はべ・り【▽侍り】
読み方:はべり
[動ラ変]《「は(這)いあり」の音変化で、神や天皇など、絶対者の前に恐れ入った態度でいるのが原義か》
1 「いる」の意の謙譲語で、慎み深い態度でいる意を表す。(貴人の御前に)かしこまって控える。
「御前の方に向かひて後ろざまに『誰々か—・る』と問ふこそをかしけれ」〈枕・五六〉
2 尊者に対する、あらたまった気持ちの会話・消息(勅撰集などの詞書も含む)に用い、「ある」「いる」の意を慎み深く丁重に表す丁寧語。あります。おります。ございます。
㋐話し手側のものについて用い、謙譲の気持ちを込めてその存在を丁重にいう。謙譲語ともされる。
㋑広く一般的に存在の意を丁重にいう。その事実を自己の知っていることとして、慎み深く表す傾向が強い。
3 地の文に用いて、「ある」「いる」の意を、自己の経験・感想として慎み深く表す。読者を予想した表現ともいわれ、特に中世以降の文語文に多く、雅語的用法として定着した。
㋐2の場面で用い、聞き手に対し、その動作を丁重に表し、かしこまった表現にする。また、その動作に「…ている」の意を付け加えて丁重にいう場合もある。話し手側の動作に用いたものには、謙譲の気持ちも込められる。…ます。…ております。
「松の思はむことだに恥づかしう思ひ給へ—・れば、百敷に行きかひ—・らむことは、ましていとはばかり多くなむ」〈源・桐壺〉
[補説] 平安時代には、「さぶらう」が尊者のおそばに控える意を主とするのに対し、「はべり」は、ひたすら恐れ入っているという姿勢を示し、存在またはそれの付いた語を謙譲し丁重に表現する、かしこまった気持ちの会話に多用された。平安後期から、丁寧語としての「さぶらう」さらに「そうろう」がこれに代わるようになり、中世になると「はべり」は古風な語として形式化した。
はんべ・り【▽侍り】
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