新線ルートの選定と長大トンネル反対運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 16:23 UTC 版)
「頸城トンネル」の記事における「新線ルートの選定と長大トンネル反対運動」の解説
以上の勧告を踏まえ糸魚川駅 - 直江津駅間の線増案は、下記の3案が選定され、さらに検討が行われた。これらはいずれも現在線を併用せず、地すべり危険地域を避けて当初より複線の新線を建設し、駅移設・廃止を伴うものであった。 北陸本線糸魚川駅 - 直江津駅間線増にあたり検討された路線案の比較案糸魚川駅- 浦本駅浦本駅 - 能生駅能生駅能生駅 - 有間川駅有間川駅- 谷浜駅谷浜駅 -直江津駅線路延長(km)最急勾配(‰)トンネル曲線半径工事費(億円)年間経費(百万円)備考総延長(km)最長(km)1965年案A 現在線を線増。 新線建設。木浦川を境に2,570 m、1,550 mのトンネルで結ぶ。 新線上に移設。 新線建設。21,300 mのトンネルで結び、途中駅は全廃。 37.1 10 25.52 21.30 R>=600×10 205 2,578 トンネル内に信号場設置が必要 1965年案B 新線建設。14,750 mのトンネルで同区間を直線的に結び、筒石駅、名立駅は廃止。 現在線を線増。長浜トンネルは1,140 mの複線トンネルを新設。 新線建設。郷津駅を廃止し3,550 mのトンネルで短絡。 38.4 10 23.36 14.75 R>=600×19 182 2,529 1965年案C 新線建設。名立川を境に11,250 m、3,590 mの2本のトンネルで結び、筒石駅は廃止。名立駅は新線上に移設。 38.9 10 23.45 11.25 R>=600×21 186 2,568 採用案 (参考)1963年案 新線建設。2,660 m、750 mのトンネルで結ぶ。 現在駅活用。 新線建設。5,850 m(能生 - 筒石)、580 m、4,000 m(筒石 - 名立)、3670 m(名立 - 有間川)のトンネルで結ぶ。既存駅は全て活用。 現在線を線増。長浜トンネルは1,160 mの複線トンネルを新設。 現在線を線増。郷津駅は存続。郷津トンネルは改築、山側に単線の新郷津トンネル(880 m)を建設し線増。 - - 19.55 5.85 - - - 新線は単線・もしくは複線で建設。単線の場合旧線を下り線として活用 (参考)旧線 41.3 10 3.09 0.65 R<400×30R<500×17R<600×6R>=600×34 - - (各案備考) 浦本 - 直江津間のみの数値 車両電化除く 1975年度を想定 比較の結果、投資額・年間経費の面で最も有利であったのは能生駅を新線上に移設し浦本駅 - 有間川駅間の筒石駅・名立駅はトンネルで短絡し廃止、郷津駅もトンネルによる短絡で廃止するB案であったが、B案では待避を行うための信号場をトンネル内に設置する必要があり、地質上の問題から4線断面のトンネルの掘削は技術的に困難と判断された。 加えてB案には駅廃止という営業上の問題があり、沿線では浦本駅 - 直江津間トンネル化の計画を知った沿線住民により通勤通学者の足が奪われること、漁獲物の貨物輸送ができなくなることを理由に反対運動が行われていた。 主要な反対運動としては「浦本・直江津間長大トンネル反対対策会議」により1964年(昭和39年)5月5日から7日未明にかけて糸魚川から直江津へのデモ行進(500人)が行われ、途中名立・有間川・長浜など7か所で住民大会を開きながら長大トンネル反対の決意表明が行われ、住民は同年6月10日に名立町の公民館で行われた国鉄の説明会でも長大トンネルをつくる必要がない旨を訴えるなどした。その後、名立駅については同年7月に入り名立町住民へ国鉄から現在線から800 m 山側の名立川上に駅を設けるルートが内示され、名立駅は最終的に新線上への移転により存続することとなった。以上を踏まえ、委員会では最終的結論として名立川付近でいったん地上に出るC案が適当とし、同年8月20日、C案での複線化と同年9月の着工、1971年(昭和46年)3月までの完成が国鉄の方針として発表された。 しかし、C案においても廃止となる筒石駅について能生町が廃止反対運動を起こしていたこともあり、実際には即着工には至らずさらに1年間にわたり調査・検討・地元との協議の上でルートの決定が進められた。最終的に筒石駅は「地元の強い要望があったため」としてトンネル内にホームを設けることとなり、線増案はほぼ現在の形となった。
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