ヤーキスのスペクトル分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 05:41 UTC 版)
「スペクトル分類」の記事における「ヤーキスのスペクトル分類」の解説
ヤーキスのスペクトル分類は、1943年にヤーキス天文台のウィリアム・ウィルソン・モーガン、フィリップ・チャイルズ・キーナン(英語版)、エディス・ケルマン(英語版)によって導入された恒星のスペクトル分類のシステムである。提案者らの頭文字を取って MKK システムと呼ばれる場合もある。この分類法は2次元的(温度と光度)なものであり、恒星の光度に関係する恒星の温度と表面重力に敏感なスペクトル線に基づいているが、ハーバード分類は表面温度のみに基づいている。その後、1953年には標準星と分類基準のいくつかの改定を経てこの分類法はMK分類と命名され、引き続き使用されている。 表面重力が強い高密度の恒星は、スペクトル線の圧力広がりが大きくなる。一方、巨星は同じ質量の主系列星よりも半径がずっと大きいため、表面での重力と圧力は小さく、スペクトル線の線幅も小さくなる。そのため、スペクトルの違いは「光度効果」として解釈でき、スペクトルの調査のみから光度階級を割り当てることが可能となる。 以下の表の通り、多数の光度階級が識別されている。 ヤーキスの光度階級光度階級説明例0 or Ia+ 極超巨星 もしくは極めて明るい超巨星 はくちょう座OB2-12 – B3-4Ia+ Ia 明るい超巨星 おおいぬ座η星 – B5Ia Iab 中間サイズの明るい超巨星 はくちょう座γ星 – F8Iab Ib 暗い超巨星 ペルセウス座ζ星 – B1Ib II 輝巨星 うさぎ座β星 – G0II III 通常の巨星 アークトゥルス – K0III IV 準巨星 カシオペヤ座γ星 – B0.5IVpe V 主系列星(矮星) アケルナル – B6Vep VI あるいは sd(接頭辞) 準矮星 HD 149382(英語版) – sdB5 あるいは B5VI VII あるいは D(接頭辞) 白色矮星 ヴァン・マーネン星 – DZ8 光度階級では、隣接した分類の並記も許容されている。例えば、ある恒星は超巨星もしくは輝巨星のいずれかであるという場合もありうるし、準巨星と主系列星の分類の中間に位置しているという場合もありうる。これらの場合、2つの特別な文字が用いられる。 スラッシュ (/) は、その恒星がどちらかの階級に属することを意味する。 ダッシュ (-) は、その恒星が2つの階級の間に位置することを意味する。 例えば、A3-4 III/IV というスペクトル分類の場合、その恒星はスペクトル型がA3とA4の間にあり、巨星もしくは準巨星であることを意味する。 準矮星の分類も同様に用いられる。光度階級 VI は、主系列星よりもわずかに暗い恒星である準矮星に用いられる。 主系列星と巨星の温度を示す文字は白色矮星に対しては用いられなくなったため、光度階級VIIやそれより大きな数字は白色矮星や高温準矮星に対してはほとんど使用されなくなった。 超巨星以外の光度階級に関しても、時おり a と b の文字が用いられる場合がある。例えば、典型的な巨星よりもやや明るい巨星に対しては、IIIbという光度階級が与えられることがある。 光度階級がVの恒星のうち、ヘリウムイオン (He II) の λ4686 のスペクトル線で強い吸収を示す極端なものには、Vz という記号が与えられる。一例はHD 93129B である。
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