各国の売り込み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 02:43 UTC 版)
フランスのスコルペヌ型潜水艦(マレーシア海軍) ドイツの214型潜水艦(ポルトガル海軍) 日本のそうりゅう型潜水艦 オーストラリアは原子力の軍事利用を禁止しているため原子力潜水艦は導入できないが、活動海域が広いため大型の通常動力潜水艦を希望していた。 日本のそうりゅう型は、オーストラリア側の意向(大型かつ通常動力)に近いほか、2014年4月1日に武器輸出三原則に代わり防衛装備移転三原則が制定され、潜水艦の輸出が可能となり間もなくの大型案件であることから、注目を浴びていた。オーストラリア政府は、武器管制システムに、コリンズ級でも使用されているアメリカ製のAN/BYG-1を搭載することが求めていることから、そうりゅう型そのものではなく、改良型の共同開発となり、その場合、アメリカも共同開発に加わるという報道もなされていた。アメリカは、日米豪3カ国の武器の相互運用性が強まるとして、そうりゅう型のオーストラリアへの輸出を歓迎していた。 アボット政権は、選挙時の公約の一つに、コリンズ級の次の潜水艦を国内で建造すると表明しており、そうりゅう型の完成型を輸入することは、この公約に反することになる。しかし、アボット首相は地元経済への影響という観点から判断することはないと強調して、あくまで軍事的な観点から判断するとしていた。だが、オーストラリアでは、トヨタ、フォード、ホールデンなどの撤退が相次いでおり、製造業が急速に縮小している。2017年には、オーストラリアで自動車を製造する世界的な自動車メーカーは存在しなくなる。このような状況で、さらに潜水艦建造という大型案件も外国に奪われる形となれば、アボット政権にはかなりの打撃になる可能性があり、与党内からも潜水艦建造はオーストラリア国内ですべきとの声が出ていた。 しかし、オーストラリアのデイヴィッド・ジョンストン国防相は、国営造船会社ASCには「カヌー造りさえ安心して任せることはできない」と、国内には潜水艦建造技術がないとの「本音」を語っている。この発言は波紋を呼び、ジョンストンの辞任要求が起こった。ジョンストンは、「ASC社員は世界クラスと考えている」と釈明、トニー・アボット首相は、ASCの能力を擁護した。 また、オーストラリアには日本の潜水艦を購入すると、中国を刺激するのではないかという懸念があり、日本側にも、機密性の高い潜水艦を他国に輸出することに慎重な意見がある。 なお、日豪政府間では、船舶の流体力学分野に関する共同研究が合意されており、2014年7月8日には「防衛装備品及び技術の移転に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定」が締結されている。 2014年10月16日、オーストラリアのジョンストン国防相は、江渡聡徳防衛大臣との会談で、オーストラリアが計画する潜水艦建造への協力を正式に要請した。 日本がそうりゅう型をオーストラリアに輸出する際には、オーストラリアの要求や予算に合わせて仕様を変更する可能性が高い。オーストラリアは、現在、日本が2015年から建造を計画しているリチウムイオン電池を使った最新型潜水艦を希望している。 2015年2月20日、アボット首相は次世代潜水艦の調達先について「日本、ドイツ、フランスの中から選ぶ」と明らかにした。建造や保守管理には豪州企業が最大限関わり、地元の雇用や産業を維持する方針も示した。 2015年3月25日、オーストラリアは次世代潜水艦の入札プロセスの開始を発表し、日本、ドイツ、フランスに参加を求めた。これにフランスDCNSは5000トンの原子力潜水艦「バラクーダ級」の動力をディーゼルに変更することを、ドイツティッセンクルップは2000トン級の「214型」を大型化することを提案した。。これについて、オーストラリアの同盟国、アメリカ合衆国の軍当局者は日本製を支持しており、日本が優勢になる可能性が報じられているが、日本は他国との受注競争に巻き込まれる事や、オーストラリア国内で機密性の高い潜水艦を建造するのには消極的との見方がある。 2015年5月18日の国家安全保障会議において、日本は、オーストラリアの新型潜水艦の共同開発・生産国を選ぶ手続きへの参加を決めた。また、一部潜水艦技術を供与することも明らかとされた。 2015年6月15日、フランスの政府高官が、新型潜水艦に関して、日本に共同提案を持ち掛ける可能性を示したとオーストラリアンが報じた。純日本製の導入は中国を刺激する可能性があるが、フランスとの共同提案を受け入れる程度なら、そうした批判も回避できるという。 2015年9月14日、経済政策への不信などが高まり、トニー・アボット首相は退陣し、変わってマルコム・ターンブル政権が発足した。潜水艦の性能を重視していたアボットに比べ、ターンブルは次期潜水艦について雇用問題などからオーストラリア国内での完全建造を考えているとされる。このため、オーストラリア現地建造に積極的なドイツやフランスが有利になっているとの指摘がある。 2015年11月4日、中谷元防衛大臣はマレーシアで、オーストラリアのマライズ・ペイン(英語版)国防相と会談した。中谷元は、次期潜水艦について、日本が選ばれれば、建造場所などオーストラリア側の要望に柔軟に対応する方針を示した。ペインは「日本の提案は真剣に検討している」と応じた。 2016年1月22日、オーストラリアのアボット元首相の外交アドバイザーだったアンドリュー・シアラーと、アメリカの戦略国際問題研究所副所長のマイケル・グリーンがナショナル・インタレストに寄稿した記事によると「米政府は(公式には)いずれの国にも肩入れしていないが、そうりゅう型は卓越した性能を持ち、米国製の戦闘システムを搭載して日米豪で相互運用すれば長期の戦略的利益になることに疑いはないと、米政府高官や米軍幹部はみている」としている。2016年1月25日、オーストラリアンは「中国の産業スパイから、重要な防衛技術を守る能力がドイツにあるかどうかに深刻な懸念を抱いている」と報じた。
※この「各国の売り込み」の解説は、「アタック級潜水艦」の解説の一部です。
「各国の売り込み」を含む「アタック級潜水艦」の記事については、「アタック級潜水艦」の概要を参照ください。
- 各国の売り込みのページへのリンク