資金調達、経済運営
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 00:00 UTC 版)
かつては、ISILは湾岸諸国の(イスラムの)富裕層からの寄付(資金援助)や、イスラム世界全体からの寄付で資金を得ていると考えられていた。 しかし2014年8月の段階ですでに、資金面ではほぼ自立している状態になっているという。米国の国務省当局者の分析では、外部からの資金供与の割合はほんのわずかなのだという。 『ウォールストリートジャーナル』に掲載された情報によると、ISILの主な資金獲得方法は次のようなものだという(2014年8月時点)。 中央銀行の支店からの収奪。 人質(身代金)。 石油の販売。 海外からの寄付金。 イラク、イラン、シリア弱体化を狙うサウジアラビア王族のバンダル・ビン・スルターン(又はその背後のサウジアラビア総合情報庁)が影から資金提供をしていたとされ、イランや駐シリアヨルダン大使、一部のジャーナリスト、学者は、バンダルこそがアルカイダやISILなどの過激派の真の指導者だと主張している。ただし、バンダルが解任された2014年頃からそれまでISILを静観してきたサウジアラビアもISILを非難するようになった。 収入は2014年には20億ドル近くに上ったが、2016年には8億7,000万ドルを下回るなど大幅に変動している。 自立的収入 商人や農民に寄付をさせ、公共交通機関から手数料をとり、支配地域にとどまる選択をしたキリスト教徒などからは「安全保証料」を徴収しているという。 石油・小麦・古代遺物の取引の管理と闇市場の運営をしている(取引相手には、意外なところではアサド政権派のシリア人、シーア派、クルド人ビジネスマンまで含まれる)。 シリアとイラク内のISIL支配地域で、経済はおおむね安定しているという。ISILには、組織内に資金を管理する「財務相」と財政委員会を置いているという。 シリアの反体制派の者が語ったことによると、ISILはラッカ県とデリゾール県の8カ所の油田・ガス田を管理しており、(シリアやレバノンの石油取引業者の話では)重質油は1バレルを26-35ドルで、軽質油は最高60ドルで、地元やイラクの石油取引業者などに売り渡しているという(2014年8月時点)。 ISILは、原油販売や、支配地住民への略奪や課税、密輸などを通じて、2014年には1日当たり100万ドルを調達していたが、その後、制圧した原油が増加し、2014年8月下旬時点では1日当たり200万ドル(約2億800万円)余りの資金を調達していると見られている。ISILは、1日あたり3万バレルの原油を産出しているとされる。また、遺跡の盗掘も資金源になっていることが判明した。支配地域の拡大についても天然資源の確保に重点を置いているとされる。 2014年11月27日、石油輸出国機構(OPEC)の総会で、減産を見送り、12カ国の生産目標を当時の日量3千万バレルで据え置くことを決めた。これに伴って、原油価格が急落した。この原油安は、ロシアではロシア・ルーブルが暴落し、急遽、ロシア政府が12月16日に政策金利を10.5%から17%に大幅に引き上げたり、ベネズエラでは債務不履行の懸念が高まるなど、原油輸出国に大きな打撃を与えている。この原油安について、各所で陰謀論が唱えられており、代表的な所ではロシアのプーチン大統領がアメリカとサウジアラビアによって仕組まれた可能性を示唆している。また、イランのハサン・ロウハーニー大統領も陰謀論を唱える代表的人物である。同時期にアメリカのホワイトハウスが出した発表において、オバマ大統領がサウジアラビアのアブドラ国王とISILへの対応に関して話し合いをしたとのことだが、原油価格について触れられたかどうかのデータは無い。 石油の国際価格が急落したことや、米軍主導の有志連合の激しい空爆により、ISILの懐具合は苦しくなっているとされる。 外部からの資金 西側当局の分析では、ISILは、収入を増やすために、人質(身代金)を組織的に活用している、とのことである。ただし、解放した人質の数(=身代金を得た件数)は少ないため、結局 身代金による収入は安定していない。 外部からの資金である 「湾岸諸国の富裕層からの寄付」は急減しているという(2014年8月時点)。ISILが湾岸諸国にとっても脅威であると認識されるようになったからだという。 制圧による支配 ISILは住民からあらゆる物を略奪している。銀行や発電所、礼拝所やパン屋に至るまで制圧している。利があると見れば、敵対するはずのアサド政権と親しい業者とも取引を行う他、元アサド派や、多数いる外国人にも要職を任せており、貧困層や母子家庭への支援も行っている。 ISILは、税金の他にも、様々な名目で罰金を課しており、住民はその負担に苦しんでいる。また、ISIL支配域の医療、交通、水道、電気など公共サービスは、ISILの支配が始まってから、料金が大幅に上がっている。
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