雨乞い
『黄金伝説』109「聖ドナトゥス」 旱天が3年続き、聖ドナトゥスが雨乞いをする。たちまち大雨が降って人々はずぶ濡れになるが、ドナトゥスだけは少しも濡れなかった。
『江談抄』第1-17 大僧都空海は、神泉苑で請雨経法を7日修して雨が降らず、2日のばして9日にすると、龍が神泉苑の池を破って昇天し、たちまち雨になった。大僧都元杲も7日間雨が降らず、9日目に雨が降った。少僧都元真は、7日間雨が降らず、2日のばしてもとうとう降らなかった。阿闍梨仁海は、寛仁2年(1018)6月4日に請雨経法を始め、5日間雨が降った。
『今昔物語集』巻14-41 弘法大姉が神泉苑で請雨経の法を7日間行なうと、天竺阿耨達智池に住む善如龍王が祈雨の壇上に現れ、にわかに黒雲が出て雨となった。
『西遊記』百回本第87回 天竺鳳仙郡の郡侯が天の祭りをないがしろにしたので、玉帝が怒り、10丈の米の山を雛鳥が食い尽くし、20丈の粉の山を狆がなめ尽くし、金の錠前を小さな灯火が溶かすまで、雨を降らさぬようにする。孫悟空が天宮へ雨乞いに行き、「人々が善を行えばよい」と教えられる。鳳仙郡の人々は読経し念仏を唱え、たちまち慈雨が降りそそぐ。
『三国志演義』第29回 日照りに苦しむ民を救うため、于吉が天から3尺の雨を請い受けて、大雨を降らせる。しかし、彼は妖術使いとして孫策に首をはねられる。
『捜神記』巻1-25 民が雨乞いの泥人形を作るのを見た呉王孫権が、そのことを葛玄に相談する。葛玄は呪文を書いて氏神の社に貼り、たちまち大雨が降って水が地に溢れる。王は「この水の中に魚はいるか」と問い、葛玄が再び呪文を書き水中に投げると、数百匹の大魚が現れる。
『捜神記』巻8-2(通巻228話) 商の代に7年間の大日照りが続いたので、湯王は桑林で神を祀り、爪と髪を切り、自らを生贄として捧げる心で祈願した。するとたちまち大雨が降り、国中がうるおった。
『捜神記』巻20-1(通巻449話) 日照りが続き人々が龍の住む洞穴に祈ったが、龍が病気であったために、十分な雨が降らなかった→〔恩返し〕1。
『日本書紀』巻24〔第35代〕皇極天皇元年(642)7月~8月 7月27日、百済大寺の南庭で、仏菩薩像・四天王像を安置して衆僧に大雲経を読ませ、蘇我大臣蝦夷が手に香炉を取り、香を焚いて雨を願った。28日、微雨があった。8月1日、天皇が南淵の川上で跪き四方を拝し、天を仰いで祈ると、雷鳴がして大雨が降り、5日間続いた。
『日本書紀』巻29〔第40代〕天武天皇5年(676)夏 大旱魃があり、諸神・三宝に祈ったが、雨は降らなかった。
『日本書紀』巻29〔第40代〕天武天皇12年(683)秋 7月から8月まで日照りが続いた。百済僧道蔵が雨乞いをして、雨が降った。
『日本書紀』巻30〔第41代〕持統天皇2年(688)7月 7月20日、百済僧道蔵に命じて雨乞いをさせると、午前を過ぎぬうちに、天下にあまねく雨が降った。
『列王紀』上・第18章 イスラエルに旱魃が続く。バアル神を拝む預言者450人と、主なる神に仕えるエリヤ1人とが、それぞれカルメル山上で雨を呼ぶ。バアルの預言者たちが祈ってもまったく雨は降らず、エリヤの祈りによって大雨が降る〔*エリアは民に命じてバアルの預言者たちを捕らえさせ、殺した〕。
『義経記』巻6「静若宮八幡宮へ参詣の事」 百日の日照りで、百人の高僧が雨を請うが降らない。ある人が「百人の美しい白拍子が舞えば、龍神も納受し給うだろう」と言ったので、白拍子が99人まで舞うが効験がない。百人目に静御前が舞うと、たちまち雷雲が起こり、3日間大雨が降った。
『夜叉ケ池』(泉鏡花) 日照りの折には、村一番の美女を裸体(はだか)に剥(む)き、仰向けに黒牛の背に載せて、夜叉ケ池まで送る。そこで牛を屠(ほふ)って村人がその肉を共食すれば、3日の雨が降り注ぐという(美女を殺すことはしない)。鐘楼守萩原晃の妻百合が雨乞いの生贄として選ばれ、彼女はこれを拒否して鎌で自害する→〔水没〕1。
*美女が一角仙人と交わり、雨を降らせる→〔誘惑〕3aの『今昔物語集』巻5-4。
*女性の裸身が雨を呼ぶ→〔彗星〕1の『子不語』巻7-179。
*女性が裸になって太陽神を呼ぶ、という物語もある→〔性器(女)〕1の『古事記』上巻。
★3a.龍が体をばらばらにされる、という犠牲をはらって雨を降らせる。
『今昔物語集』巻13-33 龍エン寺の僧の法華講説を、龍が毎日聴聞していた。日照りが続いたので、天皇の命令で、僧は龍に雨を請う。龍は法華経聴聞の礼に、命を棄てて大梵天王に逆らい、雨の戸を開いて3日3晩大雨を降らせる。後、山の池に、寸断された龍の死骸が見出された。
『雑談集』巻9-4「冥衆ノ仏法ヲ崇ル事」 昔、南都で祈雨の法華八講を行じた時、小龍が老翁の姿となって現れ、「大龍の許しを得ずに、我が命を棄てて雨を降らそう」と告げた。やがて雨が降り、雷が鳴って、3つに切られた龍が天から落ちて来た。
『金枝篇』(初版)第1章第2節 中国では、雨の神を表す巨大な龍を紙か木で作り、人々が行列して龍をあちらこちらへ引き回す。それでも雨が降らないと、龍は罵られ、ばらばらに引き裂かれる。
『金枝篇』(初版)第1章第2節 旱魃の際、セルビア人たちは1人の娘を裸にして、頭から脚の先まで草葉や花でおおい、顔まで隠れるようにする。この娘はドドラ(Dodola)と呼ばれ、娘たちの一団とともに村中を歩く。ドドラは踊り、娘たちは歌い、家々の主婦がバケツの水をドドラにかける。身に葉をまとったドドラは草木の霊を表し、彼女を水浸しにすることは、雨の模倣である。
『酉陽雑俎』巻14-541 荊州永豊県の東郷里に、長さ9尺6寸で人間に似た形の臥石が1つある。日照りの折には、この石を持ち上げた。少し持ち上がった時には、少し雨が降り、高く持ち上がった時には、大雨が降った。
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