哲学的人間学の成立とは? わかりやすく解説

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哲学的人間学の成立

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/28 16:00 UTC 版)

人間学」の記事における「哲学的人間学の成立」の解説

1928年ダルムシュタット郊外にあるカイゼルリンク伯爵の「英知学校」で、マックス・シェーラー招聘講演として「宇宙における人間位置」と題する講演行い人間学研究提言をしたのが、この問題意識嚆矢だったといわれている。彼によれば、現代わたしたち人間とは何かということを全く知らず、かつ、そのこと熟知している時代であるとされ、哲学的人間学は、人間自身に抱く自意識歴史について、その自意識突然に増大し続けている現代事態解釈するための学問とされる。この問題について、彼はその著書人間歴史』および『包括的人間学からの断章』において、人間自己像の解釈を、「宗教的人間学」、「ホモ・サピエンス」、「ホモ・ファーベル」、「生の哲学における人間学」、「要請としての無神論における人間学」の五つ類型化し、それぞれに対して同等現代的アクチュアリティ要求することによって答えようとした。 この講演は、かなりの反響ドイツ語圏の哲学文化的な世界もたらしシェーラー提言直後にでたヘルムート・プレスナーの『有機物の諸段階人間哲学的人間学入門』は、既にこの言葉副題取り込んでおり、その後はアーノルト・ゲーレンの『哲学的人間学』、『人間学探究』、『人間 その本性および世界における位置』という三部作この方面の最大業績ひとつになる。 ミヒャエル・ラントマン、エーリッヒ・ロータッカー、わけてもヴァルター・シュルツらが注目した仕事であり、エルンスト・カッシーラーの『象徴形式哲学』、『人間』、ハンナ・アーレントの『精神の生活』もこの系列仕事看做される。 ハイデッガーは、大学における講義では哲学的人間学好意的に触れていた時期もあったが、主著存在と時間』(哲学的人間学への言及少なくない)において決別の意を明らかにした。ヤスパースも『世界像時代』『現代の精神的状況』で賛否態度示した当時ドイツ動向は、日本国内では三木清の『構想力の論理』の中にも紹介がある。国内で、この思想流れの中で人間学模索したのは、京都学派高山岩男の『哲学的人間学』が代表的である。彼の後、この思想的手がかりは、教育学世界引き継がれ1970年代ドイツオットー・フリードリッヒ・ボルノウらを中心にディルタイ系の教育学研究者の間で、教育人間学人間学教育学を巡る議論活発化し、人間学への関心国内でも再炎した。たとえば、森昭の『教育人間学』を筆頭に、下程勇吉などにこの方面の著作がある。 20世紀入ってそれまで構想されていた理想的な人間社会無残に打ち砕かれ社会国家科学技術発展で我々は「人間不在」というあらたな問題直視せざるを得ない状況となり、改め人間として生きる意義について問われ実存思想一時流行したりしたが、現代では、この人間学の問題は既に哲学という学問だけでは解決できない事態になっている。そのため、経験科学としての生物学的人間学ドイツ系民族学ないしアングロサクソン系文化人類学哲学的人間学とは異な別のアプローチからこの問題解決目指そうとしている。 現代では、シェーラー示したホモ・ファーベル」と「ディオニソス人間」という人間像は、進化論生の哲学結び付くことによって、伝統的な西洋中心理性的な人間像反省迫ったが、それを超えて経験科学的な人類生物学研究結び付くことによって「欠陥存在としての人間」という全く新たな人間像作り出されてしまった。哲学的人間学現代的な評価はいまだ定まったものではないが、例えばヴァルター・シュルツは、哲学的人間学根本規定無意味化について触れている。

※この「哲学的人間学の成立」の解説は、「人間学」の解説の一部です。
「哲学的人間学の成立」を含む「人間学」の記事については、「人間学」の概要を参照ください。

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