自主製作・自主配給
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「日映 (映画会社)」の記事における「自主製作・自主配給」の解説
1967年(昭和42年)7月1日、上松宗夫が代表取締役社長となり、東京都千代田区外神田6丁目16番9号の緒方ビルに設立した。上松宗夫の前歴は不明であるが、同社設立に先立ち、同年3月には三田浩の東京企画(渋谷区円山町9番地、1962年5月設立)の製作担当取締役であった矢野正富と共同で『激しい関係』(監督東元薫)を製作、同月14日には、矢野のヤノプロダクションが製作した『素肌の罠』(監督東元薫)を配給、いずれも日映企画名義で映画会社としての活動を行った。『激しい関係』に企画としてクレジットされた松田武美は、同年8月、アンダーグラウンドシアター蠍座(のちの新宿文化シネマ、現在のシネマート新宿)が発行した『足立正生シナリオ集』(足立正生)を編集・発行した人物であり、のちに1990年(平成2年)前後には、蠍座を経営した三和興行の総務部長に就任している。「東元薫」は梅沢薫(1934年 - 1998年)の筆名であり、以降、同社では、梅沢の東元名義の作品を数多く製作した。翌4月にも、『処女の烙印』(監督東元薫)を「日映企画」名義で製作・公開、同月、菜穂俊一がワールド映画で製作した『泣きどころ』(監督小川欽也)に「日映フィルム」名義で企画にクレジットされている。 同年7月1日の設立日以降では、同月、ワールド映画が配給した『女の味』(監督奥脇敏夫)を「日映企画」名義で製作、『女高生の絶叫』(監督東元薫)を「日映企画」名義で製作・配給して公開した。1968年(昭和43年)4月に公開された『急所攻め』(監督向井寛)は、同社の製作、東京興映の配給による作品であるが、同作以降、製作する場合には「上松プロダクション」、配給する場合には「日映」とクレジットを分けるようになった。1969年(昭和44年)1月に公開した『好色坊主四十八手斬り』は、勝新太郎のそっくりさんである酒巻輝男を「座頭市」役に配し、前年後半から『好色座頭市四十八手斬り』として準備されたが、『座頭市物語』(1962年)を初めとするシリーズを製作してきた大映が、同社に対して興行禁止の仮処分の訴えを東京地裁に起し、これが認められたため、急遽改題したものである。 円尾敏郎の資料には、同年1月に公開された『夜の技巧』(監督佐々木元)、ならびに同年2月に公開された『悶え狂い』(同)は西原儀一の葵映画が配給したとされていたというが、西原自身は「上松プロいうのはわしは知らないです、成人映画では」と当時を振り返っており、『やくざ監督東京進出』の巻末の葵映画の作品一覧には、両作とも外されている。同年5月に公開された『黒毛の沼』を監督したのを最後に、東元薫(梅沢薫)は同社を去る。 日本映画データベースにおいて「水野冷」という監督が同社で監督している旨の情報が掲載されているが、他の同時代資料では水野洽(1911年 - 1997年)であることがわかっている。同年後半から1970年(昭和45年)にかけては水野洽、林新一郎、野川宏が同社で監督作を発表し、1971年(昭和46年)の前半は林新一郎、後半からは笠原和郎(1943年 - )が独占的に監督作を発表した。同社において、笠原和郎は「岡本愛」名義でも笠原名義でも監督としてクレジットされている。同年11月、老舗であり大手五社の一社であった日活が成人映画路線に全面的に舵を切り、「日活ロマンポルノ」(1971年 - 1988年)を開始するが、同社は、代々木忠のプリマ企画等のようには日活に作品供給はしなかった。同社は、大蔵映画を中心とした「OPチェーン」、国映・日本シネマ・葵映画・東京興映を中心とした「新東宝興業」、いずれの配給網にも参加しなかった。 1973年(昭和48年)8月に公開された『女の本丸攻め』(監督笠原和郎)以降、同社の製作・配給する作品歴がみられず、同年3月に公開された『(秘)乱行パーティ』(同)が同年8月、同年4月に公開された『トルコ(秘)セックス』(同)が同年11月、同年6月に公開された『愛の桜貝』(同)が翌1974年(昭和49年)4月、とそれぞれ数か月遅れて公開されていた北海道帯広市の帯広プリンス劇場では、『女の本丸攻め』が1974年9月に公開された記録が公表されている。したがって同年までは同社は配給業務を続けており、また『映画年鑑 1975』にも同社の項があるが、独立系公開作品のリストには作品が1作も記載されていない。『映画年鑑 1976』にはすでに同社の項はなく、1975年(昭和50年)前後には活動を停止した。
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