パワースポット巡礼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/24 05:18 UTC 版)
「スピリチュアリティ」の記事における「パワースポット巡礼」の解説
1960年代よりニューメキシコ州のサンタフェやタオス、アリゾナ州のセドナ、イギリスのグラストンベリーなどはニューエイジの中心地として成長し、こうしたパワープレイス(パワースポット)を巡礼する文化現象が広まっていった。また、ヘルマン・ヘッセやアラン・ワッツ やカルロス・カスタネダの著書が評判を得るなか、1960年代後半から西欧の工業都市よりもスピリチュアルで聖なる場所と見なされたインド、バリ、中南米(ラテンアメリカ)などへヒッピーが旅行するようになった。 1987年8月には太陽系の惑星直列に際してマヤ文明カレンダーに基づく瞑想イベント大会のハーモニック・コンバージェンス(Harmonic Convergence、調和集会)が開催され、ニューエイジの旗手で女優のシャーリー・マクレーンや歌手のジョン・デンバー、LSD研究で元ハーバード大学心理学教授ティモシー・リアリーらが参加し、ホゼ・アグエイアスは平和とハーモニーの新しい時代(ニューエイジ)に移るために14万4千人の瞑想と祈りを訴え、米国のパワースポットをはじめ世界各地でセドナ、シャスタ山、チャコ・キャニオン、ブラックヒルズ、ニューヨーク市のセントラル・パーク、グラストンベリーやストーンヘンジ、マチュ・ピチュ、エジプトのピラミッド、ギリシアのオリンポス山などに瞑想する人達が集結した。これはニューエイジにおける千年王国主義傾向の発端となった。 1991年、写真家コートニー・ミルン(Courtney Milne)の写真集『The Sacred Earth』ではグラストンベリー、オーストラリアのエアーズロック(ウルル)、ハワイのハレアカラ、ボリビアの太陽の島、メキシコのパレンケ、エジプトのギザのピラミッド、エルサレムのオリーブ山、ニュージーランドのトンガリロ山、カリフォルニア州のシャスタ山、チベットのカイラス山、日本の富士山、南アフリカのテーブル山、バリのアグン山やバトゥール山など四つの聖山が撮影され、これらのパワースポットは1990年代に多くの本やウェブサイトでも紹介されるようになった。ニューエイジの地球巡礼者(ニューエイジ・アース・ピルグリム)にとって地球は神聖な存在者であり、パワースポットはガイアの神現祭(Theophany)として巡礼者にパワーとスピリチュアルな神秘をもたらすとされる。 A・イバクヒブは、こうしたガイアとパワースポット、アースエネルギー(地球の力)によるヒーリング(癒やし)、擬人化された聖地の精霊が重要視される自然崇拝的な宗教現象を「ニューエイジ自然宗教 (New Age nature religion)」と呼んだ。 アース・ピルグリム運動やニューエイジの観光客が増えていくことによって、ヒーリング・センター、スピリチュアルな隠れ家やコミュニティ、ニューエイジ内での交易のネットワークなど、国際的なニューエイジのインフラが興隆していくことになった。 特にアリゾナ州のセドナに集結したニューエイジでメタフィジカルな(形而上学的)コミュニティは1950年代からどんどん増加したが、1970年代後半に霊能者のディック・サトフェン(Dick Sutphen)やページ・ブライアン(Page Bryant)らによってセドナはパワースポットまたはボルテックスであると鑑定されてからはドラマティックに増加し、1987年の大イベントであるハーモニック・コンバージェンス集会を結果として生じた。このニューエイジ・コミュニティには、様々な霊能者、スピリチュアル・カウンセラー、セラピスト、代替医療プラクティショナー、ローカルな小売業者、サービス業者が含まれる。スティーヴン・スピルバーグの1977年のSF映画『未知との遭遇』でも、ワイオミング州の巨岩デビルスタワーに宇宙船が降り立って、信号を受信したスピリチュアルな人間が、内からの抑えがたい欲望に従って、自然のランドスケープに惹かれていくのを確認できるし、実際イバクヒブの調査でも多くのニューエイジ信奉者がセドナに対してこの映画と類似した体験を感じたことが報告されている。こうしたニューエイジ宗教において、コズミック・セルフ(宇宙的自己)は、アース・スピリチュアリティ(地球の霊性)に触れることで深層自我のルーツを地球に見出し、ライトボディー(光の身体)に覚醒することが目指される。 日本でも2000年代のスピリチュアルブームの流行のなかでメディアで霊能者が「力がある土地」として紹介した場所「パワースポット」に、開運などの目的で人が押し寄せており、一部で町おこしにも利用されている。また「鎮守の森」巡りなどでは、森林保護のエコロジーと自然崇拝に基づくスピリチュアリティが結びついているともいわれる。パワースポットして境内の一部を紹介された神社では、本殿に礼拝せず「パワースポット」のみ訪れる人も多いなど、既存の宗教や現地との軋轢も起こっている。
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