初のビデオ副審制度導入
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「2018 FIFAワールドカップ」の記事における「初のビデオ副審制度導入」の解説
サッカーのルール等を決定する唯一の機関である国際サッカー評議会(IFAB)は2018年3月3日、スイスのチューリヒで年次総会(AGM)を開き、ビデオ副審(VAR, Video Assistant Referee, ビデオ・アシスタント・レフェリー)制度をサッカーのルールに正式に導入することを決定した。3月16日、FIFA評議会(旧FIFA理事会)で、今大会全64試合でのVAR採用を正式に決定した。W杯でのVAR採用は、今大会が初となる。VARの目的は、勝敗を左右する場面での誤審を防ぐことで、VARの対象は「得点」、「PK」、「一発退場」、「(退場、警告などの)人定(退場や警告等を受ける選手の確認)」の4項目である。2016年から2年間、国際サッカー連盟(FIFA)主催大会や各国リーグなどで試験的に導入された。その結果、公式戦804試合の統計で、ビデオ判定された事案の約57%が得点とPKの有無の確認だった。533試合では判定確認が行われなかった。一方、映像確認によって試合進行が妨げられることが批判されているが、1事案に要する確認作業時間 は平均60秒で、試合全体の所要時間の1%以下だった。 これまで通り試合自体は主審1人、副審2人、第4の審判1人の計4人で進められる。今大会で採用するVARは、「得点」、「PK」、「一発退場」、「(退場、警告などの)人定(退場や警告等を受ける選手の確認)」の4項目で主審の判定が間違っていた可能性がある時、主審にビデオ副審(VAR)チーム内のVARリーダーが光ファイバーリンク型無線で伝える。全ての誤審を伝えるのではなく、例えば、オフサイドの判定が間違っていても、それが4項目のうちの1つ「得点」に繋がらなかった場合には、VARリーダーは主審に無線連絡しない。オフサイド誤審が得点につながった場合のみ、VARリーダーが主審に無線連絡する。VARチームは4人1組のチームで、1試合につき、VARチームが1つつく。全員、国際審判員の中のトップクラスが任命される。VARチームは、VARリーダー(VAR)1人、ビデオ副審を補佐するアシスタント・ビデオ副審(AVAR)3人の計4人で、ロシア首都モスクワの国際放送センター(IBC) にあるビデオ集中運用室(VOR) で、試合中、常に映像を確認する。VARリーダー(注: このVARリーダーはVARの意味。正確にはAVARはVARとは呼ばれず、両者には明確な立場と権限の違いがある。過去にはテストの中でVAR複数人体制が採用されたこともあったが、現在は1人のVARをAVARが補佐するのが一般的であり、VARをVARリーダーと呼び替える必要は無い)は、VARチームを率い、主審と交信し、対象についての誤審可能性があれば、ピッチ脇に設置されたレビュー・エリアのスクリーンでの検証の提案を行ったりする。AVAR1は、他がリプレー(プレー見直し作業)中でも、常に試合をライブで見続ける。AVAR2は、オフサイド判定のみを注視する。AVAR3は、VARリーダーの補佐やVARチーム全体の円滑なコミュニケーションを図る等をする。さらにVARチーム1チームにつき、スクリーンやカメラアングルの技術者4人、会場の巨大スクリーンで、観客に向かって決定を伝えるFIFAの代表1人もつく。VARチームは、スーパースローモーション(1秒960コマ)専用2台、ウルトラスローモーション(1秒1000コマ)専用6台を含む計33台のテレビ中継用カメラの他、VARチームのみアクセス可能なオフサイド判定専用2台のカメラ映像を使用できる。「ファールかどうか」、「ハンドリングかどうか」、「オフサイド判定を受けた選手がプレーに干渉していたか」などの『主観に拠る判定』を修正する場合、主審はピッチ脇に設置されたレビュー・エリアのスクリーンで自ら確認(オン・フィールド・レビュー)をしなければならない。また、FIFAは、会場の観客やTVを含む全ての一般人向けにVARの審査の理由とレビュー(確認作業)の結果を含む審査プロセス等をタッチタブレットのネットワークを介して、通知する。タブレットを操作すれば、VARが見ているアングルのカメラの場面を見たり、主審とVARとの審判通信システムの音声を聞いたりできる。会場内のTVと巨大スクリーンには、VARの判定結果及びリプレー等も表示され、FIFAの代表1人が決定を伝える。更なる詳細はFIFA公式HP参照のこと。 なお、前回の2014年ブラジル大会から初めてゴールライン・テクノロジー(GLT, Goal-line technology, ゴール機械判定技術)の1つであるゴールコントロール4D(GoalControl-4D)がW杯に導入され、今大会の規則にもGLTが明記されていたが、2017年9月のレンヌ対カーン戦等フランスリーグ1部(リーグ・アン)2017-18のいくつかの試合で、ゴールコントロール4Dがゴール判定を失敗していることを受け、FIFAはGLTをロシアW杯で使用するかは未定としていた。2018年4月25日、ホークアイ社によるGLTをVARと共に今大会で使用すると、FIFAが発表した。 VAR制度及びGLTのいずれも、あくまでも主審の判断を助けるものであり、最終的な判定及び決定は主審が行う。 2018年4月18日から2週間をかけ、イタリアフィレンツェ近郊のコヴェルチャーノで行われたトレーニングセミナーで、36人の審判と63人のアシスタント(全員国際審判員)が、試合会場での審判及びVARのトレーニングを受ける。W杯自体の重圧とW杯としては初めての試みによる重圧の為、普段の試合より審判報酬を増額している。経験やキャリア年数が豊富なトップクラスの主審は5万7000ユーロ(約740万円)を受け取り、さらに1試合担当するごとに2500ユーロ(約33万円)の報酬が追加される。トップクラスの副審は、主審より減額され、審判報酬は2万ユーロ(約260万円)、1試合ごとに1600ユーロ(約21万円)が与えられる。 2018年4月27日、FIFAはVAR専任の国際審判員13名 を選出し、4月30日に発表した。この13名は、各協会及び各大陸連盟での大会でVARを経験し、更にFIFAの大会でVARを成功させ、上記のトレーニングセミナーでVARの知識やスキルを向上させた者が選ばれた。このVAR専任の13名に加え、今大会の主審及び副審 の一部が、VARチームに入る。各試合毎に任命されたVARチームは、試合前に確認される。
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