研究と人柄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 05:06 UTC 版)
割れ目の発生とその伝播を中心とした破壊機構の研究は平田の一貫した研究テーマであった。それはミクロの立場から研究する素粒子物理学や物性物理学といった物理学の本流から大きく外れていたので、平田は『私の研究は物理学会の講演プログラムをつくる際の分類では常に「雑」の部類に入れられ、さらに下部分類でも「雑」となっている』と言って笑っていた。 ガラスの1点を熱して発生する割れ目とその伝播のような現象は、外的条件では定まらない本質的な不確定さを内包している。平田はそれを精密に観察するための瞬間写真など新しい実験技法を開発するとともに、統計的方法に基づく独特の手法を用いて確率過程の機構を明らかにし、大きな成果を得た。割れ目の研究に関連して、キリンの肌のまだら模様は胎児期の表面細胞層に出来た割れ目に起源を持つと提唱して論議を巻き起こした。 また平田が捕鯨用銛が鯨の手前の水面で跳躍して飛び越す現象がしばしば起こるのを見て、銛の先端を切り落として平らにし、命中率を飛躍的に上げた平頭銛、いわゆる「平田銛」を発明した話は、平田の物理現象の本質把握の見事さを物語るものとして有名である。 平田は座談の名人であった。研究指導にあたっては大局的な方針や目的を示し、後は当事者の勉強と創意にまかせた。指導した研究は数多いが、平田の名前が直接表面に出ている報告は比較的少ない。
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