リーマン積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/07 16:52 UTC 版)
数学の実解析の分野において、リーマン積分(リーマンせきぶん、英: Riemann integral)とは、ベルンハルト・リーマンによる区間上の関数の積分の最初の厳密な定式化である[注釈 1]。 リーマン積分の源流は、オイラーによる左リーマン和と右リーマン和を用いた逆微分による定積分の近似式にまで遡ることができる。 以後、ラクロワやポアソンを経て、コーシーによって微分とは独立に積分が定義できるようになり、リーマンによって現在の形に定式化された。 多くの関数や実際的な応用に対しては、リーマン積分は微分積分学の基本定理による計算や数値積分による近似計算が可能である。
リーマン積分は ℝn の有界集合上の関数に対して定義されるが、積分範囲にある種の極限を考えることにより、広義リーマン積分が定義される。広義リーマン積分との対比で、通常のリーマン積分を狭義リーマン積分とも呼ぶ。
リーマン積分は積分の多くの性質を示すのに有効であるが、積分と極限との交換に関係する性質を示すには理論的困難を伴うなど、いくつかの技術的欠点がある。この為こうした欠点を補うべくリーマン–スティルチェス積分やルベーグ積分など積分概念の別の定式化方法も提案されている。

定義(一次元の場合)
区間の分割
区間 [a, b] の分割とは
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リーマン和の列。右上の数値は灰色の矩形の総面積で、函数の積分値に収束する。 定義(一般の次元の場合)
区間の分割
ℝn 上のリーマン積分を定義する為、いくつかの概念を定義する。
ℝn の部分集合 I で、
-
リーマン積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 16:01 UTC 版)
詳細は「リーマン積分」を参照 a, b を a < b なる実数とするとき、区間 区間 E = [a, b] の分割とは、 a = x 0 < x 1 < ⋯ < x n = b {\displaystyle a=x_{0}<x_{1}<\cdots <x_{n}=b} となる点の組 (x0, …, xn) のこと、あるいは E = E 1 ∪ ⋯ ∪ E n ( E i := [ x i − 1 , x i ] ) {\displaystyle E=E_{1}\cup \cdots \cup E_{n}\quad (E_{i}:=[x_{i-1},x_{i}])} となる小区間からなる集合 Δ = {Ei} のことである。各 xi を区間 E の分点、各 Ei を区間 E の小区間または切片 (segment) という。また、分割 Δ の各切片について ξi ∈ Ei をあわせて考えるとき、Δ* = {(Ei, ξi)} を点付き分割 (tagged partition) という。 区間 E の点付き分割 Δ* = {(Ei, ξi) : Ei = [xi−1, xi], ξi ∈ Ei} があたえられたとき、 ∑ i = 1 n f ( ξ i ) δ x i ( δ x i := x i − x i − 1 ) {\displaystyle \sum _{i=1}^{n}f(\xi _{i})\delta x_{i}\quad (\delta x_{i}:=x_{i}-x_{i-1})} の形の和を、f の点付き分割 Δ* に関するリーマン和という。 分点の個数 n + 1 を十分大きく、切片の長さ |Δ| := max{δxi} を十分小さくするような任意の分割に関して、リーマン和の極限が有限に確定するならば、その極限を関数 f のリーマン積分と称する。またこのとき、f は(区間 [a, b] で)積分可能あるいは可積分(より厳密にはリーマン積分可能あるいはリーマン可積分)であるという。 「ダルブー積分」も参照 リーマン和、リーマン積分に関連してダルブー(過剰・不足)和、ダルブー(上・下)積分を考察することは有効である。 区間 E = [a, b] の分割 Δ = {Ei} に対して、 m i := inf { f ( x ) ∣ x ∈ E i } , M i := sup { f ( x ) ∣ x ∈ E i } {\displaystyle m_{i}:=\inf\{f(x)\mid x\in E_{i}\},\quad M_{i}:=\sup\{f(x)\mid x\in E_{i}\}} とおくとき、 s Δ = ∑ i = 0 n − 1 m i δ x i , S Δ = ∑ i = 0 n − 1 M i δ x i {\displaystyle s_{\Delta }=\sum _{i=0}^{n-1}m_{i}\delta x_{i},\quad S_{\Delta }=\sum _{i=0}^{n-1}M_{i}\delta x_{i}} をそれぞれ、分割 Δ に関する f の下ダルブー和(不足和)、上ダルブー和(過剰和)という。このとき、m := min{mi}, M := max{Mi} とすれば m ( b − a ) ≤ s Δ ≤ ∑ Δ f ( ξ i ) δ x i ≤ S Δ ≤ M ( b − a ) {\displaystyle m(b-a)\leq s_{\Delta }\leq \sum _{\Delta }f(\xi _{i})\delta x_{i}\leq S_{\Delta }\leq M(b-a)} が満たされることは明らかである。とくに、f が有界ならば(分割 Δ のとり方に依らず)各辺の値はいずれも有限値となる。 ダルブーの定理は下ダルブー和 sΔ の Δ に関する上限 s, 上ダルブー和 SΔ の下限 S の存在をいうもので、リーマン和の極限に対して s ≤ lim | Δ | → 0 ∑ Δ f ( ξ i ) δ x i ≤ S {\displaystyle s\leq \lim _{|\Delta |\to 0}\sum _{\Delta }f(\xi _{i})\delta x_{i}\leq S} なる評価が得られる。ここに現れた s をダルブー下積分といい、S をダルブー上積分という。しばしば、s = ⨜ba f(x)dx, S = ⨛ba f(x)dx のようにも書かれる。すなわち記号的に、 ∫ a _ b f ( x ) d x ≤ ∫ a b f ( x ) d x ≤ ∫ a ¯ b f ( x ) d x . {\displaystyle {\underline {\int _{a}\!\!\!\!}}^{\ \;b}f(x)\,dx\leq \int _{a}^{b}f(x)\,dx\leq \,{\bar {\!\int _{a}\;}}^{\!_{\scriptstyle b}}f(x)\,dx.} これから明らかなように、それらが相等しく s = S となることは、リーマン積分が存在することの必要十分条件であり、上積分・下積分の何れかが存在しないか存在しても一致しないときは "リーマン積分不能" である。
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