事件の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 00:52 UTC 版)
最初は単なる誘拐事件と思われていたが、大手食品会社が次々と脅迫され、実際にシアン化ナトリウム入りの食品がばら撒かれるなど、当時の社会に与えた影響は計り知れないものがあった。 企業への脅迫状とは別に、挑戦状を新聞社や週刊誌に送りつけ、その内容は「けいさつの あほども え」など、警察を挑発したりあざ笑うような内容が多い。自分達の遺留品の細かい出所まで書いたり、失態の責任を取って焼身自殺した滋賀県警本部長(ノンキャリアながら本部長まで出世した人物であった)を「男らしゅうに」と表現し、それと対比させてキャリア出身の責任者を貶めたりするなどしていた。 犯行の際の遺留品の多さにもかかわらず、遺留品が大量かつ広範に流通された商品であったため、犯人の特定には至らなかった。犯人グループの車両から採取されたELと呼ばれる特殊な電子部品の削りかすの廃棄物から捜査が行われたが、犯人に結びつく成果は得られなかった。なお、犯人も終息宣言の後は一切活動をしていない。警察発表では、犯人は何も得てはいないということになっているため、一連の犯行の目的が何であったかは不明のままである。前述の通り、犯人側は1984年9月12日に森永製菓に送りつけた脅迫状の中で、グリコは6億円を支払ったとほのめかしているが、グリコをはじめとする被害にあったメーカーは犯人側への金の支払いを否定している。一説には、脅迫を受けた企業の株価が乱高下しており、それにより利益を得た、あるいは株価の操作そのものが目的だったとする説もある。 脅迫事件において検挙の手がかりとなることの多い犯人と被害者との接触では、要求を伝える電話に子供の声を使用したり、現金の授受にあたって無関係な市民を拘禁・脅迫の上に受け取り役に仕立てるといった、従来の常識からは想定外の手口を使い、これも捜査を困難なものにした。企業から犯人への連絡手段に対しては、犯人が企業に対して要求に応ずる合図として指定された方法での新聞広告を出すことを要求していたことが明らかになっている。 犯行の際に、犯人グループにより警察無線が傍受されていた。当時の警察無線は、通常の都道府県単位で割り当てられている広域使用の周波数は無論、交番や巡回中の警察官同士あるいは、所属の警察署と連絡的に通話する近距離用などを含め、多数の周波数が全都道府県わたって細かく解読されていた。これらの膨大な情報は、専門の出版社より年一回のペースで全国総括版として公然と販売されていた。また毎月の月刊誌では随時、追加や訂正が細かく長年に渡り続けられていた。このために、必要な地域の周波数さえ合わせれば、一般人でも容易に傍受が可能なFM(アナログ)方式が主流であり、受信機器も簡単に入手できた。この事件を契機に、すでに警視庁で一部導入が始まっていた傍受されても会話の内容が分からないよう暗号化されたデジタル方式への早期の全面移行を進めるきっかけにもなった。 グリコ・森永事件の捜査においては、警察は傍受を警戒して、当時、警視庁に数台しかなかったデジタル方式の警察無線で連絡を取っていた。 警察が殺人未遂事件として捜査したシアン化ナトリウム入り食品に関しても、『シアン化ナトリウムが入っていた食品には必ず「どくいり きけん たべたら しぬで」の紙が張られていたのでその罪状が当てはまらないのではないか?』とする意見がある。この点の不備を補うべく、グリコ法こと流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法が制定された。 犯人は1年半の間に、警察には挑戦状、企業と報道機関に脅迫状と挑戦状計144通を出している。 結果として毒入り食品による死者は発生せず、誘拐放火などにより命を落とした人もいなかった。犯人は同時期に世間を騒がせていた京都・大阪連続強盗殺人事件(警察庁広域重要指定115号事件)やロス疑惑についても言及をしている。
※この「事件の特徴」の解説は、「グリコ・森永事件」の解説の一部です。
「事件の特徴」を含む「グリコ・森永事件」の記事については、「グリコ・森永事件」の概要を参照ください。
- 事件の特徴のページへのリンク