平山論文とは? わかりやすく解説

平山論文

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 00:23 UTC 版)

平山論文(ひらやまろんぶん)とは、1981年1月17日平山雄により発表された受動喫煙の可能性を初めて論じたとされる論文、「Non-smoking wives of heavy smokes have a higher risk of lung cancer: a study from Japan[1]」である。受動喫煙と肺がんの関連の証拠を提示した最初の報告の一つであり、その後の多くの研究で裏付けられ「平山の業績は時の試練に耐えている」と評価されている[2]

論文の要旨

厚生省の委託研究として行われ、40歳以上の非喫煙者を妻帯する91,540組を16年間 (1966年〜1981年) 追跡するコホート研究の結果を、イギリス医師会雑誌[3]投稿したものである。

妻の標準化死亡比を夫の喫煙習慣ごと5つのサブ・グループに分類評価すると、91,540人における肺がん死亡者は174人 (0.19%) の調査結果となった。平山は重喫煙者の妻ほど肺がん死亡のリスクが高く、用量反応関係が存在すると因果関係を提示した。また、夫が40〜59歳の農業従事者の場合にリスクが特に高いとしている。平山論文は受動喫煙とがんの関係性を初めて示した論文として画期的だった一方、一部の研究者は、この調査には誤分類、交絡変数の介入が散見され信頼に値しないと指摘している。

本論文発表同年の1981年、受動喫煙と肺がんに関し別の2つの研究がギリシャアメリカの研究者によって発表され、共に受動喫煙で肺がんリスクは上昇するとしたが、アメリカの研究はその有意性を見出せなかった。本論文の調査内容は、病理学診断の無実施、多くの誤分類、交絡変数、外出先、職場、家屋の容量や換気力なども考慮されず、統計学偏差が大きく[4]、調査自体は様々なデータにおけるひとつのデータ、と評価されている。本論文では夫の飲酒習慣も追跡したが、死亡原因に対する影響は見出されなかった。

評価と批判

  • 喫煙科学研究財団の助成研究では、肺がんの診断が死亡診断書によるものが大半で肺がんの組織学的データは稀で、誤分類、交絡変数の介入が頻出など信頼に値しないと問題を指摘する一方、受動喫煙の可能性を初めて論じたと評価している[4]
  • 山崎正和は厚生省「21世紀のたばこ対策検討会」で、本調査の原資料を開示請求するも「この資料は反喫煙論者しか見せられません」と反喫煙者の医師である座長に言われた、と述べて統計データが検証不可能であると批判している[5]
  • 獨協医科大学の名取春彦は、平山論文は結論だけが一人歩きし、正しく内容が吟味されていないだけではないかと指摘している[6]
  • 秦郁彦は、平山が臨床経験を有さないなど否定的見解を示しつつ、世界初の受動喫煙の概念と評価している[7]

脚注

  1. ^ Takeshi Hirayama (2000-07). “Non-smoking wives of heavy smokes have a higher risk of lung cancer: a study from Japan” (english). Bulletin of the World Health Organization (Geneva, Swiss Confederation: World Health Organization) 78 (7): 940–942. ISSN 0042-9686. PMC 2560807. PMID 10994269. http://www.scielosp.org/scielo.php?pid=S0042-96862000000700013&script=sci_arttext 2013年4月29日閲覧。. 
  2. ^ Ong E, Glantz SA. "Hirayama's work has stood the test of time". Bulletin of the World Health Organization (Geneva, Swiss Confederation: World Health Organization) 78 (7): 938–939. PMC 2560807 PMID 10994268
  3. ^ Takeshi Hirayama (1981-01-17). “Non-smoking wives of heavy smokes have a higher risk of lung cancer: a study from Japan” (english) (pdf). British Medical Journal (Clinical Research Edition) (United Kingdom: British Medical Association) 282 (6259): 183-185. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2560807/pdf/10994269.pdf 2013年4月29日閲覧。. 
  4. ^ a b 春日斉. 受動喫煙に関する基礎的研究. 公益法人 喫煙科学研究財団. http://www.srf.or.jp/histoly/frames/history-frame21.html 2013年4月29日閲覧。. 
  5. ^ 養老孟司山崎正和「変な国・日本の禁煙原理主義」『文藝春秋 (雑誌)』、文藝春秋、2007年10月、p.319。 
  6. ^ 名取春彦「オピニオンワイド たばこを考える 嫌煙は権利かファシズムか (12)名取春彦 獨協医科大学放射線科医師」『週刊現代』、講談社、2008年8月2日、pp.146-147。 
  7. ^ 秦郁彦「厚労省が血道を上げる「たばこ殲滅運動」の理論的支柱「平山論文」の不都合な真実」『SAPIO』、小学館、2012年6月27日。 

関連項目


平山論文

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喫煙」の記事における「平山論文」の解説

詳細は「平山論文」を参照 国立がんセンター長の平山雄1966年昭和41年)から1981年昭和56年)にわたって40歳上の健康な91,540人の中から発生した200人の肺がん患者疫学調査し、夫が喫煙する家庭では、非喫煙者の妻が肺がんかかって死亡する危険性があるとした。この平山論文は受動喫煙が持つリスク世界で初め指摘したものだが、調査手法不備について批判受けている。1985年2月12日フランスリヨンでWHOの機関である国際がん研究機関医学専門家50集まり、たばこ煙はヒトへの発がん性があるか否かについて最終的な結論をだす会議開かれ平山参加した化学的生物学的疫学的に検討され受動喫煙についても日本を含む各国の研究内容一つ一つについて詳しい検討批判議論行った会議最終日には満場一致で「たばこの煙(主流煙副流煙)のヒトへの発がん性証拠は十分」であると結論された。

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