対潜情報処理装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 00:00 UTC 版)
「海上自衛隊のC4Iシステム」の記事における「対潜情報処理装置」の解説
対潜戦闘は人力に頼る部分が大きく、自動化が困難であることから、ソナーで目標を探知してから戦術状況を判断し、水中攻撃指揮装置(SFCS)の管制によって実際に攻撃が行なわれるまでの流れの大部分がオペレーターによって行なわれていた。その後、艦装備のレーダーなどの情報は戦術情報処理装置を経由して水中攻撃管制装置に入力されるようになったが、情報処理は依然として人力への依存が大きかった。 1980年代、HSS-2B哨戒ヘリコプターのソノブイ、個艦装備の曳航式パッシブ・ソナー(TACTASS)が相次いで艦隊配備されたことから、対潜戦のパッシブ・オペレーション化が志向され、処理するべき情報が飛躍的に増大したことから、このような対潜戦闘を自動化する試みが開始された。まず艦体装備のソナーとTACTASS、ソノブイの入力を統合するためのOYQ-101 ASWDS(ASW Direction System)が国内開発され、1991年就役のあさぎり型の最終艦(61DD)で装備化された。これにより、艦のソナー(艦首装備ソナーと曳航ソナー)、ヘリ装備のソナー(ディッピングソナーとソノブイ)の目標探知状況・識別結果、攻撃状況、探知を失った場合の目標推定位置などを統合処理・管制できるようになった。その後、平成2年(1990年)度から平成6年(1994年)度にかけて、他の汎用護衛艦やはるな型・しらね型の各護衛艦、計23隻にバックフィットされた。ただしこれらの後日装備艦では、SDPSと連接していないという点が、61DDの構成と異なっていた。 一方これと前後して、技術研究本部第5研究所では、昭和53年(1978年)度から57年度にかけてアクティブソナー目標類別装置の研究を行なうなどの要素研究が重ねられていた。これを踏まえて、ソナーそのものに情報融合機能を持たせて、アクティブソナーやTACTASSなど複数のソナーを統合して海洋条件および用途に応じた信号処理を行なうことで運用の適正化を可能とするソナー・システムとして、OQS-Xの開発が着手された。OQS-Xは昭和59年(1984年)度から昭和61年(1986年)度にかけて試作、昭和61年度から62年度にかけて技術試験が行なわれ、昭和63年(1988年)度から平成元年(1989年)度にかけて特務艦「あきづき」に搭載されての実用試験が行なわれた。最終的に実用化はされなかったものの、信号処理・類別技術や信号処理の共通化技術等はOQS-102およびOQS-5ソナーに採用されたとされている。 そしてOQS-Xの技術を生かして開発されたOQS-102ソナーを搭載したこんごう型護衛艦(63DDG)においては、米国のAN/SQQ-89の構成に範をとって、よりシステム統合を進展させたOYQ-102 ASWCS(ASW Control System)が装備された。水中攻撃指揮装置の機能を包括しており、イージスシステムのC&DシステムおよびVLSと連接するとともに、曳航具4形Bの管制機能も付与された。なお1番艦ではHSS-2Bを管制の対象としたが、2番艦以降ではSH-60Jに変更され、OYQ-102Bとなった。 汎用護衛艦においても、平成3年度計画より建造に着手したむらさめ型では、同様にOQS-Xを踏まえて開発されたOQS-5ソナーを搭載するとともに、OYQ-102の経験を生かしたOYQ-103 ASWCSが装備された。これらはOYQ-9 CDSと連接されるとともに、ソナーなどと連接されている。また「きりさめ」(06DD)からは曳航具4形の管制機能が追加されてOYQ-103B、そして「いかづち」(08DD)からはSDPSの2コンソール化やセンサ待受け周波数指示機能の追加および位置極限機能の改善が加えられてOYQ-103Cとなった。そして発展型のたかなみ型(10DD)では、VLAと短SAMの発射競合を避けるための管制機能が付加されて、OYQ-103Dとなった。 その後、平成16年度計画より建造に着手したひゅうが型(16DDH)において、艦の戦術情報システムが分散システム化されたATECSとなったのに伴い、対潜情報処理装置も、米国のAN/SQQ-89(v)15を参考とした統合ソナー・システムに移行した。これは同様のシステム構成を採用したあきづき型(19DD)においても踏襲されている。
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