【F4F】(えふよんえふ)
Grumman F4F "Wildcat(ワイルドキャット)"
アメリカ合衆国のグラマン社の開発した艦上戦闘機。
F3Fの後継として1935年に開発が開始され、当初は複葉機として開発を進めていた(XF4F-1)が、ブリュースター社のXF2A-1(後のF2A「バッファロー」)が海軍から試作発注を取り付けたのに伴い、僅か三ヶ月でキャンセルとなった。
これを受けてグラマン社は単葉機にした設計案を提出、1935年7月28日に原型機試作が発注された。
このXF4F-2は1937年9月2日に初飛行し、さらに2年後の1939年2月12日初飛行の改良型、XF4F-3はテストにおいて時速530km以上の最高速度と、それまでの機体と比較して良好な運動性能を発揮した。
1939年8月に量産型F4F-3が生産を開始され、その後すぐにヨーロッパの航空戦の戦訓から防弾板の追加等が施され、アメリカ海軍他イギリス軍でも使用された。
太平洋戦線においては海軍の艦上戦闘機の主力として投入された。速度・運動性共に零戦に比べると劣っていたが、機体の頑丈さ、そして急降下制限速度で勝っており、二機一組となっての一撃離脱戦法やサッチウィーブによって勝利を収めることが可能だった。
特に無線機の性能が日本より高く、相互に連携した戦闘が可能だったため、戦争中期まで第一線機として使用された。
1943年から後継のF6Fが投入されるようになると一線の戦闘機からは引き下がり、護衛空母に搭載されたり、哨戒機として活躍した。
スペックデータ
型式 | F4F-4 |
種別 | 艦上戦闘機 |
主任務 | 制空 |
主契約 | グラマン社 |
初飛行 | 1935年7月28日(XF4F-2) |
乗員 | パイロット1名 |
全長 | 8.76m |
全高 | 2.81m |
全幅 | 11.58m |
主翼面積 | 24.15㎡ |
最大離陸重量 | 3,600kg |
エンジン | P&W R-1830-86「ツインワスプ」空冷星型複列14気筒(1,200馬力)×1基 |
速度 (最高/巡航) | 512km/h / 249km/h |
最大上昇高度 | 12,000m |
航続距離 | 1,239m |
固定武装 | 12.7mm機関銃×6門 |
バリエーション
- XF4F-1(社内呼称G-16):
複葉機型原型の提案。
- XF4F-2(社内呼称G-18)(1機):
単葉機型原型。
- XF4F-3(社内呼称G-36):
XF4F-2の改造型で、XR-1830-76(1,050馬力)搭載の原型機。
- F4F-3(285機(3A型の95機を含む)):
R-1830-76搭載の最初の量産型。12.7mm機銃4門を搭載。
- F4F-3A:
R-1830-90搭載のF4F-3発展型。F4F-6から改称。
- F4F-3P:
F4F-3の偵察型。ごく少数機が改装。
- F4F-3S(2機):
二式水上戦闘機に対抗して試作された水上機型試作機の非公式呼称。
通称"WildcatFish"。
- F4F-4(1,169機):
R-1830-86エンジン(1,200馬力)や主翼折りたたみ機構を搭載した型。
最も多く生産された。
- F4F-4A:
Martlet Mk.IIIの米国内呼称。エンジンはR-1830-90を搭載。
- F4F-4B:
Martlet Mk.IVの米国内呼称。R-1820系エンジン搭載。
- F4F-4P:
F4F-4の偵察機改装型。ごく少数機が改装。
- XF4F-5(社内呼称G-36):
AR-1820-40エンジン搭載の原型機。
- F4F-6:
F4F-3Aに最初につけられていた呼称。
- F4F-7(社内呼称G-52)(21機程度):
カメラを搭載し、燃料を増やした偵察機型。
- XF4F-8:
新設計のフラップとカウルを搭載した試作原型機。
- FM-1(1,060機(マートレット含む)):
ジェネラルモーターズ社製作の機体。F4F-3と同じ機体。
- FM-2(4,127機(イギリス給与機含む)):
同社製作の機体。XF4F-8をベースに軽量化されている。
エンジンはライトR-1820-56「サイクロン9」(1,350hp)を搭載。
- XF2M-1:
同社提案の発展開発型。製作されず。
- Martlet Mk.I:
フランスが発注していたが、降伏したため英軍へ供給されたG-36Aの呼称。
主翼折りたたみ機能無し。
- Martlet Mk.II:
英軍に供給されたG-36Bの呼称。Wildcat Mk.IIと改称。
主翼折り畳み機能付きで、エンジンはP&W R-1830-S3C4-Gを搭載する。武装はF4F-4に準拠。
- Martlet Mk.III:
ギリシャが発注していたが、降伏したため英軍に供給されたF4F-4Aの呼称。Wildcat Mk.IIIと改称。
基本はF4F-3Aに準ずる。主翼折り畳み機能無し。
- Martlet Mk.IV:
英軍に供給されたF4F-4Bの呼称。Wildcat Mk.IVと改称。
エンジンはR-1820-40BおよびGR-1820-G250A-3を搭載した。
- Martlet Mk.V:
英軍へ供与されたFM-2の呼称。Wildcat Mk.Vと改称。
- Wildcat Mk.I:
Martlet Mk.Iを改称した後の呼称。
- Wildcat Mk.VI:
英国が発注したFM-2の英国呼称。
F4F (航空機)
