集団労働紛争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/27 16:25 UTC 版)
労働関係調整法に定める三つある労働争議調整手段(あっせん、調停、仲裁)の一つである。手続が簡易で機動的なため、三つの手段の中で最も多く用いられている。 労働争議が発生したときは、労働委員会の会長は、関係当事者の双方若しくは一方の申請又は職権に基いて、あっせん員名簿に記されている者の中から、あっせん員を指名しなければならない。但し、労働委員会の同意を得れば、あっせん員名簿に記されていない者を臨時のあっせん員に委嘱することもできる(労働関係調整法第12条1項)。あっせん員の指名は、一事件につき2名以上でも差し支えなく(昭和22年5月15日労発263号)、多くの労働委員会では公・労・使の3名(三者構成)のあっせん員で構成している。 労働委員会は、あっせん員候補者を委嘱し、その名簿を作製して置かなければならない(労働関係調整法第10条)。あっせん員候補者の氏名、閲歴等は、少なくとも年一回中央労働委員会にあっては官報に、都道府県労働委員会にあっては当該都道府県公報に公示するとともに、適宜新聞紙等によって公表するものとする(労働委員会規則第68条)。あっせん員候補者の名簿には、次の各号に掲げる事項を記載する(労働委員会規則第67条)。 氏名及び職業 経験及び閲歴 委嘱の日付 あっせん員候補者は、学識経験を有する者で、労働争議の解決につき援助を与えることができる者でなければならないが、その労働委員会の管轄区域内に住んでいる者でなくても差し支えない(労働関係調整法第11条)。昭和27年の改正法施行によりあっせん員候補者と労働委員会の委員との兼職は妨げないことになった。特別調整委員とあっせん員候補者との兼職も勿論妨げない(昭和27年8月1日労発133号)。あっせん員候補者の選定基準(昭和21年10月14日厚生省発労44号)は、 あっせん員候補者は原則として中立的立場にある者につき委嘱すること。但し過去において労働運動の経験者であり、又は使用者であった者でも、現在基準に照して適格者であれば、必ずしも過去の立場に拘泥する必要はないこと。又労働委員会の委員中よりあっせん員候補者を委嘱することは勿論差支えないこと。 あっせん員候補者は労働問題につき理解を有し、かつ労働関係の当事者に信望のある者であると共に、労働問題に関連する法律、経済及社会問題について相当の知識乃至経験を有する者でなければならないこと。 あっせん員候補者は必要に応じ何時でもあっせん員として活動し得る時間的余裕を有する者なること。 あっせん員候補者の人選に際しては、当該地方の各産業に亘り夫々適任者を委嘱し置くよう考慮すること。 あっせん員候補者の員数は当該地方の産業の分布、労働関係の実情等によりなるべく多数委嘱して置くことが望ましいが要は真の適当者を得ることに重点を置き、員数に拘泥する必要はないこと。 あっせん員は、あっせんを開始するにあたり、関係当事者に対して、労働組合法第7条4号に規定する事項(報復的不当労働行為の禁止)及びあっせんを行うに必要な事項について、趣旨の徹底を図らなければならない(労働委員会規則第66条1項)。あっせん員は、関係当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確め、事件が解決されるように努めなければならない(労働関係調整法第13条)。あっせん員がその職務に関して知ることができた秘密は、漏らしてはならない(労働関係調整法施行令第6条)。あっせん員は、自分の手では事件が解決される見込がないときは、その事件から手を引き、事件の要点を労働委員会に報告しなければならない(労働関係調整法第14条)。つまり、両当事者間で合意に至らなかったり、あっせん案をいずれか一方でも拒否した場合は、あっせんは不成立となり終了する。また、あっせん員が解決の見込みがないと判断した場合は、あっせん案を作成することなく終了する場合もありうる。 労働関係調整法上のあっせんは、労働争議の解決につき当事者の自主的な努力に対して援助を与え、之を和解せしめることを目的とした制度であるから、あっせん員はその職務の遂行に当っては、この根本精神に則り苟も弾圧干渉に亘ること等は絶対にないよう特に注意すると共に或は当事者の主張は別々に之を聴取し、或は一方の意見を他方に伝え、又は当事者の希望がある場合にはその交渉に立会う等、機に臨み変に応じて適宜の処置を執ることに細心の注意を払い、以て事件の円満な解決に到達するよう努力しなければならないこと(昭和21年10月14日厚生省発労44号)。つまり、あっせんの進め方や解決方法はすべてあっせん員の裁量に委ねられている。 あっせん員は、政令で定めるところにより、その職務を行うために要する費用の弁償を受けることができ(労働関係調整法第14条の2)、中央労働委員会のあっせん員が弁償を受ける費用の種類及び金額は、行政職俸給表(一)の10級の職務にある者が旅費法の規定に基づいて受ける旅費の種類及び金額と同一とする。このほか、費用の支給については、旅費法の定めるところによる(労働関係調整法施行令第6条の2)。都道府県労働委員会のあっせん員が弁償を受ける費用の種類、金額及び支給方法は、当該都道府県の条例の定めるところによる(労働関係調整法施行令第6条の3)。なお、あっせん員候補者が任意にあっせんを行った場合には、労働関係調整法のあっせんの規定並びに費用弁償の規定の適用はない(昭和22年8月15日長野県民生部長あて厚生省労政局労政課長通知)。 労働関係調整法第2章(あっせん)の規定は、労働争議の当事者が、双方の合意又は労働協約の定により、別のあっせん方法によって、事件の解決を図ることを妨げるものではない(労働関係調整法第16条)。 第16条の方法により、公務員たる労政事務所或いは所員があっせんを行う場合には特に当事者双方の依頼ある場合にあっせんを行うべきで、苟くも、当事者双方に働きかけあっせんを自己に依頼するように持ちかけるが如きことがあってはならないこと(昭和23年2月24日労発96号)。
※この「集団労働紛争」の解説は、「あっせん」の解説の一部です。
「集団労働紛争」を含む「あっせん」の記事については、「あっせん」の概要を参照ください。
- 集団労働紛争のページへのリンク