磁石の歴史
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磁石の歴史について、一説によると古代ギリシアのマグネシアでは磁鉄鉱が採掘されており、これが人類の最初に出会った磁石で、マグネット(magnet)もこの地名に由来しているという。 プラトンは、その著書『イオン』にて「マグネシアの石」として磁石のことを言及している。ローマ帝国の博物学者大プリニウスは、著書『博物誌』にて、マグネスという羊飼いが磁石を偶然発見したと述べている。なお『博物誌』には、ダイヤモンドが磁石の力を妨げるという奇妙な説も記述されている。 一方、古代中国『呂氏春秋』には「石鉄之母也 以有慈石 故能引其子」(鉄の石は母のように子を引き寄せる力を持つ)という記述がある。ほかにも『淮南子』(BC2世紀)、『管子』(BC1世紀)などにおいて鉄を引き寄せる「慈石」に関する言及が見られる。この「慈石」が漢字の「磁石」のもとになった。また、晋書(第五十七巻、列伝第二十七)によると、晋の武将馬隆は、鮮卑の禿髪樹機能との戦において、磁石を大量に用いることで、鉄の鎧で武装した鮮卑の騎兵を足止めしたという逸話が記録されている(原文:或夾道累磁石 賊負鐵鎧 行不得前 隆卒悉被犀甲 無所留礙 賊咸以為神)。ただし、資治通鑑を著した司馬光は、この記述を紹介した折に「恐不可信(おそらく、信ずるべからず)」と、信憑性が低いとの評価を与えている。 日本においては、続日本紀に「和銅6年(713年)近江の国より慈石を献ず」との記述がある他、狂言では「慈石」という演目がある。また、歌舞伎の「毛抜」では、磁石により操られる毛抜が登場する。 11世紀、中国の宋の時代に磁石の針を水に浮かべる原始的な羅針盤が発明され、ヨーロッパにも伝わった。 磁石に対し、近代的な科学の光をあてたのは、エリザベス1世の侍医であったウイリアム・ギルバートである。その著書『磁石及び磁性体ならびに大磁石としての地球の生理学』(De Magnete, Magneticisque Corporibvs,et De Magno Magnete Tellure) においてギルバートは、磁石に関する俗説や既知の現象について詳細に検証している。例えば、羅針盤の指北性を論じるにあたり、球形の磁石を作製し、これに対する磁針の振舞いを観察している。この結果、地球そのものが磁石であると結論付けている。また、琥珀などが軽い羽毛などを引きつける静電引力は、磁力とは異なる現象であるとも論じている。ギルバートの実験と論証による方法論は、その後の科学に多大な影響を与えた。 産業革命が起き製鉄技術や冶金技術が発展したが磁石には鉄や炭素鋼が使われるだけで特に進歩はなかった。しかし、20世紀になり日本の本多光太郎らが「KS鋼」を発明したことが近代磁石の第一歩となり工業の発展に大きな貢献を果たした。 1825年 - ウィリアム・スタージャンによって電磁石が発明された。 1917年 - 本多光太郎らによってKS鋼が発明された。 1931年 - 三島徳七によってMK鋼が開発された。 1933年 - アルニコ磁石が発明された。 1934年 - 新KS鋼が開発された。 1937年 - 東京工業大学の加藤与五郎、武井武によってフェライト磁石が発明された。 1970年代前半 - サマリウムコバルト磁石が発明された。 1971年 - 東北大学の金子によって鉄-クロム-コバルト磁石が開発された。 1970年代 - 松下電器産業(現・パナソニック)によってマンガンアルミ磁石が開発された。 1982年 - 住友特殊金属(現・日立金属NEOMAX)の佐川眞人によってネオジム磁石が発明された。 2004年 - イギリスのダラム大学の研究者によってプラスチック磁石が発明された。
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