み‐す・てる【見捨てる/見▽棄てる】
【ミステル】(みすてる)
第二次世界大戦後期、ドイツ空軍が開発した無人爆撃機(特攻機)。
「ミステル」とは「宿り木」を意味する。
機体は既存の双発爆撃機(ユンカースJu88)と単発戦闘機(Bf109またはFw190)をベースに改造したもので、機首に1.7トンの大型爆弾を埋め込んだ爆撃機の機体上部に戦闘機を接続した形態をしていた。
パイロットは戦闘機側に乗り込み、戦闘機・爆撃機双方の操縦系統を一人で操って目標まで飛行する。
そして目標に接近後、爆撃機を分離。爆撃機は一種の滑空爆弾となり、自動操縦で目標へ突入してこれを破壊する。
一方、パイロットの乗る戦闘機は、分離した爆撃機が目標へ突入するのを見届ければ帰還・再出撃が可能であった。
終戦までに250機以上のJu88が改造され、1944年から実戦に投入されたが、その頃には既に連合国軍航空部隊が圧倒的な航空優勢を手にしており、運動性の悪い同機は発見されれば格好の餌になった。
また更に、「滑空爆弾」となった爆撃機の搭載爆弾も攻撃力はそれほど大きくなく、成果のほどは期待はずれだった。
厚さ7mmの装甲板を貫通できる成形炸薬弾が搭載され、特に艦船への攻撃に有効であると考えられていたが、高価な大型爆撃機を潰して得られる戦果が「当たりどころがよければ戦車1台」というのは、コスト・パフォーマンスの面できわめて効率の悪いものであった。
ミステル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/22 10:04 UTC 版)
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ミステル
ミステル(ドイツ語: Mistel、ヤドリギの意)とは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが開発した特殊な爆撃システムである。有人の小型機と特殊な改造を受けた無人大型機が連結され、目標付近まで飛行した後に、無人機を分離・突入させるという計画だった。
大戦後半に実戦投入されたが、ドイツ軍の相次ぐ敗退により攻撃の機会に恵まれず、大きな成果を挙げることはできなかった。
設計

Ju88 G-10とFw190 F-8との組合せ
ミステルは、目標物に突入する無人機と、その付近まで誘導する有人機とが結合した形態をとっている。この考案者は、ユンカースのテストパイロットであったジークフリード・ホルツバウア (Siegfried Holzbaur) であった[1]。
それぞれ航空機には既存の機体を流用し、無人機には双発爆撃機などの大型機が、有人機には戦闘機などの軽快な機体が選ばれた。組合せとしては Ju 88 / Bf 109(左側が空中発射される無人機 / 右側が有人機)や、Ju 88 / Fw 190 といった一線で活躍するレシプロ機どうしのほか、Ju 287 / Me 262 などの新型ジェット機の使用も検討された。
この内作戦で使用されたのは Ju 88 / Bf 109 の組合せであり、Ju 88 は1.8トンの弾頭を搭載するように改設計された。成形炸薬弾を使用した場合厚さ7メートルの装甲板が貫通でき、特に艦船への攻撃に有効であると考えられた。
実戦

Ju88 A-4とFw190 A-8の組合せ
(いずれも有人機)
1944年6月6日、連合軍はノルマンディー上陸作戦によりヨーロッパ大陸での本格的な反攻を開始したが、これを迎え撃ったのがミステルの最初の実戦となった。この作戦で操縦士は敵艦船への攻撃に成功したと報告したが、連合軍側に損失の記録はなく、マルベリー人工港の一部として自沈し廃艦になっていたフランス海軍の旧式戦艦「クールベ」を活動中の艦船と誤認して攻撃したのではないかと考えられている。ミステルによる攻撃は引き続き行われ、6月21日には至近弾によってイギリス海軍のフリゲート「ニス」を損傷させることに成功した。さらに、スカパ・フローでの作戦も計画され約60機がデンマークの飛行場に集合した[2]。しかし、悪天候と制空権が確保できないために中止されている。
