久多の花笠踊とは? わかりやすく解説

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久多の花笠踊

名称: 久多の花笠踊
ふりがな くたのはながさおどり
種別1: 民俗芸能
保護団体名: 久多花笠踊保存会
指定年月日 1997.12.15(平成9.12.15)
都道府県(列記): 京都府
市区町村(列記): 京都市左京区久多
代表都道府県 京都府
備考
解説文:  久多の花笠踊は、地元花笠と呼ぶ、美し造花飾った灯籠を手に持ち太鼓合わせて歌い踊るもので、中世流行した風流踊【ふりゆうおどり】の様子うかがわせるのである
 久多は、京都市左京区最北端にあたり滋賀県県境接し、また福井県にも近い山間地帯で、この久多地区は、上【かみ】の町【ちよう】・中【なか】の町・下【しも】の町・宮【みや】の町・川合町【かわいちよう】の五つ集落構成されている。花笠踊は、これら五つ集落が上【かみ】の組と下【しも】の組の二組に分かれ互いに競い合うように伝承され演じられてきた。上の組は上の町中の町二つの町で、下の組は下の町宮の町川合町三つの町で構成される
 花笠踊準備は、花笠の製作から始まる。この花笠は、四角行灯六角の台の上固定し、その台の周囲に布を垂らし全体精巧な造花飾り灯籠と台の各面に切紙きりかみ細工貼ったものであるかつては、これを笠のように頭にのせて踊ったので、花笠呼ばれているが、行灯部分蝋燭明かりをともす、いわゆる灯籠造花飾ったのである。その造花は、菊や牡丹朝顔などで、ほとんどが紙を材料作るが、キブシ地元で「ハシマメ」と呼ぶ植物の材料にすることが特色である。から部分押し出し、その斜めに細く切って一枚菊の花弁にし、それを多数組み合わせて菊の花作っている。
 この花笠は、花宿【はなやど】と呼ばれる家を決めて町内人びとがそこに集まって作る下の町川合町合わせて一軒の花宿を決め、他は各町ごとに花宿を決めるので、合計で四軒の花宿ができる。各花宿では踊りと歌の練習行われる
 八月二十四日夜になると、それぞれの花宿ごとに町内人びと集まり花笠行灯蝋燭に火をともし、それを持って各花宿から出発し、まず上の宮神社に集まる。久多地区全体から選ばれ二名の「神殿こうどの】」と呼ばれる者が、花笠受け取り社殿供えて祈った後に、花笠人びとに戻す。まず棒を持った二名の「より棒」と呼ばれる者が、互いに棒を打ち合いその後五つ集落上と下の二組に分かれ、締【しめ】太鼓打って歌い花笠をもって踊る。次に大川神社移動して踊り、志古淵【しこぶち】神社に向かう。
 志古淵神社境内では、中央組まれの上音頭【おんど】取の歌と太鼓打ちの打つ太鼓合わせ江州【ごうしゆう】音頭などの近世流行した盆踊が踊られている。花笠踊一行は、上の宮神社同様に花笠を「神殿」に渡して社殿供え、「神殿」の祈りの後に花笠受け取り、「より棒」が盆踊の輪を割るように進み拝殿前で棒を打ち合うと、盆踊終わって花笠踊が始まる。
 中央一つ締太鼓木枠の上に置き、その背後歌い手並び、その周囲花笠持った人びとが踊る。現在、踊りは「道行みちゆき】」「綾【あや】の踊り」「塩汲【しおく】み踊り」など十数曲が伝承されそのうち七曲がここで披露される上の組と下の組が、三曲と四曲を、それぞれ一年交代受け持って踊っている。踊り所作は、体をかすかに左右にひねってかがんだり、左右の足を交互に出すなど、簡単な動作繰り返すのである
 この花笠踊起源は明らかではないが、明治時代記録とされる花笠踊本』や『踊番付ばんづけ】六拾壱番』に一三〇を超える歌詞書かれている。その歌詞には、言葉七五七五区切られる短い歌をいくつか組み合わせて構成されているものがある。近世になると多くなる七七七五の歌詞になる以前形式であり、また短い歌を次々と組み合わせる構成も、いわゆる室町小歌【こうた】と呼ばれる中世流行した歌謡流れをひいている。
 また現在の久多の花笠踊は、大人花笠持って踊るが、大正末期から昭和初期までは、少年が頭に花笠をのせて踊り、その背後少年の父や年長者が立ち、少年のかぶる花笠支えながらともに踊ったといわれている。久多花笠は、その中に明かりをともすいわゆる灯籠であり、このような灯籠を頭にのせて踊る「灯籠踊」は、京都中心に一六世紀流行した風流踊一つで、久多の花笠踊は、その様子をうかがわせるのである。さらに久多の花笠踊は、上と下の組が互いに踊り競ったが、これは踊り手が二組に分かれ片方踊りに対して、それにふさわしい踊り直ち踊り返したという、やはり一六世紀ころの風流踊あり方一つである「掛踊【かけおどり】」の様子しのばせている。
 このように久多の花笠踊は、中世盛んに行われた風流踊様子をうかがわせ、芸能変遷過程地域的特色を示すものとしてとくに重要なのである

