家計の問題
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「ジョージェット・ヘイヤー」の記事における「家計の問題」の解説
1939年、ルージャーが法廷弁護士となり、家族はまずブライトンに続いてホーブに移転し、ルージャーがロンドンまで容易に通勤できるようにした。翌年息子をプレパラトリー・スクールに入学させ、ヘイヤーにとっては新たな支出となった。第二次世界大戦中、弟達が軍隊に入ったので、家計上の心配の1つが緩和された。一方夫はホーム・ガード(国防義勇軍)に入った。軍隊は初めてだったので、多くを稼ぐことができず、戦中は紙の配給が制限されたので本の売り上げも減った。支出に合わせるために、出版社のハイネマンに『これら古い影』、「悪魔のカブ』、『リージェンシー・バック』の著作権を750ポンドで売却した。その出版社の窓口係で、ヘイヤーの親友でもあるA・S・フレアが後に、ヘイヤーが受け取ったのと同額でその著作権を返還することを申し出た。ヘイヤーはその取引を断り、権利を渡すと約束していたと説明した。 ヘイヤーは探偵小説を出版したホッダー&スタウトンの代表と昼食を共にした後、その人が彼女を支配していると感じた。その会社は次作に対して選択権があり、彼等にその契約を破らせるために、『ペンハロー』を書いた。これについて1944年「ブック・レビュー・ダイジェスト」は「殺人事件だがミステリーではない」と批評した。ホッダー&スタウトンがこの本をボツにしたので、ヘイヤーとの関係が終わり、その代わりにハイネマンがその出版に合意した。アメリカ合衆国における出版者であるダブルデイ社もこの本を嫌い、その出版後にヘイヤーとの関係を絶った。 1940年から1941年に続いたドイツ軍による大空爆によってイギリス国内の列車移動が難しくなった。ヘイヤー家もルージャーの仕事場に近くなるように、1942年にロンドンに移転した。ヘイヤーは多くの金を稼ぐために、ハイネマンに書評を書いて、1件につき2ギニーを得た。また「ウィミンズ・ジャーナル」に小説を連載することも認め、その後に単行本にすることにした。それが掲載されたことで雑誌は完売することが常となったが、ヘイヤーは読者が「いつも私の最悪の作品を好いてくれる」とこぼしていた。 納税義務を最小化するために、1950年頃にヘロン・エンタープライズと呼ぶ有限責任会社を作った。新作の印税はこの会社に支払われ、その会社がヘイヤーの給与と支配人の料金を彼女の家族に払った。過去の作品の印税を受け続けることになり、外国の印税はアメリカ合衆国のものを除いてヘイヤーの母が受け取った。しかし、数年のうちに税検査官が、ヘイヤーがこの会社から多すぎる金を引き出していることを見つけた。この検査官は不明の配当として過剰な使途だと考えたので、これは3,000ポンドが追徴されることを意味した。この追徴税を払うために、『ブロンテ姉妹についての書籍』と『文学作家になるには』という2つの記事を書いて、雑誌「パンチ」に掲載した。ヘイヤーは友人に宛てて「私は財務省の利益のために本を書くことに「疲れて」きている。「私の」金がいわゆる労働者の教育、生活を豊かにすることと贅沢というばかばかしいことに無駄遣いされることに、どんなに不満を感じているかとても言い表せない」と書き送っていた。 1950年、ヘイヤーは「私の後半生の傑作」と呼ぶものを書き始めた。それは1393年から1435年のランカスター朝を扱う中世3部作だった。この作品を仕上げるには5年間を要すると推計した。辛抱心の無い読者達は常に新作を要求していた。読者を満足させ、また納税義務を果たすために、摂政ロマンスの執筆を間に入れた。結局連作の第1巻『マイ・ロード・ジョン』を完成させただけであり、それも死後出版された。 有限責任会社は常にヘイヤーをイライラさせ続けており、1966税検査官がヘイヤーは会社に2万ポンドを借金していると判断した後で、遂にその会計士をクビにした。その後最新作である『黒い羊』の著作権をヘイヤー個人に対して発行するよう求めた。他の小説とは異なり、『黒い羊』は貴族の位置賃に焦点を当てていなかった。その変わりに「金を持った中間層」を追い、財務が主要テーマだった。 ヘイヤーの新しい会計士はヘロン・エンタープライズを放棄するよう勧めた。その2年後この会社をブッカー・マコーネル社に売却することに合意した。ブッカー・マコーネル社は既に小説家イアン・フレミングやアガサ・クリスティーの資産について権利を所有していた。同社はヘロン・エンタープライズが所有していたヘイヤーの17編にたいする権利の代償として約85,000ポンドを支払った。この金額は、高額資本移転税率ではなく、低額資本移転税率で課税された。
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