ミステルはソ連との戦いにも用いられた。当初はモスクワやゴーリキーの発電施設を攻撃する鉄槌作戦に用いる予定であったが、戦局の悪化によって計画は中止に追いやられ、代わりに、橋梁を破壊してソ連軍の進撃を食い止めることになった。ドイツの敗北が決定的となる中、1945年4月12日からミステルを使用した攻撃が開始されたが、ソ連側の損害は軽微であり、足止めの効果はほとんどなかった。
終戦までに製造されたミステルは、各種合わせて250機程度だった。
バリエーション
いずれの記述も左側が空中発射される無人機(子機)、右側が有人機(親機)。
- ミステル1
- ユンカース Ju88 A-4 / メッサーシュミット Bf109 F-4
- ミステルS1
- ミステル1の練習機型で、Ju88 A-4も通常の有人型が使用されている。
- ミステル2
- ユンカース Ju88 G-1 / フォッケウルフ Fw190 A-8/F-8
- ミステルS2
- ミステル2の練習機型で、Ju88 G-1も通常の有人型が使用されている。
- ミステル3A
- ユンカース Ju88 A-4 / フォッケウルフ Fw190 A-8
- ミステルS3A
- ミステル3Aの練習機型。
- ミステル3B
- ユンカース Ju88 H-4 / フォッケウルフ Fw190 A-8
- ミステル3C
- ユンカース Ju88 G-10 / フォッケウルフ Fw190 F-8
- ミステル4
- ユンカース Ju287 / メッサーシュミット Me262
- ミステル5
- アラド E.377 / ハインケル He162
- その他、ペーパープランのみで呼称不明の組合せ
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アラド E.377 / He162 (模型)
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Me262 / Me262 (模型)
-
V1 / Ar234C (模型)
- その他、有人機どうしの組合せ
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- アラド E.381 / アラド Ar234C - 有人の小型航空機 アラド E.381 を親機のAr234Cから発射するプロジェクト。
- リピッシュ DM1 / ジーベル Si204 - リピッシュ P.13a開発用のグライダー実験機DM1を親機のジーベル Si204に搭載したもの。
- DFS 228 / ドルニエ Do217 - DFS 228の実験用グライダー機をDo217に搭載したもの。
- DFS 346 / ドルニエ Do217
- メッサーシュミット Me 328 / ドルニエ Do217 - Me 328の実験用グライダー機をDo217に搭載したもの。
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E.381 / Ar234C (模型)
脚注
- ^ 万有ガイド 1981, p. 172.
- ^ 万有ガイド 1981, p. 173.
参考文献
- 石川好美、Matricardi, Paolo『航空機 第二次大戦 Ⅰ』小学館〈万有ガイド・シリーズ 4〉、1981年。
関連項目
- 誘導爆弾
- 桜弾 - 本機の情報と簡単な図面をもとに日本で作られた特攻機搭載型の成形炸薬弾。四式重爆撃機を改造して搭載し、有人誘導で艦船に突入する。
- 桜花 (航空機) - 有人誘導の特攻兵器であるが、「航空機から航空機を切り離し突入させる」という概念は類似している。
- V1飛行爆弾(V-1) - 有人型試作機を作成し試験飛行も行われ、桜花と類似した運用計画があったが実戦投入はなかった。
- ズヴェノー・プロジェクト - 1930年代にソ連で開発された親子飛行機プロジェクト。ズヴェノーSPBは1941年に実戦投入された。
外部リンク
ミステル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/16 02:54 UTC 版)
フューネラル実戦部隊の指揮輸送機。4機のザルクを機体後部にぶら下げて輸送できる。ミステル (mistel) はドイツ語で「やどり木」の意。
※この「ミステル」の解説は、「アルジェントソーマ」の解説の一部です。
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