伽草子とは? わかりやすく解説

伽草子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/04 03:47 UTC 版)

『伽草子』
よしだたくろうスタジオ・アルバム
リリース
録音 CBS/SONY NO.1 STUDIO
ジャンル フォークソング
レーベル Odyssey/CBS Sony
プロデュース 吉田拓郎
チャート最高順位
  • 週間1位オリコン[1]
  • 登場回数29回(オリコン)
  • 売上15.5万枚(オリコン)
よしだたくろう アルバム 年表
たくろう オン・ステージ第二集
(1972年)
伽草子
(1973年)
よしだたくろう LIVE '73
(1973年)
『伽草子』収録のシングル
  1. 伽草子
    リリース: 1973年6月21日
  2. 蒼い夏
    リリース: 1999年6月19日
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伽草子』(おとぎぞうし)は、1973年6月に吉田拓郎(当時はよしだたくろう)がリリースしたオリジナル・アルバムである[2][3][4]。また同名タイトル曲も収録している。

解説

拓郎が女子大生に暴行を加えた容疑で逮捕された「金沢事件」の影響で発売が危ぶまれたが[3]、6月1日に無事発売[2][4][5]。アルバム発売時は勾留中で、不起訴処分となり[5]、翌日に釈放されている[4]。なお、事件は女子大生の狂言であった[2][3][4][5]。不起訴になったとはいうものの、逮捕ー釈放までの10日の間、それまでの拓郎の"取材拒否""テレビ出演拒否"など、生意気な言動・姿勢に好意的ではなかったマスメディアは、ここぞとばかりに「はれんちフォーク」などと"フォーク界の寵児"をこき下ろしていた[3][5]。拓郎以前に一人でマスメディアを動かすようなフォークシンガーは、それまで存在しなかった[2]。ツアーは中止となり、拓郎の曲が使用されていたCM自粛され、他のアーティストに提供した楽曲まで放送禁止となる事態となり、当時のマスメディアはこのスキャンダルを大いに騒ぎ立てた[3][5]。これに比べて釈放を伝えたマスメディアの記事はごく小さなものだった[3]

拓郎はアルバム発売の翌々日かつ保釈の翌日、早くも神田共立講堂のステージに立った[4]。神田共立講堂は神保町駅近くの学生街にあり[4]キャパ2010と当時の都内の会場としては大きいことから[4]、当時活躍したフォークシンガーでここのステージに立っていない者はいないともいわれた「70年代フォークの聖地」[4]。拓郎も何度もここでコンサートを行ったが[4]、中でも1973年6月3日のコンサートは日本フォーク史に於いても重要な意味を持っている[4]。アルバム発売と同様に、当然ながらコンサート開催も危ぶまれていたが、拓郎は保釈翌日に数時間のリハーサルをこなしただけでステージに立った[4]。コンサートの模様は後にニッポン放送で放送された[4]。司会は四角佳子との結婚式でも司会を務めた南こうせつ山本コウタロー[4]前座泉谷しげる警察を批判する「黒いカバン」を披露[4]。ゲストに遠藤賢司かまやつひろし小室等[4]。拓郎は支援してくれたフォーク界の仲間たち、関係者、会場の内外に集まってくれたファン、陰ながら応援を続けたファンとともに、「自粛」の論理の欺瞞性を立証して見せて「拓郎健在」を世間に示した[4]。保釈翌日のこのコンサートがなければ、拓郎のその後の展開も違ったものになっていたのではとも論じられる[4]。他に「春の風が吹いていたら」を当時の妻である四角佳子と歌ったが[4]、翌1974年11月12日に放送された『ミュージックフェア』(フジテレビ)では、当楽曲を南沙織ともデュエットしている[6]。南とは「伽草子」もデュエットした他、南を挟んでよしだ・かまやつとで「シンシア」を歌った[6]。この他、これら一連の騒動によって、結成したばかりの新六文銭の活動が頓挫した[3]。この新ロックバンドは、拓郎、小室等柳田ヒロ後藤次利チト河内によって組まれたスーパー・グループだったが、まともに音源を残さぬまま消滅している[3]。こちらももし事件がなければ、新六文銭の活動が長く続いた可能性もあり[3]、拓郎のキャリアも違ったものになっていたかも知れない[3]

