研究と乱用のせめぎあい
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 03:34 UTC 版)
「マジックマッシュルーム」の記事における「研究と乱用のせめぎあい」の解説
1960年代にはハーバード大学で大規模なシロシビン実験が行われる。1960年にメキシコでマジックマッシュルームを食べた心理学教授のティモシー・リアリーは、神秘体験をして衝撃を受け、オルダス・ハクスリーやリチャード・アルパートらと共に研究を開始。刑務所の囚人での研究や、400人ものハーバード学生らにシロシビンの錠剤を投与した結果、前向きな変化が現れることを確認。神学校の学生に投与した研究では、10人中9人が本物の宗教的な体験をしたと報告した。しかし、この時代にはLSDが豊富に出回り、キノコはまだ栽培法が出回っていなかった。 乱用により1971年の向精神薬に関する条約にて、シロシビンは規制された。メキシコがキノコ自体を規制しないように呼び掛けた。 1970年代に入ると、LSDの規制に伴いナチュラルな幻覚剤の人気が上昇する。世界中でシロシビンを含むキノコが発見されるのである。マジックマッシュルームが登場するカルロス・カスタネダの『呪術師と私―ドン・ファンの教え』や、テレンス・マッケナ、デニス・マッケナ兄弟による、『マジックマッシュルーム栽培ガイド』(未訳 Magic Mushroom Growers Guide)が出版され、『ハイ・タイムズ』などのカウンターカルチャー雑誌は、自宅でマジックマッシュルームを簡単に栽培するための胞子や栽培キットの販売を行うようになった。 1977年9月3日、フロリダ州タンパ市郊外にてスティーブン・ポロックが採取したキノコは、シロシベ・タンパネンシス(英語版) Psilocybe tampanensis と名付けられ人工栽培され広まることになるのだが、それ以来誰もこのキノコを発見していない。ポロックは1979年には国際向精神性植物学会を開催してこのキノコについて発表する。このキノコは菌核(英語版)を作るという珍しい特徴を持ち、菌核には幻覚成分が含まれマサテカ族は小鳥(シロシベ・メキシカーナ)の近くに埋まっている菌核をコモロティスと呼びキノコよりも素晴らしい、神の一部として大切にしたものである。 アメリカのテルユライド地域(Telluride)では、1980年からこうしたキノコの祭典であるテルユライド・マッシュルーム・フェスティバルが毎年開催されている。1987年にはガストン・グスマン(多くの菌種を発見)が、著書『シビレタケ属』(未訳 The Genus Psilocybe)にて、467種の約半分223は存在しなかったり類似の種とした。 1994年に放送されたNHKスペシャル『驚異の小宇宙 人体II 脳と心』(第6集:果てしなき脳宇宙―無意識と創造性)は、メキシコの女性のシャーマンがキノコを食べて治療を行う姿が取材された。キューバでの発見にちなんだPsilocybe cubensisは、日本で1967年にシビレタケモドキと命名されたが、1997年に日本菌学会にて和名がミナミシビレタケに決定されたことが報告された。 日本で「観賞用」として露店でも構わず販売されていたが、2001年4月に俳優の伊藤英明が摂取して警察が出動する騒ぎを起こすなど社会問題化した。2002年6月6日から規制された(#法規制に詳細)。第3次小泉内閣時の2005年10月に、首相官邸の植栽にヒカゲシビレタケが生えているのが発見された。日本に自生する種であるため不自然なことではない。 オランダでは規制されたマジックマッシュルームに変わり、マジックトリュフが販売されている。他の俗名にはマジックストーンとか、賢者の石 (Philosopher's stone) があり、シロシビンが含まれている菌核はキノコを禁止する法律に含まれていない。 うつ病や、薬物依存症、群発頭痛を治療するための臨床試験が進行しており、ロンドンの研究者はシロシビンが薬として利用可能になるのは不可避なことだと考えている(抗うつ薬の研究は行き詰っている)。先行するアメリカでの強迫性障害に対するシロシビンの有効性から、2010年までに高崎健康福祉大学にて日本原産のきのこヒカゲシビレタケの基礎研究が行われ、マウスに対するヒカゲシビレタケ抽出物のキログラム当たり0.1-1グラム投与では、抗強迫作用が見いだされた。
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