人権救済機関設置法案・人権委員会設置法案の策定
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「人権擁護法案」の記事における「人権救済機関設置法案・人権委員会設置法案の策定」の解説
2009年(平成21年)8月の第45回衆議院議員総選挙に向けて発表された民主党のマニフェストでは、「人権侵害救済機関を創設し、人権条約選択議定書を批准する」と定められ、「内閣府の外局として人権侵害救済機関を創設する」ことなどが謳われた。 2009年(平成21年)9月に成立した鳩山由紀夫内閣の法務大臣・千葉景子は、人権侵害救済機関を創設するいわゆる「人権擁護法案」の扱いについて問われ、「どの時点で法案化できるか詰めて、スケジュールを立てたい。基本的には(民主党案通り)内閣府に独立性の高いものを作る。都道府県には地方人権委員会に設ける方向だ」と答えた。 2010年(平成22年)2月3日の参議院本会議の代表質問に対する答弁で、鳩山由紀夫元首相は人権侵害救済法案の早期提出に意欲を表明した。 2010年(平成22年)6月22日、千葉景子法務大臣は、閣議後の記者会見で、法務省の政務三役(法務大臣・法務副大臣・法務大臣政務官)の協議により「新たな人権救済機関の設置について(中間報告)」 をとりまとめたと発表した。千葉は、この中間報告について、「2001年(平成13年)5月に出された人権擁護推進審議会の答申を受けて、2002年(平成14年)3月に国会に提出され廃案になった「人権擁護法案」、また、2005年(平成17年)8月当時、民主党から提出された「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」」などの法案を踏まえながら、「速やかな実現を目指して、新たな人権救済機関の設置の在り方について検討したもの」であると説明した。 中間報告の内容は、(1)法案の名称は「人権侵害による被害に対する救済・予防等のために人権救済機関を設置すること、その救済手続等を定めることなど、法案の内容を端的に示す名称」とすること、(2)人権救済機関として人権委員会を内閣府に設置し、「その組織・救済措置における権限の在り方等は、なお検討」すること、(3)人権委員会については、「我が国における人権侵害に対する救済・予防、人権啓発のほか、国民の人権擁護に関する施策を総合的に推進し、政府に対して国内の人権状況に関する意見を提出すること等をその任務」とすること、(4)その地方組織については「既存の組織の活用・充実を図るなど、新制度が速やかにスタートできるよう検討」すること、(5)人権擁護委員については「既存の委員及びその組織体を活用し、その活性化・充実を図ることを検討」すること、(6)報道機関等による人権侵害については「特段の規定を設けない」とし、「報道機関等による自主的取組の状況を踏まえつつ、今後の検討課題」とすること、(7)事実の調査については「調査拒否に対する制裁的な規定は置かないことを含め、なお検討」すること、(8)救済措置については「人権擁護推進審議会答申後の法整備の状況等を踏まえ、なお検討」することなどとしている。 千葉は、「今後は、この中間報告でお示しした方向性を基本として、さらに各方面からの様々な御意見も伺いながら検討を進め、早期に法案としての形を作っていきたいと考えています。」とした。 2011年(平成23年)5月13日、江田五月法務大臣は人権侵害救済法案を次期臨時国会に提出する意向を表明した。その後、8月2日に人権機関設置の基本方針を発表した。それによると、人権委員会を独自の規則制定権を持つ三条委員会として設置し、人権侵害の調査に関しては任意調査に一本化し、調査拒否に対する過料などの制裁規定は置かないこととした。ただし、2011年の臨時国会では提出されていない。日本共産党は部落解放同盟の「糾弾闘争」を合法化するものだとして同法案を批判している。 2012年(平成24年)2月21日、衆院予算委員会で法務大臣の小川敏夫が人権救済機関設置法案の国会提出に言及したところ、自民党の柴山昌彦は「人権の解釈は多義的であり、統一的な機関を設置すると逆差別の危険性が出てくる」と反対した。4月3日、産経新聞は、法務省が4月20日の閣議決定を目指し、関係機関と調整していると報じた。同紙はさらに、民主党内の保守系議員が同法案を批判しているとし、また政府内にも法案の閣議決定に消極的な意見が少なくないとした。8月29日、民主党法務部門会議が人権救済法案を了承し、第180回国会中にも閣議決定される見通しであると報じられた。9月19日、人権委員会設置法案が閣議決定された。閣議決定は「次期国会の提出を前提として法案の内容を確認する」としており、法案提出の際に改めて閣議決定する構え。反対派の国家公安委員長松原仁が海外出張のため欠席したため、異例の対応となった。人権委員会設置法案は、2012年11月9日に第181臨時国会に提出されたが、2012年11月16日の衆議院解散により審議未了廃案となった。
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