土砂・水の排出量管理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 17:45 UTC 版)
利水目的のダムにおいては、洪水のおそれがない時期は河川の水を全て堰き止めてしまうのでなく一定量を放流し、下流の生態系や景観、釣り・漁業、水利権への配慮を求められる。日本では国土交通省の発電ダムに対するガイドラインで、そのための維持流量の確保を定めている。 流域土砂管理を考えた場合、環境問題としては堆砂の問題と、河川の最大流量をコントロールすることで下流へ砂がフラッシュ(流下)されないという問題もある。また、ダム設置による河川の流量や水温への影響によって、河川生態系を攪乱するという指摘もある。三峡ダムでは黄土高原から流出する黄砂が貯水池に堆積、完成から二年で貯水池が埋没してダム機能が麻痺する事態が発生。さらにアスワン・ハイ・ダムでは下流への土砂流下減少によってナイル・デルタ縮小という問題が発生している。堆砂については従来の浚渫(しゅんせつ)主体から排砂バイパストンネルによる抜本的対策が試行されているほか、流砂連続性を確保するための人工洪水試験がグレンキャニオンダム(アメリカ)やスイスの発電用ダム、日本の国土交通省直轄ダムの一部などで実施されている。ただし現在は試行段階であるため、海岸侵食などを有効に防止するまでには至っていない。 複数の国を流れる国際河川においては、上流部にある国が大型ダムを計画・建設することに対して、河川流量の減少を懸念する中流・下流部の国や住民が不満を抱いで国際問題化したり、逆に上流部の国による影響力拡大の手段に使われたりしている、下記のような例もある。「21世紀は水戦争の時代」と呼ばれる中、水資源開発とその保全は油田開発に匹敵する重要課題であると指摘する専門家も多い。実際問題として国連は水質汚染と共に水不足を水の危機として警告を発しており、複数の国家間で紛争が発生している。 メコン川(中国とラオス、カンボジア、ベトナム、タイ王国) ナイル川(エチオピアとスーダン、エジプト) インダス川(インドとパキスタン)
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