土砂災害が起きやすくなっていることを知らせる情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 23:02 UTC 版)
「土砂災害」の記事における「土砂災害が起きやすくなっていることを知らせる情報」の解説
大雨警報や土砂災害警戒情報などは気象庁が災害の危険度が高まっていることを知らせ、避難指示などは市町村が危険な地域の住民に避難を強く促すものである。土砂災害は、発生してから逃げるのは困難で、木造住宅を流失・全壊させるほどの破壊力を有し、人的被害が出やすい。その反面、危険な区域は事前に調べれば絞り込むことができ、危険な区域から少しでも離れれば人的被害を軽減できるため、各種情報を手がかりにして早めの避難を行うことは有効である。 しかし、こうした情報は市町村などの広い範囲に画一的に出されるため、住民が個々の場所の危険度の大小を認識しないまま、「警報や避難指示が出されていないこと」を「安全」と捉える場合がある。例えば、山間の1つの集落内においても、段丘面の上にある建物は下にある建物より土石流の危険度が低い、他方では段丘面上にあっても近くに山の斜面が迫っていれば斜面崩壊の危険度が高い。そのため、「警報や避難指示が出されていないこと」を安全と捉えることは好ましくなく、個々の場所の危険度の大小に応じて避難の是非を判断するべきとされる。 なお、土砂災害の前兆があった場合は警報などが出されていなくても避難し市町村などに連絡するべきとされる。 ただし、地震による崩壊は、突発的である上、場所を特定できず大規模になりやすい。そのため、避難の余地がほとんどなく、有効な対処としては危険な土地の利用をあらかじめ避けるしかない。 大雨警報などは、土砂災害の危険度を段階的に示すものである。市町村単位。累積雨量や予想雨量などにより求められ、気象庁が発表する。 大雨注意報(土砂災害) - レベル2 - 大雨によって災害が起こるおそれがある。 大雨警報(土砂災害) - レベル3相当 - 大雨によって重大な災害が起こるおそれがある。市町村が避難準備情報の発令を判断する要素の1つ。 土砂災害警戒情報 - レベル4相当 - 大雨警報発表後、土砂災害の危険度がさらに高くなっている。市町村が避難勧告の発令を判断する要素の1つ。 記録的短時間大雨情報 - 数年に一度しかないような大雨が降った。急激に雨量が増し、災害の危険度が高まっている。 大雨特別警報(土砂災害) - レベル5相当 - 大雨によって重大な災害が起こるおそれが著しく大きい。 土砂災害の危険度分布「土砂キキクル」 - 注意、 警戒、 非常に危険、 極めて危険 - 地図上に1km四方単位、10分ごと更新で土砂災害の危険度を示す。気象庁が公開し、防災機関向け情報システムに提供されるほか、気象庁のホームページ上で閲覧できる。地域差を反映した細かい危険度を示す。また2時間後までの予想雨量を根拠にするため予報的要素も含むが、急激に発達する局地的大雨は予想できない場合がある。 土砂災害緊急情報 - 速度が比較的遅い地すべり、火山噴火後の降灰が引き起こす火山泥流、天然ダム決壊などによる災害の危険度が高まったことを知らせる情報。都道府県が発表する。 市町村が発令する避難指示などは、対象区域の住民に対して避難を強く促すもので、警報や雨量などを参考に市町村長が発令する。この意味するところは、「立ち退き避難」 = 避難場所への避難(指定緊急避難場所への移動)あるいは安全な親戚・友人の家などへの避難を基本とし、それがかえって危険な場合や緊急の場合は、「緊急的な待避」 = 近隣の高い建物、強度の強い建物、公園などへの移動や、「屋内での安全確保措置」 = 建物内のより安全な場所に留まることである。内閣府の『避難情報に関するガイドライン』(2021年)によると、水害等において、要配慮者を除く住民は、高齢者等避難の段階でまず避難の準備をして情報に注意を向け、避難指示を受けて避難を始めるよう推奨されている一方、土砂災害においては、対象区域のすべての住民が「高齢者等避難の段階で避難を始める」ことが推奨されている。これは、突発的で予測困難な土砂災害の性質を考慮したもので、2019年の令和元年東日本台風の教訓から改められたものである。 高齢者等避難 - 対象地域の災害時要配慮者(高齢者、障害者、乳幼児など)は避難を始める。その他の住民は、準備が整い次第、避難を始める。 避難指示 - 対象地域のすべての住民は避難を始める。避難に急を要する。 緊急安全確保 - 既に災害が発生し、安全な避難が困難となり、人命に危険が及ぶ可能性のある状態。 土砂災害の避難において留意すべき点は以下の通り。 避難指示などが出ていなくても、身の危険を感じたら、避難指示を待たず、自発的に避難すべきこと。 土砂災害の前兆現象を発見したら、率先して自発的に避難し、すぐ市町村にも連絡すべきこと(前兆の報告は避難勧告などの発令基準の1つであり、他の住民の安全にも資する)。 特に木造家屋は土砂災害により倒壊したり埋没したりする危険性が高く、その住民は高齢者等避難開始の段階で早めに避難場所へ移動しておくことが勧められる。 屋外行動の危険性が高い、夜間や、暴風・豪雨の最中であっても避難指示等は出される。この場合、離れた避難場所への移動の危険性や周囲の状況を見極める必要があり、近隣の待避場所への移動や屋内での安全確保などを考慮すべきこと。さらに、このような事態が予想される場合、明るいうちに・風雨が弱いうちに、避難場所へ避難しておくことが望ましい。 避難しようとした時点で既に水害や土砂災害がまわりで発生しているなど、避難場所までの移動がかえって危険な場合、土石流の予想到達区域や急傾斜地からできるだけ離れたところ、できるだけ高いところ、あるいは頑丈な建物の上層階といった緊急的な待避場所への移動も考慮すべきこと。例として、近隣にあるコンクリート造のビル上層階、山から離れた小高い場所など。 小規模ながけ崩れが予想される地区では、避難場所までの移動がかえって危険な場合、自宅の2階以上に移動するといった、緊急的な屋内での安全確保も考慮すべきこと。ただし、通常の木造家屋は土石流によって全壊する恐れがあり、土石流が予想される地区では自宅外の緊急的な待避場所への移動が望ましい。自宅の2階などへの避難はやむを得ない場合の選択肢であり、そうならないように早い段階から避難場所へと避難しておくことが望ましい。 警報や避難情報は、災害の「見逃し」がないように出される。そのため、発表されたにもかかわらず災害が発生しない、いわゆる「空振り」はつきものとなる。住民側の意識として、空振りだったけれど「被害がなくて良かった」・避難したけれど「何もなくて幸運だった」と考え、警報や避難情報を軽視しないよう心掛けることが、自らの被害回避や、行政側が避難指示発令に躊躇してしまう事態の抑止につながると考えられる。
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