デビューアルバムから論じられていたことであるが[7][8]、本アルバムでもファンキーベースがうねりまくる「からっ風のブルース」、ジャジーな雰囲気を持つ「風邪」、ソウル・バラード「長い雨の後に」など、サウンド・メイクもヴァラエティに富む[3]

みうらじゅんは「アルバムコンセプトジョン・レノンの『イマジン』ではないか」と論じている[2]

1986年にCD化された。1990年CD選書のほか、2006年にも再リリースされている。

収録曲

  1. からっ風のブルース
  2. 伽草子
    作詞:白石ありす 
  3. 蒼い夏
  4. 風邪
    作詞:吉田拓郎
  5. 長い雨の後に
    作詞:吉田拓郎
    • 拓郎自身によるピアノの弾き語り。拓郎の楽曲では珍しく長いモノローグが挿入されている。
  6. 春の風が吹いていたら
    作詞・作曲:伊庭啓子
  7. 暑中見舞い
  8. ビートルズが教えてくれた
  9. 制服
  10. 話してはいけない
  11. 夕立ち
  12. 新しい朝(あした)
    作詞:吉田拓郎

参加ミュージシャン

脚注

  1. ^ 「オリコンチャートブック〈LP編(昭和45年‐平成1年)〉」ORICON BOOKS、1990年5月1日、309ページ。
  2. ^ a b c d e みうらじゅん (2015年11月19日). “「不定期連載」僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第10回 『伽草子』その1 序章 みうらじゅんによる勝手に全曲解説”. 大人のミュージックカレンダー. 2025年4月4日閲覧。みうらじゅん (2015年12月11日). “「不定期連載」僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第11回 『伽草子』その2 みうらじゅんによる勝手に全曲解説”. 大人のミュージックカレンダー. 2025年4月4日閲覧。 みうらじゅん (2015年12月26日). “「不定期連載」僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第12回 『伽草子』その3-B面 みうらじゅんによる勝手に全曲解説”. 大人のミュージックカレンダー. 2025年4月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 小川真一 (2020年1月12日). “1973年7月2日、吉田拓郎のアルバム『伽草子』がオリコン1位を獲得~本人拘留中にもかかわらず発売決行”. ニッポン放送NEWS ONLINE. ニッポン放送. 2024年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 金澤信幸「神田共立講堂(千代田区一ツ橋) 数多くの名コンサートが行われた聖地の中の聖地 1975年4月12日 かぐや姫解散コンサート」『フォークソングの東京・聖地巡礼 1968-1985』講談社、2018年、146–150頁。ISBN 978-4-06-220700-3 
  5. ^ a b c d e 佐々木モトアキ (2018年4月14日). “TAP the STORY 吉田拓郎27歳〜突然降りかかった虚言による逮捕スキャンダルと、心ないマスコミのバッシングに堪えた日々”. TAP the POP. https://www.tapthepop.net/story/76557 2025年4月4日閲覧。 
  6. ^ a b c 永井良和『南沙織がいたころ』朝日新聞出版、2011年、p113
  7. ^ 永堀アツオ (2024年6月1日). “80年代はシティポップだけじゃない! 音楽評論家・田家秀樹&スージー鈴木が迷わず選ぶ「殿堂入りすべきアーティスト」”. 週プレNEWS. 集英社. 2025年4月4日閲覧。
  8. ^ TOMC (2023年7月1日). “あのアーティストの知られざる魅力を探る TOMCの<ALT View>#25 吉田拓郎とR&B~レゲエ 初期作品群におけるグルーヴと“ソウル(魂)”を振り返る”. サイゾー. サイゾー. 2024年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月4日閲覧。
  9. ^ アルバムのクレジットでは、「よしだけいこ」となっている。
  10. ^ ザ バッド ボーイズ

関連項目


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