『「小説」論 ―『小説神髄』と近代―』とは? わかりやすく解説

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『「小説」論 ―『小説神髄』と近代―』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 07:48 UTC 版)

亀井秀雄」の記事における「『「小説」論 ―『小説神髄』と近代―』」の解説

『感性の変革』出版されてのち、亀井は、『北海道大学文学部紀要』に、1989年から1994年まで10回にわたり「『小説神髄研究」を連載した。そして連載終了から5年後その内容3分の1ほどに圧縮し、『「小説」論 ―『小説神髄』と近代―』(岩波書店1999年)として刊行した亀井同書の中で、『小説神髄』が小説作法書の性格をもつ小説論であることに注目し坪内逍遙学生時代に手にした可能性の高い、10数冊の英語圏修辞書における〈小説〉についての記述や、ジョージ・ルイス、ウォルター・ベザント、ヘンリー・ジェイムズアンソニー・トロロープなどの19世紀実作者の小説作法書とを比較し逍遥の『小説神髄』のほうがより整備され作法であったことを指摘している。 当時英語圏では小説を〈芸術〉として論ず小説論はまだ書かれておらず、1884年明治17年)に至って、ウォルター・ベザントが「フィクションの術(アート)」という講演で、はじめて「小説フィクション)は絵画彫刻音楽、詩の諸芸術アート)と匹敵する芸術アート)である」と宣言し、それを受けてヘンリー・ジェイムズが「フィクションの術(アート)」という同名エッセイ発表した他方逍遥は、翌年1885年明治18年)に『小説神髄』を出版して小説美術である」理由説明した亀井はこの事実を、これは逍遥英語圏小説論の影響受けたと言うより世界的な同時現象見るべきだと考え、なぜこのような現象〉が起こりえたのかという問題立てた。そして、逍遥取り上げた滝沢馬琴物語作法論や本居宣長源氏物語論を、実作細部照合しながら分析をした。亀井その分析を通して英語圏日本における〈主人公〉観や、〈筋立て〉(プロット組み方)などの違い明らかにし、更にその根底にある歴史言語文体などの考え方とその観念水準とを比較することが可能な形で理論化した。 元来比較文学は、外国文学自国文学との影響関係実証的明らかにする学問だったが、後には、直接影響関係が見いだせない場合でも、二つの国の文学類似なものが認められる場合には比較文学可能なではないか、という方向進んだ。ただ、後者場合、〈類似〉を認め認め方が恣意流れやすい。亀井見方従えば、「小説美術」という逍遥小説観は、英語圏の「小説芸術」という観念から直接影響を受けたものではない。その意味亀井の「世界的同時現象というとらえ方は、巨視的な文化類型論属するが、亀井文化類型論的な発想退けて、「類似」を認識する仕方根拠求め比較可能な要素見出すとはどういうことなのかを理論的に追求した亀井研究が出る以前の『小説神髄研究は、〈逍遥欧米進んだ文学啓発され影響受けて日本物語改良取り組んだが、彼の理論実作はたしてどれだけ欧米文学近づくことができたか〉という、型通り比較文学研究であった亀井の『小説神髄研究は、そのような従来型研究全体対す批判である。また、そのために彼は、〈主人公〉や〈内面〉や〈プロット〉等の、小説基本的な観念洗い出しに力を傾注した亀井研究の更に注目すべき点は、「ジャンル植民(または移植)」という新し観点作ったことにある。亀井意見従えば、〈小説〉というジャンル決し世界的普遍性持っているわけではなく、最も進んだ文学ジャンルでもない。それがそのように思われてきたのは、そのジャンル運んできたのが〈先進国〉の人間であったからであり、そしてその次の段階では、〈後進国〉の中からそのジャンルを〈移植〉しようとする人間現れる。その点で逍遥小説神髄』と実作は、世界史的に見ても最も早い移植」の実践例である。亀井はその点を指摘しながら、その論証過程で、〈近代〉のイデオロギー担い手としての小説小説社会相互反映リフレクション)関係などの問題取り上げ、〈近代〉と〈文学研究新たな課題提示した。 なお、亀井は、『感性の変革』の頃から、江戸時代明治以降との関係をプレモダンモダンという〈歴史〉的枠組みでとらえるとこを止めている。これは亀井モダンポストモダンという発想から距離を取ってきたことと関係する

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