作動方式による分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 05:16 UTC 版)
着発信管 着弾によって起爆する信管。瞬発信管(Super Quick Fuse) 着弾の衝撃力によって直ちに起爆する信管。最も単純で生産性の高い構造であり、精密な起爆タイミングがとれる。通常の陸上目標物に対してよく使用される。 無遅延信管(Non Delay Fuse) 着弾の衝撃力ではなく、弾丸の急激な速度低下による慣性力で起爆する信管。瞬発信管よりもわずかに起爆タイミングが遅くなる。この遅れは、砲弾等を建物の壁を貫通した後に炸裂させたり、ホプキンソン効果を企図した粘着榴弾用として利用される。 遅延信管(Delay Fuse) 着弾時の衝撃力または慣性力をトリガーとして遅延式起爆装置を作動させる信管である。発射時からタイマーを作動させる信管は時限信管として区別される。建物を攻撃するときに無延期信管よりもさらに深部で起爆させる場合や、砲弾等をあえて起爆させずに時限爆弾化させて行動不能地域を作るなどの戦略目的で利用される。 ピエゾ信管 圧電素子を使用した信管で目標に激突した衝撃で発電した電力で電気雷管を起爆させる。 電線で接続する構造から感知部分を先端に起爆部分を後ろに置くことができるので成形炸薬弾頭の信管として広く用いられている。 時限信管(Time Fuse) 発射をもってタイマーの作動が始まる信管。砲弾等を空中で起爆させることができるため、特に照明弾や発煙弾の起爆、広範囲の地域を制圧する曳火砲撃や高射砲による対空射撃に使われる。火道式時限信管 内部に導火線が内蔵されている信管。初期の時限信管はほとんどがこの方式だったが、現代では手榴弾ぐらいでしか使用されていない。 化学式時限信管 内部に複数の薬剤等が別々に填実してあり、発射によって始まる化学変化の進行度で起爆する信管、あるいは薬品を充填したガラス容器などが割れることで作動するタイプなどがある。化学反応は温度によって反応速度が変化するため気温の影響を受けやすく、不正確で取り扱いが難しい。高温下や極低温下では凍結や変質の問題もあり、第二次世界大戦のころには姿を消し、近代で使用された事例はテロリストなどの密造爆弾ぐらいしか無い。 機械式時限信管 内部にばねや歯車からなる機械時計が内蔵されている信管。火道式時限信管よりも精密に長い時間を設定できる。 高射砲の信管として第二次世界大戦で広く使用された。高射砲の砲弾は1秒間に700m以上も進むため百分の1秒刻みの設定が可能な信管が要求され、実際にドイツ軍の8.8cm高射砲の信管には百分の1秒刻みの設定値があったが、誤差もかなりあったと思われる。高射砲の砲架には信管調定機が設けられ、ここへ装填前の砲弾を装着しておき、射撃指示装置からの指令に応じて、信管を担当する砲手が延期時間を調節することができた。 近接信管が広まったことにより姿を消した。 電気式時限信管 内部に電子部品等で構成される時計が内蔵されている信管。極めて正確な延期時間が取れるが、静電気等に脆弱である。 近接信管(Variable Time Fuse、Proximity Fuse) 目標に接近したことをセンサで検知し作動する信管。内蔵するセンサの種類に応じて電波信管、光波信管、磁気信管等が存在する。作動方式ではアクティブ、セミアクティブ、パッシブの三種類に分類できる。電波信管は高速移動する航空機・ミサイル撃破に向いている為、砲弾やミサイルに搭載されるほか、対地攻撃では曳火砲撃時の信管として戦術的に利用される。赤外線やレーザーを用いた光波信管もあり、ASRAAM短距離空対空ミサイルはレーザー近接信管を用いている。磁気信管は他の近接信管と比較すれば旧来の技術ではあるものの信頼性が高く、ミサイルや地雷・機雷・魚雷等に利用されている。 マルチオプション信管 レーダーによって地上からの高度を測定することで設定された対地高度で作動する。地上1~4メートルという極めて狭い範囲での作動が可能で砲弾の威力が地面に吸収されない。また、地面が泥濘や積雪などであっても作動するため砲弾が地面にめり込んで威力が減殺される事がない。 マルチオプションの名前通り、空中炸裂だけでなく着発信管や時限信管としても使用できる。 迫撃砲弾用としてM734マルチオプション信管などが実用化している。 圧力感知式 主に地雷で使用されている。規定以上の圧力がかかることで起爆する。対戦車地雷は車両などの重量物でなければ起爆しないように設定値が大きくとられている。 機械式ではスプリングが一定以上の圧力で規定値まで圧縮されると作動する方式が主流である。 地雷用に圧力によってガラスアンプルが割れることで作動するM600信管があったが、寒冷地では薬剤が凍結して作動せず、高温地域では自爆するなど外気温の影響を受けやすいために廃止された。 その他の信管 上記の信管を複数組み合わせて、より確実に起爆するようにした信管もある。
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