ハーバード分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 05:41 UTC 版)
ハーバード分類は、天文学者アニー・ジャンプ・キャノンによる1次元の分類である。キャノンは、それまでに存在したアルファベットを用いた分類を並べ直し、単純化した。恒星はそのスペクトルの特徴に応じてアルファベット1文字でグループ分けされ、オプションとして数字で細分化される。主系列星の表面温度は約 2000 K から 50000 K までの値を取りうるが、より進化した恒星は 100000 K を超える場合もある。物理的には、この分類は恒星大気の温度を示しており、通常は温度が高いものから低いものへの順番で並べられる。 型有効温度色度(ベガ基準)質量(M☉)半径(R☉)光度(L☉)水素線存在割合O≥ 30,000 K 青 ≥ 16 M☉ ≥ 6.6 R☉ ≥ 30,000 L☉ 弱い ~0.00003% B10,000–30,000 K 青白 2.1–16 M☉ 1.8–6.6 R☉ 25–30,000 L☉ 中間 0.13% A7,500–10,000 K 白 1.4–2.1 M☉ 1.4–1.8 R☉ 5–25 L☉ 強い 0.6% F6,000–7,500 K 黄白 1.04–1.4 M☉ 1.15–1.4 R☉ 1.5–5 L☉ 中間 3% G5,200–6,000 K 黄 0.8–1.04 M☉ 0.96–1.15 R☉ 0.6–1.5 L☉ 弱い 7.6% K3,700–5,200 K 橙 0.45–0.8 M☉ 0.7–0.96 R☉ 0.08–0.6 L☉ 非常に弱い 12.1% M2,400–3,700 K 橙赤 0.08–0.45 M☉ ≤ 0.7 R☉ ≤ 0.08 L☉ 非常に弱い 76.45% OからMまでのスペクトル型、および後述する他のより特殊な分類は、さらに 0-9 までの数字で細分化される。ここで、0が各分類の中で最も高温のものを表す。例えば、A型星の中ではA0の恒星が最も高温で、A9が最も低温である。小数が用いられる場合もあり、例えばじょうぎ座ミュー星(英語版)のスペクトル型はO9.7である。太陽はG2に分類される。 従来の色の記述は天文学では伝統的なものであり、白色とみなされるA型星の平均色に対する色を表す。みかけの色の記述は、暗い空にある恒星を肉眼や双眼鏡を用いて観察した際に観測者が見る色に対応している。しかし非常に明るいものを除けば、大部分の恒星は肉眼では色覚が働くには暗すぎるため、白色や青白色に見える。赤色超巨星は同じスペクトル型に分類される矮星(主系列星)よりも低温で赤く、また炭素星のような特異なスペクトルの特徴を示す恒星はあらゆる黒体よりもずっと赤くなることがある。 ハーバード分類が恒星の表面、もしくは光球の温度(より正確にはその有効温度)を示しているという事実は、この分類が開発されるまでは完全には理解されていなかった。しかし、ヘルツシュプルング・ラッセル図が初めて定式化された1914年までには、そのことは一般に真実であると考えられていた。1920年代に、インドの物理学者メグナード・サハが分子の解離に関する物理化学のよく知られたアイデアを原子の電離に拡張することにより、電離に関する理論を導出した。彼はその理論を太陽彩層に応用し、さらに恒星のスペクトルにも応用した。 その後、ハーバード大学の天文学者セシリア・ペイン=ガポーシュキンが、O-B-A-F-G-K-M のスペクトルの順序が実際に温度の順番であることを学位論文の研究の中で示した。スペクトルの分類の順番はそれが温度の順番であることが理解される以前から存在しているものであるため、スペクトル型をB3やA7などのようにさらに細分化する際には、恒星スペクトルの吸収特徴の強度の(主に主観的な)推定に基づいている。その結果として、スペクトル型の細分は数学的に表現できるような均等な間隔で分割されてはいない。
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ハーバード分類
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1897年、ハーバードの別の天文学者アントニア・モーリは、セッキによる class I のオリオン亜分類を、残りの class I よりも先に配置した。これは現在の分類で言うと、A型よりも先にB型を置くことに相当する。これを行ったのはモーリが初めてであるが、彼女はスペクトル型の文字は用いず、かわりにIからXXIIまでの22種類の数字を用いた。 1901年、アニー・ジャンプ・キャノンによってドレイパーカタログでの文字による分類が再び用いられたが、彼女は O、B、A、F、G、K、M と N、および惑星状星雲のPとその他の特徴的なスペクトルのQ以外の文字は使用せず、スペクトル型の分類を再編した。またキャノンはB型とA型の中間にある恒星に対してはB5A、F型からG型への5分の1の位置にある恒星に対してはF2Gなどとする分類を用いた。最終的に1912年には、B、A、B5A、F2Gなどの型を、それぞれB0、A0、B5、F2などとする表記法が確立した。これが実質的にハーバード分類の現在の形式として現在まで用いられている。 スペクトル型の文字を記憶する方法としては、温度が高い方から低い方へ、"Oh, Be A Fine Girl/Guy, Kiss Me!"(ああ、お上品な女の子/男の子になってキスしてください!)というものがよく知られている。そのほか、炭素星に用いられていたR型、N型やS型を含めて "Right Now, Sweet!" と続けるもの、後年に追加された褐色矮星などのさらに低温なスペクトル型であるL型やT型を含めて "Let's Tea/Turn/Try!" と続けるものなど、様々なバリエーションがある。
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