ETS及び受動喫煙に関する報告・論文
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「受動喫煙」の記事における「ETS及び受動喫煙に関する報告・論文」の解説
(単独研究)1981年に平山雄により、受動喫煙と肺癌による死亡の関連を示す論文が発表された(いわゆる平山論文)。 (単独研究)1998年の国際がん研究機関(IARC)の疫学調査では74歳までの肺癌と関連疾患者650人の患者に対して受動喫煙の聞き取り調査を行った。欧州7カ国12施設での患者たちは生涯400本以上喫煙をしたことが無い者が選ばれ、調査が行われた。結論として幼年期に於けるETSでの肺癌に掛かる危険性を見出せなかった、との報告が行われている。15年以上の期間が開いた患者たちには有意性が認められなかったとの論文が発表されている。2000年4月8日付け『ランセット』(The Lancet)の出版物の中で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者達がフィリップ・モリス社及び他のたばこ会社の内部資料を検証した結果、たばこ産業側がメディアにデマを流すなど、論文の解釈に混乱と論争を引き起こすよう画策し、IARCの受動喫煙についての調査研究を妨害していた旨の報告を行っている。 2000年8月2日にWHOたばこ産業文書に関する専門家委員会は、アメリカにおけるたばこ産業に対する訴訟において、たばこ会社の秘密文書が公開された結果、たばこ業界が秘密裏に資金を提供している、学会もどき、世論形成団体、ビジネス団体等を通じ、WHOのタバコ規制に対する妨害工作を行っていたこと、その活動が、たばこ産業界と陰で資金的につながりのある国際的な科学者達に強く依存していた旨を報告している。 (研究総括報告)2002年IARCは「受動喫煙は人に肺癌を起こすと結論づける十分な証拠がある」と報告した。 (研究総括報告)米国カリフォルニア州環境保護庁はETSは毒性を持つ空気汚染因子と報告した。 (単独研究)2003年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者James E Enstromとニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のGeoffrey C Kabat準教授による論文が、英医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』(BMJ)に掲載された(これより以前に、同研究は統計上の瑕疵のため、別の学術誌への論文掲載を却下されている)。1959年末に米国がん学会のがん予防研究対象者で1998年まで追跡調査を行った成人118094人を対象とし、特に研究対象の中で喫煙者の配偶者を持つ非喫煙者65561人を焦点をあて、冠状動脈性心臓病、肺癌、慢性閉塞性肺疾患による調査をした疫学研究。調査期間は39年間にわたる長期のコホート研究である。結果として軽微な影響はあるもののETSとたばこに関連する死亡率の因果関係を示していない。ETS曝露による虚血性疾患・肺癌との関連性は一般に考えられているより小さいかもしれないとの論文が発表されている。この論文を1面記事で伝えた『ガーディアン』など英各紙は、Enstrom氏がたばこ会社から研究資金を受けていることを指摘し、「この論文は無害性を強調し過ぎているきらいがある」とする英国の専門家のコメントを紹介している。なお、この研究の利害からの中立性や、研究そのものの科学的な妥当性に関しては、アメリカがん協会(ACS)のものをはじめとした批判が発表当初から存在した。そして2006年に同論文は、連邦裁判所から「大衆を欺く目的で科学に操作を加えた詐欺行為」とされた。 詳細は「エンストローム論文」を参照 (研究総括報告)2006年、米国公衆衛生局長官年次報告で「受動喫煙は小児および成人において、疾病や早死を起こす」と報告した。 (単独研究)2007年の米国神経学会(AAN)の年次集会において、米カリフォルニア大学バークレー校統計学のサデウス・ヘイト(Thaddeus Haight)が「受動喫煙がアルツハイマー病などの認知症リスクを高める」と報告した。長期の心血管健康調査に登録した約3,600人のデータを評価し、心血管疾患も認知症も認めない985人の喫煙未経験者と、受動喫煙に平均28年間曝露された495人とを比較した。6年間の追跡調査の結果、受動喫煙に30年以上曝露された高齢者が認知症になる可能性は曝露のない人に比べ、約30%高く、心血管疾患を有する人が受動喫煙に長期間曝露された場合には、認知症リスクがほぼ2倍に増大した。このほか、心血管疾患と診断されていなくとも、頸動脈に狭窄などの異常が認められ、受動喫煙に曝露された人の認知症リスクは、どちらもない人の2.5倍になることも示された。 (単独研究)2007年9月4日、欧州心臓学会議において、2004年3月に世界で初めて職場での禁煙制度を全国的に導入したアイルランドでは、同制度導入後の1年間で、心臓発作の件数が約1割減少したことについて、同国のコーク大学病院の研究チームが発表がしている。エドモンド・クローニンが率いる同チームは、同国南西部の公立病院に心臓発作で入院した患者数を調査。禁煙制度導入後の1年で11%減ったことが明らかになったとしている。
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