KS鋼とは? わかりやすく解説

ケーエス‐こう〔‐カウ〕【KS鋼】

読み方:けーえすこう

KS磁石鋼


KS鋼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/25 07:29 UTC 版)

KS鋼(KSこう、英: KS steel)は、コバルトタングステンクロム炭素を含む合金(磁石鋼)である[1]。また世界初の永久磁石[2][3]であり、KS磁石鋼とも呼ぶ[4][5]

歴史

KS鋼の開発以前は主にタングステンを約6 %含むタングステン鋼が磁石鋼として用いられてきたが、第一次世界大戦の勃発で輸入が途絶えてしまった[1]。1916年(大正5年)、軍から要請を受け[6]、鉄の磁性研究に取り組んだ[3]。その結果、1917年(大正6年)に東北帝国大学本多光太郎と高木弘によって発明され、当時としては世界最強の永久磁石鋼として脚光を浴びた。また、同年に特許出願し[7](32234号)、特許権を住友吉左衛門に無償で譲渡した[1]。これをもとに住友は英・米・独・仏・伊の特許を請求し独シーメンス社、米ウェスティングハウス社が採用するに至り、その特許料を得た住友は東北帝国大学に30万円(当時の金額)を寄贈した[1]

KS鋼の発明が、計測機器の性能を向上させ、工業発展に貢献し[8]、さらに日本での磁性材料研究が活発になるきっかけを作った[3][1]

1931年(昭和6年)に、東京帝国大学三島徳七がKS鋼の2倍の保磁力を有するMK鋼を開発するが[3]、1934年(昭和9年)の本多らによる新KS鋼は、再び最強の磁石となった[3]

名前の由来

KSとは、本多らが所属する東北帝国大学臨時理化学研究所(後の金属材料研究所)に多額の研究費を寄付した住友吉左衛門(住友グループの前身・住友総本店店主、住友家第15代目当主)のイニシャルである[1][3]

構造

コバルト・タングステン・クロムを含む特殊鋼であり、その組成範囲はコバルト30〜40 %、タングステンが5〜9 %、クロムが1.5〜3 %、炭素が0.4〜0.8 %で残りが鉄である合金である[4][9]

保磁力

当時の高性能磁石であったタングステン鋼(約70エルステッド)の約3倍の保磁力(250エルステッド)を有した[10][1][3]

脚注

  1. ^ a b c d e f g 石本賢一 (2008). “先達との出逢い 金研物語 第二部” (PDF). KINKEN (東北大学 金属材料研究所) 57 (Autumn). http://www.imr.tohoku.ac.jp/media/files/public/archive/kinken_story/mono-57.pdf 2023年4月17日閲覧。. 
  2. ^ 世界初の超強力『永久磁石』は日本人が開発”. ニッポン放送 ラジオAM1242+FM93. 2019年12月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 木村康夫「新材料と先駆者たち」『鋳造工学』第69巻第11号、1997年、947-948頁、doi:10.11279/jfes.69.9472023年4月17日閲覧 
  4. ^ a b 勝木渥「KS磁石鋼の発明過程(Ⅰ)」『科学史研究』第23巻第150号、日本科学史学会、1984年、96-109頁、doi:10.34336/jhsj.23.150_96 
  5. ^ 勝木渥「KS磁石鋼の発明過程(Ⅱ)」『科学史研究』第23巻第151号、日本科学史学会、1984年、150-161頁、doi:10.34336/jhsj.23.151_150 
  6. ^ 岡本少将が要請した、との記述がある[3]
  7. ^ 本多光太郎のKS鋼特許 – 小山特許事務所”. 2019年12月26日閲覧。
  8. ^ 北九州イノベーションギャラリー|Kitakyushu Innovation Gallery & Studio [KIGS]”. kigs.jp. 2019年12月26日閲覧。
  9. ^ コバルト30〜35 %、タングステンが4〜7 %、クロムが2〜5 %、炭素が0.8 %とする資料もある(木村康夫 1997)。
  10. ^ データベース|磁石はマグネットワールド【株式会社二六製作所】 - 本多光太郎が『KS鋼』を開発する”. www.26magnet.co.jp. 2019年12月26日閲覧。

KS鋼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)

日本の発明・発見の一覧」の記事における「KS鋼」の解説

本多光太郎1917年発明したタングステン鋼の3倍の保磁力を持つ耐磁鋼。

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KS鋼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 22:08 UTC 版)

永久磁石」の記事における「KS鋼」の解説

1917年本多光太郎らによって発明され磁石鋼コバルトタングステンクロムなどを含む。1934年には新KS鋼開発されている。

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