2011年までの動き
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「上関原子力発電所」の記事における「2011年までの動き」の解説
2008年10月16日、自然保護団体「長島の自然を守る会」など複数の団体が、原発予定地の埋め立て許可を出さないよう求めた署名計約8万筆を山口県知事に提出し、10月20日には山口地方裁判所に対し漁業者74人が県に埋め立て免許を出さないよう求める提訴を行ったが、その直後の10月22日、山口県知事の二井関成は中国電力に対して用地を造成するための公有水面埋立免許を交付し、建設に向けて動き出した。計画が環境保全に十分に配慮しているとの判断によるものだが、同時に中国電力に対しては地元住民などから提出された意見書が1457通を数えたことにも留意すること、天然記念物であるカンムリウミスズメの調査を継続すること、地震に備えて活断層の調査を行うことなどを要求し、知事自身も「決して喜んで交付したわけではない」と述べるなど、複雑な心境を見せた。 2008年12月には、スナメリやカンムリウミスズメ、希少貝類のナガシマツボなど生物6種を原告に加えたいわゆる自然の権利訴訟が起こされ、山口県知事を相手に埋め立て取消を求める裁判が行われている。生物6種については「原告適格なし」と判断され棄却されているが、埋め立ての取り消しを求めた裁判そのものは継続中である。 2009年4月、山口県から保安林作業の許可を受けた中国電力は、原子炉設置許可申請に先駆けて敷地造成工事に着手し、山林開拓や海面埋め立てを行うための排水路の整備や森林伐採を進めている。以後、周辺の断層の追加調査や、カンムリウミスズメの繁殖の有無を巡る論議、予定地内にある田ノ浦遺跡の発掘調査などを続け、9月10日には埋め立て準備作業としてブイの敷設が開始されたが、対岸の平生町田名埠頭からブイを積み出す際に反対派の漁船や環境保護団体メンバーらのシーカヤックが実力行動でこれを阻止するなどしており、作業は一時停滞していた。これに対し、中国電力側は公有水面での妨害行動を禁止する仮処分申請を山口地裁岩国支部に申請。同支部は2010年1月18日にこれを認めた。一方、反対派活動家らはこれを不服として保全異議申し立てを行ったが、この申し立ては却下された。2010年9月には反対派活動家による妨害活動の禁止を命じる仮処分申請への抗告を広島高裁が棄却したが、反対派はこれを不服として特別抗告を行った。なお、この仮処分手続きについては、2011年4月1日に中国電力が仮処分申請を一旦取り下げている。 2009年12月18日、中国電力は、上関原発1号機について、原子炉設置許可を直嶋正行経済産業大臣に申請したことを発表した。 2011年3月14日、東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故の発生を受け、山口県知事二井関成は臨時の記者会見で、「(福島の事故に対する)これからの国の対応を十分に見極めて、極めて慎重に対応を進めてもらいたい」と語り、中国電力に対して事実上の埋立工事の中止を要請、中国電力はこれに対して3月15日に造成工事の中断を発表した。ただし耐震安全性を調べる追加の地質調査と、動植物の生息状況などを調べる環境監視調査は続けており、これについて中国電力は「国の安全審査に反映させる地質調査は急ぐ」と説明している。この中国電力の動きに対し、二井知事は「私の方では(調査の継続は)考えていなかった。国の方の指導を受けて、この問題については対応してもらいたい」と語る一方、現地作業着手のきっかけになった2008年の原発予定地の埋め立て許可について「これだけの事故が起きたわけですから、(原子炉設置)許可が出る前に埋立てをしていていいのかどうか。はっきり言うと、埋立てをしたけれども、許可が出なかったと、そういうことがあったらどういうことなのか」と語り、原子力発電所における公有水面埋立法の運用手続きに問題があるとの見解を示している。 中国電力社長の山下隆は、2011年3月28日の記者会見で、今後の原発建設計画について「建設工程を変更することも考えられるが、具体的に申し上げる状況ではない。今後、エネルギー問題、原子力政策が議論される中で的確に判断していきたい」と将来的な見直しの可能性を示唆する一方で、「エネルギーセキュリティー確保や地球温暖化防止の観点から原子力発電は必要な電源であり、計画を進める方針に変わりはない」と、基本的に上関原発建設計画を堅持する意向を明らかにしている。
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