久多の花笠踊

名称: 久多の花笠踊
ふりがな くたのはながさおどり
種別1: 民俗芸能
保護団体名: 久多花笠踊保存会
選択年月日 1972.08.05(昭和47.08.05)
都道府県(列記): 京都府
市区町村(列記): 京都市左京区久多
代表都道府県 京都府
備考 所在地同一都道府県内のもの(このデータ種別1から移行しています)
解説文:  久多の花笠踊は、地元花笠と呼ぶ、美し造花飾った灯籠を手に持ち太鼓合わせて歌い踊るもので、中世流行した風流踊【ふりゆうおどり】の様子うかがわせるのである
 久多は、京都市左京区最北端にあたり滋賀県県境接し、また福井県にも近い山間地帯で、この久多地区は、上【かみ】の町【ちよう】・中【なか】の町・下【しも】の町・宮【みや】の町・川合町【かわいちよう】の五つ集落構成されている。花笠踊は、これら五つ集落が上【かみ】の組と下【しも】の組の二組に分かれ互いに競い合うように伝承され演じられてきた。上の組は上の町中の町二つの町で、下の組は下の町宮の町川合町三つの町で構成される
 花笠踊準備は、花笠の製作から始まる。この花笠は、四角行灯六角の台の上固定し、その台の周囲に布を垂らし全体精巧な造花飾り灯籠と台の各面に切紙きりかみ細工貼ったものであるかつては、これを笠のように頭にのせて踊ったので、花笠呼ばれているが、行灯部分蝋燭明かりをともす、いわゆる灯籠造花飾ったのである。その造花は、菊や牡丹朝顔などで、ほとんどが紙を材料作るが、キブシ地元で「ハシマメ」と呼ぶ植物の材料にすることが特色である。から部分押し出し、その斜めに細く切って一枚菊の花弁にし、それを多数組み合わせて菊の花作っている。
 この花笠は、花宿【はなやど】と呼ばれる家を決めて町内人びとがそこに集まって作る下の町川合町合わせて一軒の花宿を決め、他は各町ごとに花宿を決めるので、合計で四軒の花宿ができる。各花宿では踊りと歌の練習行われる
 八月二十四日夜になると、それぞれの花宿ごとに町内人びと集まり花笠行灯蝋燭に火をともし、それを持って各花宿から出発し、まず上の宮神社に集まる。久多地区全体から選ばれ二名の「神殿こうどの】」と呼ばれる者が、花笠受け取り社殿供えて祈った後に、花笠人びとに戻す。まず棒を持った二名の「より棒」と呼ばれる者が、互いに棒を打ち合いその後五つ集落上と下の二組に分かれ、締【しめ】太鼓打って歌い花笠をもって踊る。次に大川神社移動して踊り、志古淵【しこぶち】神社に向かう。
 志古淵神社境内では、中央組まれの上音頭【おんど】取の歌と太鼓打ちの打つ太鼓合わせ江州【ごうしゆう】音頭などの近世流行した盆踊が踊られている。花笠踊一行は、上の宮神社同様に花笠を「神殿」に渡して社殿供え、「神殿」の祈りの後に花笠受け取り、「より棒」が盆踊の輪を割るように進み拝殿前で棒を打ち合うと、盆踊終わって花笠踊が始まる。
 中央一つ締太鼓木枠の上に置き、その背後歌い手並び、その周囲花笠持った人びとが踊る。現在、踊りは「道行みちゆき】」「綾【あや】の踊り」「塩汲【しおく】み踊り」など十数曲が伝承されそのうち七曲がここで披露される上の組と下の組が、三曲と四曲を、それぞれ一年交代受け持って踊っている。踊り所作は、体をかすかに左右にひねってかがんだり、左右の足を交互に出すなど、簡単な動作繰り返すのである
 この花笠踊起源は明らかではないが、明治時代記録とされる花笠踊本』や『踊番付ばんづけ】六拾壱番』に一三〇を超える歌詞書かれている。その歌詞には、言葉七五七五区切られる短い歌をいくつか組み合わせて構成されているものがある。近世になると多くなる七七七五の歌詞になる以前形式であり、また短い歌を次々と組み合わせる構成も、いわゆる室町小歌【こうた】と呼ばれる中世流行した歌謡流れをひいている。
 また現在の久多の花笠踊は、大人花笠持って踊るが、大正末期から昭和初期までは、少年が頭に花笠をのせて踊り、その背後少年の父や年長者が立ち、少年のかぶる花笠支えながらともに踊ったといわれている。久多花笠は、その中に明かりをともすいわゆる灯籠であり、このような灯籠を頭にのせて踊る「灯籠踊」は、京都中心に一六世紀流行した風流踊一つで、久多の花笠踊は、その様子をうかがわせるのである。さらに久多の花笠踊は、上と下の組が互いに踊り競ったが、これは踊り手が二組に分かれ片方踊りに対して、それにふさわしい踊り直ち踊り返したという、やはり一六世紀ころの風流踊あり方一つである「掛踊【かけおどり】」の様子しのばせている。
 このように久多の花笠踊は、中世盛んに行われた風流踊様子をうかがわせ、芸能変遷過程地域的特色を示すものとしてとくに重要なのである


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