公務員に対する制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 10:12 UTC 版)
公務員は全体の奉仕者(日本国憲法第15条)であるため、特定の結社への関与については法律で厳しく制限されている。主な制限事項は以下の通りである。 政治的行為の制限(国家公務員法第102条および地方公務員法第36条)。公務員が政党・政治団体に絡む政治的行為は行えない。国家公務員は職務外の活動も罰則の対象とされている(猿払事件など参照)が、地方公務員は勤務地の自治体外に限り、投票勧誘など一部の政治的行為が認められている(地方公務員法第36条2項の一〜三と五)。 労働基本権の制限。労働組合の結成は基本的に認められているが、警察、消防、海上保安庁、監獄職員、入国警備官、防衛省職員については禁じられている。また、ストライキその他の争議行為は一切禁止されている(国家公務員法第98条および地方公務員法第37条)。 営利を目的とした企業の経営、または役員などになることへの制限。国家公務員は完全に禁止され、地方公務員は許可制となる。非営利の場合は、いずれも許可制である(国家公務員法第103条、104条および地方公務員法第38条) ただし、特別職の一部(内閣総理大臣、大臣および議員や地方の首長など選挙によって選出される身分)は、いずれの制限も対象外である。 これらの制限については憲法違反(思想・良心の自由侵害、等)であるとの理由で批判がある。一方で、思想・良心の自由を盾に現政権に反対する思想、イデオロギーを職務に持込む行為を批判して、政治活動の完全禁止を求める意見もある(戦前は完全に禁止されていた時期もあった)。政治活動の禁止要求は自由民主党やその支持者から出されることが多く(「将来」も参照)、また現職の教員であっても、自民党支持の政治活動についてはその層からの批判は少なく(『正論』などにそうした教員の論文が掲載されることがある)、日教組側からは自民党以外を支持することが邪魔なだけではないかとする反論もある。これらに関して、批判の対象が個人か組織かの違いはある。 小泉内閣が公務員制度改革を表明すると、連合や全労連などは、ILO結社の自由委員会に労働基本権などについて提訴を行った。2002年11月20日、ILOは中間報告を出し、日本政府に「国の行政に直接従事」する職員を除き、労働基本権を結社の自由に基づき認めるよう勧告を出した。これを受けた総務省は、「我が国の実情を十分理解した判断とは言えず、従来のILOの見解と異なる部分もあることから、承服しがたい」と勧告を拒否した(ILO結社の自由委員会の中間報告について(総務省見解))。 2006年5月22日、政府は公務員への労働基本権容認を検討するため、有識者による審議会の発足を決めた。しかし、公務の滞りを理由に慎重論が強いという(読売新聞「公務員あり方見直し、「労働基本権」検討開始…審議会来月発足」)。
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