日本各地の事例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 14:35 UTC 版)
ワンマン運転を行なっている路線において乗務員が運賃収受を行なわない、いわゆる都市型ワンマンと呼ばれる方式を取っている事業者では、おおむね実施路線の全駅に自動改札や有人改札を設けて不正乗車を防止していることが多いのだが、地方線区で都市型ワンマンを採用した場合(特にもともとワンマン運転時の車内精算に対応した車両を持たない事業者に多い)、夜間駅員無配置駅や無人駅でも全ての扉から乗降できるため事実上の信用乗車方式となっていることがある。 521系2両を使用する普通列車(西日本旅客鉄道(JR西日本)では湖西線及び北陸本線の普通列車、あいの風とやま鉄道)と近畿日本鉄道で2両編成の普通列車(大阪線名張以東、山田・鳥羽・志摩線)、養老鉄道では経費削減のため信用乗車方式が採用されている。無人駅に到着してもすべての扉が開く。ただし不正乗車を防止するため抜き打ち検札が行われている。2021年10月より、九州旅客鉄道(JR九州)のYC1系で運用される列車(2・3・4両編成)は編成に関わらずワンマン運転となり、事実上信用乗車方式の採用となった。 四国旅客鉄道(JR四国)では2016年3月のダイヤ改正より高松-琴平間の一部の列車において信用乗車・信用降車形ワンマン方式が採用されている。通常無人駅では車掌によるきっぷの回収が行われているが、この方式では車掌が乗務していないため降車時において無人駅では駅に設置されている青色の箱にきっぷを投入することとなる。所持している乗車券からの乗り越し、きっぷを所持していない旅客が無人駅で下車する場合についても駅に設置している青い箱に現金をそのまま投入することとなる。なお有人駅では従来通り駅係員によるきっぷの回収を行っている。乗車・降車の際は全てのドアを利用することができるが運転士が車掌スイッチにてドアを開閉するため駅に停車してからドアが開くまで数秒の時間がかかる。この方式はJR四国としても新しい試みであり旅客に乗車方法を浸透させること、また不正行為を減らす観点から車掌による特別改札が行われることがある。 西日本旅客鉄道(JR西日本)で自動改札機を設置していない駅には入場印字機と称するチケットキャンセラーと同じ機能を有する機械が設置されているが、簡易的なものであるため、通さなくても利用者が乗務員や下車駅の駅員から注意を受けることはない。 かつての東京急行電鉄世田谷線においては、進入してくる列車に対して定期券を高く掲げて見せることで正規の乗客であることを主張し、降車口からも乗車する「定期かざし」と呼ばれる風習があった。東急ではなし崩し的な信用乗車方式ともいえるこの行為を以前から正式には認めておらず、同線の近代化工事(新車導入、ホーム嵩上げなど)の際に禁止し、その後せたまるを導入したため、現在では行われていない。 また東日本旅客鉄道(JR東日本)のSuica・西日本旅客鉄道及びあいの風とやま鉄道のICOCA・九州旅客鉄道(JR九州)のSUGOCA利用可能エリア内では簡易改札機が設置されている駅がある。これは入場・出場時にそれぞれ専用の端末にICカード乗車券を触れて乗車するものだが、簡易改札機には突破を防止するゲートがなく、また設置対象の駅も主に無人駅(構造上、改札口以外からも出入りが可能な駅も多い)なので、簡易改札機設置駅相互間の乗車の場合は確実に運賃を収受したかどうか保証ができないことから一種の信用乗車方式とみなすことができる。 旧富山ライトレールでは、定期券及びプリペイドカードに使用されているICカード「パスカ(passca)」用のICカードリーダーがポートラム2両目の入口ドア付近にも設置されており、パスカ定期券とパスカ(および相互利用のえこまいか)所持者に限り、このドアからもICカードをタッチして降車可能であった。富山ライトレールでは「信用降車」と呼称している。2006年7月31日に導入された当初はラッシュ時のみ可能であったが、2017年10月15日の始発より終日可能となった。2020年3月21日の富山地方鉄道との合併と富山地方鉄道富山軌道線への乗り入れに伴い、富山地鉄に合わせる形で、信用乗車は廃止された。ほかに、西鉄バスが運行する連節バス「Fukuoka BRT」でも類似した方式を採用している。 罰金制度などの不正乗車対策は未整備であるが、新しい試みとして注目されている。 広島電鉄(広電)ではICカードシステムの整備完了に合わせて路面電車の車掌の廃止と停留所への自動券売機設置を行い、完全な信用乗車方式を2013年度から本格的に開始すると発表し、一部の車両においてICカードでの利用者を対象に社会実験を行なったが、その後2018年5月10日より1000形かつICカードを複数人で利用しない利用者に限定して「全扉降車サービス」と称した信用乗車方式を開始。2022年3月からは2両以上の連接車全てでICカード単独利用者限定の「全扉降車サービス」を導入する事になった。 その他2023年開業予定の宇都宮ライトレールでは、車両のすべてのドアにICカードリーダーを搭載し、日本初の全扉で乗降可能となる信用乗車方式を導入する。
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