癌
『生きる』(黒澤明) 初老の渡邊勘治は妻を早くに亡くし、息子夫婦と暮らしている。彼は市役所の市民課長で、毎日ただ機械的に事務をとっていた。ある日渡邊は、自分が胃癌で余命半年ほどであることを知る。これまで死んだような生活をしていた彼は、癌に直面して、かえって生きることに目覚める。彼は、以前に退けた住民の陳情(*→〔円環構造〕4)を思い出し、下水溜まりを埋め立てて児童公園を作ろうと奔走する。雪の夜、完成した公園で渡邊はブランコに乗り、「いのち短し、恋せよ乙女・・・・」と歌いつつ、やがて息絶えた。
『化石』(井上靖) 建設会社社長の一鬼(いっき)太治平は、自分が手術不能の癌で余命1年であることを知る(*→〔電話〕2)。彼はそれを誰にも打ち明けず、同伴者となった「死」と対話を重ねながら、働き続ける。7ヵ月を過ぎた頃、一鬼は貧血で倒れ、病院に運ばれる。精密検査の結果、癌は手術可能とわかり、一鬼は命拾いする。死を覚悟して生きた日々は、苦しくはあったが充実していた。その頃に考えた計画――老人と子供のための大きな公園造り――を、今こそ実行に移そうと一鬼は思う。
★2.癌の手術によって「性」を失う。
『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「めぐり会い」 医局員時代のブラック・ジャックは、後輩の如月恵(めぐみ)と、互いに口には出さないが愛し合う仲だった。ところが彼女は子宮癌に侵される。ブラック・ジャックが手術を担当し、彼女は一命を取り留めるが、子宮も卵巣も切除して、女でなくなってしまう。以後、彼女は如月恵(ケイ)と名乗り、ネクタイをしめスーツを着て、船医となって働く。
『ガン病棟』(ソルジェニーツィン) 1955年。ラーゲリ(=矯正労働収容所)帰りの男コストグロートフが腹部の腫瘍治療のため、タシケントの総合病院癌病棟に入院する。病室には大勢の重症患者たちがいて、互いの病状を語り合い、ソビエト社会主義の問題点について議論する。コストグロートフはX線照射とホルモン注射を受け、腫瘍は縮小する。2ヵ月の入院生活の後コストグロートフは、彼に好意を寄せる女医ガンガルトや看護婦ゾーヤと別れ、腫瘍再発の可能性をはらんだまま退院する。
★4.癌への恐れ。
『5時から7時までのクレオ』(ヴァルダ) 夏至の日の午後5時。若い女性歌手クレオは癌検診の結果を、2時間後の午後7時に電話で聞くことになっている。占いで死のカードが出たり、友人の手鏡が割れたりしたので、クレオは暗い心を抱いてパリの街を歩く。アルジェリア戦線から一時帰休中の兵士アントワーヌが、クレオに話しかけてくる。クレオは病気による死の不安を語り、アントワーヌは戦争による死の不安を語る。アントワーヌは「7時まで待たずに、今から病院へ行こう」と言う。午後6時半。医師はクレオに「放射線治療をすれば必ず治る」と告げる。
『レベッカ』(ヒッチコック) マキシムは美女レベッカと結婚するが、彼女は邪悪な心の持ち主だった。2人は憎み合い、うわべだけの夫婦生活を送る。ある時レベッカは医師から、「不治の癌で余命わずか」と診断される。彼女は自殺を決意し、「どうせ死ぬなら、夫を殺人犯にしてやろう」と考える。レベッカはマキシムを挑発して怒らせる。2人が激しく言い争ううち、レベッカは転倒し、頭を打って死ぬ。マキシムは「自分がレベッカを殺したのだ」と思う。
『日本庭園の秘密』(クイーン) 癌研究の世界的権威であるマクルーア博士が、女性作家カレンを死に追いやるべく、「不治の癌である」との偽りの診断を下す。カレンは前途に希望を失い、日本製のはさみの片方を短刀代わりにして、喉を突いて自殺する(*→〔切腹〕8)。その直後に、鳥がはさみをくわえて屋根の上へ持って行ってしまったので、何者かがカレンを刺殺して凶器を持ち去った、と見なされた。
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