(F4 F から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/28 00:49 UTC 版)
F4F ワイルドキャット
注釈
- ^ 尚、「FM-1」、「FM-2」という表記がされることが多いが、この場合の「-1」、「-2」は当時のアメリカ海軍命名規則(機種符号+設計番号+メーカー符号、戦闘機のF・ジェネラル社に割り当てられたMで1は使用しない、型番の-1/2/3等)からは「F4F-3」の「-3」の部分に当たり、「第*次改良型」を示す
- ^ 幅が11.58mから4.37mに減少、それまでの型2機分のスペースに5機を搭載できた。
- ^ この時、ブラックバーン社によりスロットルの動作方向はフランス式からイギリス式に変更されている。
- ^ 英国海軍の空母艦載機は未だに単葉機への完全転換もならず、さらには老朽化した複葉戦闘機に変わりスクア急降下爆撃機が戦闘機の代わりをしているという状況であった。また、スクアの戦闘機型であるロックは、戦術思想的失敗と設計的失敗から艦載機としての運用は絶望的であり、さらには、ロックとスクアの交換機として配備したフェアリー社製フルマー戦闘機は爆撃機を基にした複座戦闘機であり、新鋭機の導入は急務であった。
- ^ この時撃ってこないため相手の故障に気がついた
- ^ 零戦は速度が300km/hを越えたあたりから舵が重くなり、500km/hを越えたあたりでは、ほぼ舵が動かなくなったという。また、試作段階において急降下を行った際に空中分解を起こしており、急降下には厳しい速度制限があった。
- ^ ゼロ(零戦のこと)と格闘戦をしてはならない。時速300マイル以下において、ゼロと同じ運動をしてはならない。低速時には上昇中のゼロを追ってはならない。
- ^ 搭載可能燃料は機体内燃料タンクに144gal (545ℓ)、落下増槽タンクを58gal (220ℓ) ×2の合計260gal (984ℓ)
- ^ F4F-3:[PROPELLER:CURTISS ELECTRIC C.S.、BLADE:NO.512 (×3)、DIAMETER:9ft 9in (2.97m)、Area:6.94m²]
F4F-4:[PROPELLER:CURTISS ELECTRIC C.S.、BLADE:NO.512-ICL-5-15 (×3)、DIAMETER:9ft 9in (2.97m)、Area:6.94m²] - ^ a b 航続距離はF4F-3は条件不明、FM-2では燃料消費量+5%、F4F-4/XF2M-1では燃料消費量+15%の補正後に算出されている
- ^ 搭載可能燃料は
FM-2では機体内燃料タンクに126gal (477ℓ)、落下増槽タンクを58gal (220ℓ) ×2の合計242gal (916ℓ)
XF2M-1では機体内燃料タンクに150gal (568ℓ)、落下増槽タンクを58gal (220ℓ) ×2または100gal (379ℓ) ×1の最大266gal (1,007ℓ) - ^ FM-2:[PROPELLER:CURTISS ELECTRIC C.S.、BLADE:NO.109354-12 (×3)、DIAMETER:10ft (3.05m)、Area:7.30m²]
XF2M-1:[PROPELLER:AEROPRODUCTS、BLADE:NO.H-20-156-19M (×3)、DIAMETER:11ft 4in (3.45m)、Area:9.37m²]
出典
- ^ Hickman, Kennedy. "World War II: Grumman F4F Wildcat." About.com. Retrieved: 2010-6-15.
- ^ Polmar, Norman. Historic Naval Aircraft. Dulles, Virginia: Potomac Books Inc., 2004. ISBN 978-1-57488-572-9
- ^ Treadwell, Terry. Ironworks: Grumman's Fighting Aeroplanes. Shrewsbury, UK: Airlife Publishers, 1990. ISBN 1-85310-070-6
- ^ F4F-3 Wildcat Specifications BU. OF AERO., NAVY DEPT. PERFORMANCE DATA
- ^ F4F-4 Wildcat Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
- ^ ENGINE POWER "NORMAL"
- ^ FM-2 Wildcat Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
- ^ XF2M-1 Wildcat Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
F-4F
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 06:07 UTC 版)
F-4Eを西ドイツ空軍(当時)の要求に合わせ改修。F-104Gの後継機(戦術攻撃機)として導入した為、主翼は可動式前縁スラット付き、スタビレーターは固定式前縁スラットが無い在来型の組み合わせとなり、スパローの運用能力の割愛といった改修が加えられている。
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