護衛空母取得の試み (警備隊時代)
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「海上自衛隊の航空母艦建造構想」の記事における「護衛空母取得の試み (警備隊時代)」の解説
保安庁警備隊は、その創設期より、航空母艦の取得(旧帝国海軍との連続性を重視するなら再取得)を志向していた。海上保安庁海上警備隊から改編された直後の1952年(昭和27年)、Y委員会においてまとめられた新日本海軍再建案では、アメリカ海軍からの供与により護衛空母4隻の整備が盛り込まれていた。このときには、要求過大であったことから新日本海軍再建案そのものがアメリカ側に受け入れられなかったものの、1953年(昭和28年)3月ごろには、対潜掃討群(HUKグループ)の編成という具体的な運用構想のもと、その中核艦として護衛空母(CVE)ないし対潜空母(CVS)の貸与を受けることが構想された。保科善四郎元中将によれば、Y委員会が作成した約30万トンの海軍再建案に対して、アメリカ海軍の極東艦隊で参謀副長を務めていたアーレイ・バーク少将は「海軍は飛行機を持つべきである」として、航空母艦4隻の保有と海軍航空隊の再建を強く主張し、これらを海軍再建案に入れることを希望していたという。1952年にY委員会が作成した、1952年2月25日付の「航空軍備建設に関する研究」では、海上交通路確保用の護衛空母には1隻当たり戦闘機9機と軽爆撃機3機を搭載することが計画されており、将来の機動部隊の基礎となる「海上護衛兵力」として、護衛空母4隻に搭載される戦闘機36機と軽爆撃機12機が計上されていた。 1953年(昭和28年)7月に保安庁が試案として作成した「警備五ヵ年計画案」のA案(アメリカ側の要望により、旧日本陸海軍人が合作)には、10,000トン級の航空母艦10隻と航空母艦搭載機920機の保有が盛り込まれていたほか、1953年(昭和28年)9月に保安庁が作成した「防衛五ヶ年計画案」には、警備隊が保有する中心勢力に「護衛航空母艦も含む」と明記された。また同時期、アメリカ海軍も警備隊において航空母艦の必要性を認めており、1953年(昭和28年)12月21日付でアメリカ統合参謀本部事務局が作成した「日本の防衛力」および別紙資料で示された当時の警備隊の兵力整備目標のなかに、軽空母4隻と防空巡洋艦3隻の保有が盛り込まれていた。ただしこれらについては、この時点では日本政府に対して提案されないこととされていた。 これらの流れを受けて、1954年(昭和29年)には、保安庁の昭和29年度防衛力増強計画において、警備隊用として駆逐艦母艦(AD:7,000トン)1隻が駆逐艦4隻、護衛艦3隻ともにアメリカ側に要求され、同艦を空母に改造することを検討した。また同じころに、終戦後引揚げ輸送に活躍した興安丸(7,077総トン)を警備隊へ保管転換する話もあり、同船をヘリコプター搭載艦に改造することも検討されたが、いずれも実現に至らなかった。 同年4月には、米軍事援助顧問団から第二幕僚監部に対して、HUK部隊の中核となる空母2隻を貸与するとの意向が示された。これを受けて、1955年(昭和30年)9月には長澤浩海幕長が横須賀で米海軍の護衛空母を視察した。また1955年(昭和30年)に海上幕僚監部総務部長 庵原海将補が訪米した際には、太平洋艦隊航空部隊司令官 ジョイ中将より、空母3隻と巡洋艦3隻を含む対日軍事援助計画案を開示され、同行した石黒1等海佐はモスボール中の空母に案内されて日本に貸与予定の艦と説明された。しかしその後、1956年(昭和31年)にかけておこなわれた防衛庁部内での検討において、当時の経済情勢等を勘案して「空母の受け入れは時期尚早」と結論されて、これらの構想は一応放棄された。 しかしその後も、海自の戦略的部隊としての「へリ搭載母艦を基幹とする対潜掃討群」創設構想は連綿と維持された。1957年(昭和32年)からS2Fの供与が開始されるにあたり、これを受領するためにTBM隊の要員を主力として編成された第1訓練派遣隊が渡米する際には、横須賀からハワイを経由してサンディエゴに帰国するアメリカ海軍の対潜空母(CVS)「プリンストン」に便乗するという異例の措置が取られており、乗艦中に同艦搭載のS2Fを用いた実物教育が行われたが、派遣に参加した元隊員は、この時の派米部隊は将来の空母運用を見越して派遣されたと語っている。また、自衛艦隊司令官を務めた北村謙一や「あまつかぜ」艦長を務めた是本信義の証言によれば、上記の「プリンストン」と同じCVSの導入も検討されていたが、最終的に計画は断念された。
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