車両突入攻撃増加の理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 17:09 UTC 版)
「乗物による突入攻撃」の記事における「車両突入攻撃増加の理由」の解説
アメリカの連邦捜査局 (FBI)によると、この戦略は「爆発物や武器を利用しにくいテロリストでも、事前にごくわずかな訓練をするだけで、経験がなくとも車両突入により米国本土を攻撃する機会をつかめる」ため広く行われるようになった。民主主義防衛協会の反テロリズムの研究者ダヴィード・ガートナーシップ=ロスは『スレート』に、この戦略は「分離壁に比較的効果があり、国に爆弾を持ち込むのが難しくなっているため」イスラエルで発達したと述べた。2010年にアラビア半島のアルカーイダが出している英語版オンラインマガジン『インスパイア』はムジャーヒディーンに対し、「歩行者専用」の場所を選んだうえで「殺傷を最大にする」ために群衆に突っ込む前にスピードを上げるように促している。 車両突入攻撃は、イデオロギーに共感はしているが実際は特定の政治活動やグループと結びついて行動していないローンウルフテロリストにより実行されることもある。『デイリー・ビースト』でジェイコブ・シーゲルは、2014年にケベックのサン=ジャン=シュル=リシュリューで起こった攻撃の犯人について、「この種のテロリストは将来、西洋でもっと見かけるようになるかもしれない」と示唆し、ランド研究所のブライアン・ジェンキンズに倣ってこの種のテロリストを「ローンウルフ」よりは「迷い犬」と呼び、こうした人々はイスラーム原理主義プロパガンダにさらされることによって「いきりたつ怒りから自発的に致命的な行動を起こすようになる」こともある「はぐれ者」だと特徴づけた。2014年のISILのプロパガンダビデオでは、フランスの同調者たちに車で一般市民を轢くよう促している。しかしながら、こうしたローンウルフテロリストは無知・無能ゆえにあまりたくさんの人を殺傷できないことも多く、これはせめてもの救いだと考える専門家もいる。 外交政策研究所で上級フェローをつとめているテロリズムの専門化クリント・ワッツは、西洋諸国の保安当局による監視が増強されたため、アルカーイダのようなグループが「攻撃前に計画や訓練をともに行う」旧式のモデルは「2005年頃に廃れた」とみている。ワッツによると、アメリカ出身のアルカーイダのイマームであるアンワル・アウラキがこの動きの中で重要な役割を果たした人物であり、英語話者に英語で直接呼びかけ、「自前でテロを行い、自国に留まる」よう促している。 イギリスのシンクタンクであるデモスの暴力過激派プログラム長であるジェイミー・バートレットは、「ここ数年、インターネットのせいでローンウルフテロリズムが起こったり、成功する見込みが増えており」、組織とつながりのない個人もイデオロギー的動機やテクニックを身につけるようになっていると述べた。西洋諸国の当局にとっては、2014年のサン=ジャン=シュル=リシュリュー襲撃の犯人のように、カナダの警察が犯人を認識しており、パスポートを没収し、家族やコミュニティと協働して本人をジハードから遠ざけようとしていたような場合ですら、車両突入攻撃が防げないという困難がある。カナダ警察はこの理由について、「犯罪が行われる前に個人が何をたくらんでいるか正確に知るのは大変難しい。過激なことを考えているというだけで人を逮捕できない。カナダではこれは犯罪ではないからだ」と述べている。 車両突入攻撃は、時としてアメリカ合衆国で行動を封鎖する抗議活動参加者に対処する手段として提唱されることがある。2016年の1月と6月に、2名の警官がそれぞれ、ブラック・ライヴズ・マター集会に関してそうしたアドバイスをツイートして解雇されたが、ブラック・ライヴズ・マターは車による突破を受けたことがある。ノースダコタ州議員であるキース・ケンペニックが、義母がダコタアクセスパイプラインの抗議活動参加者に止められた後、活動家を偶然はねてしまった運転手には民事免責を行うという法案を通過させようとして失敗し、テネシー州上院議員ビル・ケトロンもある男が反ドナルド・トランプグループをはねてしまった後に同じような法を作ろうとして失敗した。2017年の白人至上主義者によるユナイト・ザ・ライト・ラリーでは反ファシズムの抗議活動をしていた者が車両突入攻撃で殺されたが、その後にFOXニュースやザ・デイリー・コーラーなどの保守派メディアはデモ隊を車で通り抜けるよう奨励するビデオを削除した。
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