先行作品との関係
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本作の、ビルの同じ部屋(貸事務所)に滞在した人間が、全く同じパターンで次々と謎の縊死を遂げる、という展開については、類似した先行作品が存在する。 乱歩自身は、ハンス・ハインツ・エーヴェルス(英語版)の短編『蜘蛛』(„Die Spinne“, 1908)を下敷きとした作品だと述べている。ホテルの同じ部屋に泊まった人間が次々と謎の縊死を遂げる、という基本的な筋書きや、「模倣」が事件の謎にかかわってくる点など、『目羅博士』と類似点の多い作品であるが、結末は異なっている。ミステリ評論家の新保博久は、『新青年』1928年2月増刊号に掲載された翻訳を参照したものと推定している。 ただし、『蜘蛛』自体も、発表当初からエルクマン=シャトリアン(英語版)の短編『見えない眼』(≪ L'œil invisible ≫. 短編集 Contes fantastiques, 1857 所収)の盗作という疑いが指摘されており、さらに、『目羅博士』は『蜘蛛』よりもむしろ『見えない眼』の方に似ている、とする指摘がある。新保博久は、『見えない眼』は日本では平井呈一によるアンソロジー『こわい話・気味のわるい話』(1974年)で初めて紹介された作品であり、『目羅博士』と『見えない眼』の類似は偶然の一致だと主張している。しかし、翻訳家の小林晋は、『見えない眼』には早くから英訳があり、さらに日本語訳も『目羅博士』より前の1926年に出されていることを指摘し、『蜘蛛』というのは乱歩の勘違いで、実際に下敷きにしたのは『見えない眼』の方なのではないか、としている。 なお、牧逸馬の『ロウモン街の自殺ホテル』(初出『婦人公論』1931年5月号・6月号、のち『世界怪奇実話』に収める)は、1906年にパリのローモン通り(フランス語版)のホテルで実際に起こったとされる事件を描いた犯罪実録だということになっているが、ホテルの同じ部屋に泊まった人間が次々と謎の縊死を遂げる、という、本作および『蜘蛛』『見えない眼』によく似た筋書きが展開される。新保博久は、1906年のこの事件が、1908年発表の『蜘蛛』の元ネタになった可能性を指摘している。いっぽう、古典SF研究家の會津信吾は、「ロウモン街の自殺ホテル」は Harry Ashton-Wolfe, Warped in the Making: crimes of love and hate, 1927 (OCLC 892921) を粉本としているが、事件の真犯人とされる人物についてはこの著作以外に記録がなく、事件そのものが実話を装った創作の疑いがあることを指摘している。
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先行作品との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 03:28 UTC 版)
トロイア戦記はホメロスに強く似せられており、長い間、ホメロスに劣ると考えられてきたが、現在では、ホメロスの叙事詩との関係において、どのようにクイントゥスの独創的で創造的であったかが理解されている。 イーリアスは、 トロイアの民は九日にわたって薪を集め、町の外へ集めた。十日目の朝、豪勇ヘクトールの遺体は運び出されて薪の上に載せられ、火がつけられる。次の日の朝、火葬の場にはトロイアの民が続々と集まり、きらめく葡萄酒をかけて火を消した。兄弟や戦友たちが遺骨を拾い、紫の布に包んで黄金の壺に納める。そして穴に納めるとその上に大石を並べ、手早く塚を盛り上げると、その周囲には警護の兵を配置した。そして、プリアモスの館の内で、盛大な供儀の宴が行われた。馬を馴らすヘクトールの葬儀は、かくのごとく営まれた。 —ヘクトールの遺体引取り(第二十四歌) で終わる。クイントゥスは歌い出しのような導入部なしに、その直後につなげる形で、 神々にも等しきヘクトールはペーレウスの息子に討たれた。火葬の薪は尽き、その骨は大地の下に納められた。 —ペンテシレイア(第1巻) と物語を始めている。 物語の目的は、イーリアスを完結させ、登場人物たちにそれぞれ結末を与えることのようである。先行作品では味方との不和を抱えていた多くの人物、たとえばソポクレースの悲劇の材になるほど強い敵意をオデュッセウスに対して抱いていたピロクテーテースは、かなり手早くそれを克服して協力している。 ルーマニアの古典文学研究者のEugen Cizekは「クイントゥスがこの作品によって、ホメロスを補って、古代世界の英雄絵巻を完成させたことで、読者が伝説のトロイア戦争をはっきりと理解する助けとなっている」と評している。
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