへん」などと訳す。
あさまし
「あさまし」の例文・使い方・用例・文例
- あさましい卑劣漢
- あさましき世の有様哉
- あさましい姿になったものだ
- あーらあさましや
- あさましい奴
- あさましいことをしてくれた
- あなあさましき世の有様じゃなー
- かかる事をなさんとはあなあさましや
- 彼はあさましい姿になったものだ
- あさましい身なりをして旧友を訪ねまわる
- 乞食までするあさましさ
- 人の物を盗むとはあさましい了簡になったものだ
- どうしてそんなあさましい心を出したか
- そんなあさましい心を出すものじゃない
- 無知文盲の徒はあさましいものだ
- ロシアの現状はあさましいかな
- 凡夫のあさましさに諦めかねている
- 畜生のあさましさ、親子兄弟の見境もない
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