飛躍への基礎固め
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 02:45 UTC 版)
路線網の整備とともに、サービスの充実も図られることとなった。1920年にはイロハ式の系統表示を開始したほか、後述のように日本初の婦人専用電車の運転を開始した。婦人専用電車は短期間の取組で終了したが、2期線がほぼ完成した1924年2月に運転系統の大改正を実施、これを機に系統表示をイロハ式から神戸を訪れる外国人に配慮して、日本初採用といわれるアラビア数字を使用したものとなった。 進取の気風は車両の面でもあらわれた。1920年には日本初の低床ボギー車であるC車10両(後の500形501~510)が登場、翌1921 - 1922年にかけて登場したE車20両(後の500形511 - 530)とともに激化する混雑緩和に寄与した。低床車は同時期に製造されたD車(Nos.101~150)、F車(Nos.171~175)といった単車にも導入され、ステップを低くすることで乗降環境の改善に寄与した。そして1923年には日本初の鋼製車(スチールカー)として知られるG車20両(Nos.181~200 後に201~220に改番)が登場、引き続いて登場したH車(Nos.221~240)とともに安全性と経済性の両面から鋼製車体の有利なことを実証したことから、翌1924年には神戸市内に乗り入れる阪急、阪神の両私鉄が500形(阪急)、371形(阪神)といった鋼製車を就役させたほか、その後鉄道省はじめ全国の鉄道事業者が鋼製車両を導入するきっかけとなった。市電においても以後の増備はすべて鋼製車となり、I車(Nos.531~550)、J車(Nos.551~562)、K車(Nos.563~587)、L車(Nos.588~597)といいった3扉大型ボギー車が続々と製造された。また、G車の登場とともに、障害物が前面のストライカーに接触すると前輪の前に設けた救助網が自動的に落下して障害物が車輪に巻き込まれる前にすくい上げるフェンダー・ストライカーを採用、安全面の向上に貢献するとともに、その後40年近くにわたって市電による人身死亡事故が発生しないという快挙のもととなった。 車両面の充実のほかに路線の延長や施設の改良・拡充も積極的に行われた。1921年には第3期線として須磨線、高松線、板宿線、夢野線、脇浜線などの路線を出願、中でも須磨線は兵庫電気軌道の海岸支線と競願となったが、前年に合併した須磨町との合併交渉の際に市電路線の旧町内への延伸を強く要望され、合併後は新たに設けられた林田区、須磨区の住民が「市電須磨線速成同盟会」を作るなどして積極的に運動を行った住民側の動きなどが考慮されて、市側に免許が交付されることとなった。この他の路線は脇浜線の脇浜 - 芦屋川間や板宿 - 五番町7丁目間の山手線などのように他社との競願・並行路線の免許申請は却下されたものの、おおむね受理されて1922年8月17日付で須磨線をはじめ高松、板宿、夢野、脇浜各線の免許が交付された。路線の延長は沿線人口の増加が著しい須磨線から開始され、都市計画事業の起債認可が遅れたために工事開始も遅れたが、1924年から1927年にかけて須磨駅前までの全線が開通、続いて高松線の延長工事が行われ、1928年11月に高松跳開橋が竣工したことから、同月19日に全通、兵庫運河周辺の住工混在地域の利便性が向上した。市電の延伸を支えるように車庫や工場の拡充も行われ、1922年には長田工場が車庫を併設した形で開設、工場は修繕業務のほか、車両の自家製造を行う方針で建設された。車庫も市営当初の小規模なものを昭和初期までに須磨、布引、春日野、長田の4車庫に集約して管理の効率化を図った。 ところが、1929年に発生した世界恐慌や、同時期に勃興してきたバスやタクシーの前に、市電の利用者数は1928年をピークに減少傾向を見せ始める。また、市内の鉄道網も東海道・山陽本線灘駅 - 鷹取駅間の高架複々線化及び吹田駅 - 須磨駅間電化に伴う省線電車の運転開始をはじめ阪急神戸線の三宮駅延長、阪神本線の岩屋駅以西の地下化および三宮駅 - 元町駅間の延長が1936年までに実施され、1927年には阪神間に新たに整備された阪神国道上に阪神国道電軌が開業し、同年には宇治川電気によって兵庫電気軌道と神戸姫路電気鉄道が経営統合されたことによって1928年には兵庫 - 姫路間直通運転が開始され、同年には神戸有馬電気鉄道が開業するなど、昭和初期に市内の交通地図が大きく変更されようとしていた。市電もこれらの情勢を踏まえて、ソフト・ハードの両面から大きな変革を遂げることとなった。 なお、神戸市でも1930年から市バス事業を開始している。
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