80年代以降のファッション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/26 14:56 UTC 版)
「ヒップホップ系ファッション」の記事における「80年代以降のファッション」の解説
ヒップホップの音楽や文化が成長し進歩していくにつれ、そのファッションも変貌を遂げていった。フレッシュ・プリンス、キドゥン・プレイ、TLCのレフトアイなどの人気ラッパーたちは、蛍光色などの非常に明るい色使いの服装や、野球帽などの普段着の活用などの流行を作り出した。他にも、一時期的な流行が、次々と生み出されていった時期であった。 1990年代の中頃には、ギャングスタ・ラップがヒップホップの中心的な存在となり、ヒップホップ系ファッションは、路上で暗躍するギャングや収監された犯罪者たちの格好から大きな影響を受けていく。これらは、極太のパンツや黒色の刺青など、現在のヒップホップ系ファッションにも通じるものも多く、この時期の西海岸におけるチカーノ(メキシコ系アメリカ人)ギャングの文化から派生してきたものである。同時に、チカーノギャングに見られるハンドサインや地元/縄張り意識といった特徴も、西海岸に住むアフリカ系の若者たちに伝播し、すぐに全国的な普及を見せていった。彼(女)らは、ベルトを着用せずに極太のパンツをはくのを好んだが、これは服役囚が新しい制服を配給される前に、まずベルトを押収されたことに由来する文化であった。これに加え、西海岸ではフランネルの上着、コンバースのチャックタイラー・オールスターなどの人気が高まる一方で、東海岸では、パーカー、軍帽、フィールドジャケット、ハイテクブランドのパラミリタリー・ブーツ、ティンバーランドのブーツなどが流行した。マスターP、オールド・ダーティ・バスタードなどのラッパーに代表されるように80年代後半から90年代前半にかけて金歯の流行も沸き起こった。金歯と言っても、全部の歯の表面を金で覆うこともあれば、高価な金属や宝石を歯に永久的に固定することもあった。しかしいずれにせよ、ネックレスが首から引きちぎられたり、財布などがポケットからすられたりしてしまうのとは異なり、金歯は他人に奪われる危険を冒さずに、自己主張を行ったり、自分の地位をひけらかすことができる道具であった。またこの時期、ナイキのエアフォース1やフィラのスニーカーも、ヒップホップ系ファッションの重要な一部を占めるようになっていった。 90年代の中盤、1983年のスカーフェイスのリメイク版に端を発し、マフィア的な要素がヒップホップの中で人気を集めるようになり、ノトーリアスBIGやジェイZに代表されるフェドラ帽やワニの革靴の流行が始まる。但し、デトロイトなどの中西部の一部では、このような格好は、常に服飾文化の中核であり続けてきていた。 90年代の後半、ヒップホップが隆盛を極めていく中で、当時、ニューヨーク界隈では、「輝くスーツを纏う男」として知られた存在であったショーン・コムズ(現 ディディ)の作品から、市場活動の道具として製作されるビデオに、新しい色彩や輝きを加えるために、派手で光り輝くスーツや白金の宝石などがヒップホップの最先端となっていく。コムズは、ショーン・ジョンという自身のクロージングブランドを立ち上げ、ヒップホップ系ファッションを表舞台に紹介すると同時に、数百万ドルを稼ぎ出す巨大産業へと発展していく契機を作り出した。 伝統的なアフリカ系アメリカ人的な髪型の復興の兆しも見られる。コーンロウ、アフロ、シーザーショートカットなどが再び人気を集めるようになってきた。シザーズやコーンロウは、その髪型を維持するために、自宅にいるときや睡眠時には、頭全体をバンダナやドゥラグと呼ばれるもので覆うことで維持される。このため、バンダナがヒップホップ系ファッションにおいて、流行するようになった。 「大衆化したヒップホップ」の時代においては、かつては程度の差こそあれ、大よそ似たような傾向を見せてきた男女の服装様式に差異が生まれ始めた。ヒップホップ界の女性は、極太のパンツ、「チンピラ風」サングラス、厳つい容貌、重厚な作業ブーツなどの荒くれ者的なファッションに張り合ってきた。ダ・ブラットに代表されるように、口紅や厚化粧をすることにより、作業ズボンや作業ブーツに女性らしさを加えることで、男性との張り合いを続けてきた。しかしリル・キムやフォキシー・ブラウンの登場で、女性ラッパーたちの潮流に大変革が訪れた。魅惑的で、上品な女性的ヒップホップ・ファッションの流行が始まったのである。ベイビーファットのキモラ・リー・シモンズのデザインなどが典型的なものである。このような女性的なヒップホップ系ファッションが登場してきた中で、ローリン・ヒルやイブのように、伝統的な格好を選択するラッパーもおり、この両方が女性ヒップホップ・ファッションの二大潮流となっている。 ヒップホップ界で最も大きな人気を集める金属が金から白金に移り変わって以来、ミュージシャンもファンも、こぞって白金や銀の宝石を身に着けるようになった。多くの場合、それらの宝石にはダイヤがちりばめられている。白金の宝石は、ヒップホップの発信者/受信者の両者にとって、一番の自慢の種となっていく。1999年にBGがそのような現象を「ブリン・ブリン」という曲の中で端的に表現した。BGも在籍したキャッシュマネーミリオネアのリル・ウエインがこの「ブリン (bling) 」という言葉を作り出したわけだが、BGのヒットで、この言葉は「高価な宝石」や「浪費と見せびらかしに明け暮れる人生」を意味するヒップホップの俗語として定着していった。またプラチナ製の前歯も人気を集めるようになった。キャッシュマネーレコードのブライアン・ベイビー・ウイリアムスは、全部の歯をプラチナ製の歯と交換している。そこまでしなくとも、グリルや取り外し可能な歯の装飾品を使用する者も多い。
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