構造主義的マルクス主義
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構造主義的マルクス主義(こうぞうしゅぎてきまるくすしゅぎ、英:structural Marxism)とは、ルイ・アルチュセールやニコス・プーランザスを代表とする階級論と国家論の総称であり、西欧マルクス主義の主な潮流の一つである。
概要
そもそもは、アルチュセールが『マルクスのために』、『資本論を読む』のなかで提唱したマルクス主義の立場に由来する。アルチュセールは、経済決定論やヘーゲル歴史主義、実存主義といったそれまでのマルクス研究がもちこんだ外的要素を取り去って、カール・マルクスのテキストそのものの「構造」にしたがって読むことを提案した。
そして、この構造主義的読解によれば、初期マルクスの思想は人間中心主義と歴史主義であり、その疎外論が形而上学的なイデオロギーであったのが、いわゆる「認識論的切断」によってこれを乗り越えて、後期思想において経済的構造の科学的認識を確立することができたという。すなわち、マルクスは、社会と歴史を、経済・政治・イデオロギーという諸水準の構造(審級)が接合(節合)し相互連関しあう全体として、つまり「重層的決定」のシステムとして捉えることができたというのである。
この「重層的決定」に代表される主張はいずれも構造主義理論から継承したものであるが、ここでの眼目は、彼らが、歴史的変動は構造そのものの中に内蔵されている矛盾の把握によってしか求められぬとして、階級と国家を中心にした経験的研究を推進したことにある。
たとえばプーランザスは、多元論的国家観および道具論的国家観のいずれをも退け、国家構造を資本主義のシステム的拘束や矛盾によって規定されたものとみなし、社会構成体内に存在している力学の解明に取り組んだ。
関連人物
- ルイ・アルチュセール
- ニコス・プーランザス
- エリック・オリン・ライト
- アントニオ・グラムシ
- シャンタル・ムフ
- エルネスト・ラクラウ
- ボブ・ジェソップ
批判
マルクス主義歴史学者エドワード・P・トムスンは1978年に『理論の貧困』を出版し、アルチュセールやプーランザスらの構造主義的マルクス主義を、非歴史的なshit (シット)(英語で糞を意味する)であるとして次のように批判した[1] [2]。
マルクスとエンゲルスの書簡に頻繁に見られるカテゴリーを用いれば、現状を正確に定義できるかもしれない。しかし、それはアルチュセールの用心深い兆候的な精査を逃れたカテゴリーに限る。ブルジョア社会学とマルクス主義構造主義(ダーレンドルフとプーランツァス、近代化理論と理論的実践)が共に歯向かうこの「歴史と構造」などというshit (糞)は、概念を麻痺させ、過程の脱歴史化、そして階級、イデオロギー、社会構成、そしてその他ほとんどすべてのものをカテゴリー的停滞へと貶めることによって、私たちに吐きかけられてきた。…システム分析と構造主義、そのトルクと組み合わせ、反事実的虚構、計量経済と測定のための溝切り器――これらの理論は、静的なカテゴリーから次の静的なカテゴリーへと、プログラムされた経路をよろめきながら進んでいく。そしてそれらはすべてGeschichtenscheissenschlopff、非歴史的なshitなのだ。 — E.P.Thompson,The Poverty of Theory,1978
引用文中のGeschichtenscheissenschlopffはドイツ語では正確には意味をなさないが、トムスンは「非歴史的な糞(くだらないもの、たわごという意味で用いた[2]。
脚注
注釈
出典
- ^ E.P. Thompson,The Poverty of Theory,1978.E.P Thompson Archive, Marxists.org.
- ^ a b Sutton, A. (2025). Revisiting Approaches to British Imperialism. The Journal of Imperial and Commonwealth History, 53(2), 209–239. https://doi.org/10.1080/03086534.2025.2485331
参考文献
- ルイ・アルチュセール『マルクスのために』(平凡社, 1994年)
- ルイ・アルチュセール『資本論を読む』上・中・下巻(筑摩書房, 1996-97年)
- E.P.Thompson,The Poverty of Theory,1978
構造主義的マルクス主義と同じ種類の言葉
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