ドップラー‐ぶんこうほう〔‐ブンクワウハフ〕【ドップラー分光法】
読み方:どっぷらーぶんこうほう
ドップラー分光法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/23 14:36 UTC 版)
ドップラー分光法 (英: Doppler spectroscopy) は視線速度法とも呼ばれ、太陽系外惑星を探索する方法の一つである。ドップラー効果と、惑星を持つであろう恒星のスペクトルを観測、解析する。
- ^ 、主系列星の周りに初めて発見された系外惑星であるペガスス座51番星bもこの手法で発見されたが、近年ではトランジット法による発見個数が大幅に増加している。 O. Struve (1952). “Proposal for a project of high-precision stellar radial velocity work”. The Observatory 72 (870): 199–200. Bibcode 1952Obs....72..199S .
- ^ “Radial velocity method”. The Internet Encyclopedia of Science. 2007年4月27日閲覧。
- 1 ドップラー分光法とは
- 2 ドップラー分光法の概要
ドップラー分光法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/07 14:53 UTC 版)
「太陽系外惑星の発見方法」の記事における「ドップラー分光法」の解説
ドップラー分光法(英語: Doppler spectroscopy)、惑星の重力で主星がわずかに移動する様子を捉えることで惑星を発見する手法である。視線速度法(英語: Radial velocity)やドップラー法、ドップラー偏移法、ドップラーシフト法とも呼ばれる。一見すると恒星は動いていないように見えるが、周囲を公転する天体が存在している場合、その重力の影響を受けてわずかにふらついて揺れ動いている。この小さな揺れで生じるドップラー効果によって主星から届くスペクトル線の変化(ドップラー偏移)から、周囲を公転する惑星の存在を観測する事が出来る。 惑星の重力による恒星の揺れの振幅 K {\displaystyle K} は、恒星の質量 M ∗ {\displaystyle M_{*}} 、惑星の質量 M p {\displaystyle M_{p}} 、惑星の公転周期 P {\displaystyle P} 、惑星の軌道離心率 e {\displaystyle e} 、惑星の軌道傾斜角 i {\displaystyle i} 、万有引力定数 G {\displaystyle G} を用いて以下のように表される。恒星の質量がこれとは別の独立した手法で求められている場合、恒星の視線速度の変化を表した視線速度曲線から振幅、公転周期、軌道離心率を求めることができ、これらを式に代入すると惑星の質量を求めることができる。この式を見ると、主星に近く質量が大きい惑星ほど振幅が大きくなることがわかる。そのため、ドップラー分光法ではホット・ジュピターのような恒星に非常に近い距離を公転する巨大ガス惑星が発見されやすい傾向にある。 K = ( 2 π G P ) 1 3 1 1 − e 2 M p sin i ( M ∗ + M p ) 2 3 {\displaystyle K=\left({\frac {2\pi G}{P}}\right)^{\frac {1}{3}}{\frac {1}{\sqrt {1-e^{2}}}}{\frac {M_{p}\sin i}{(M_{*}+M_{p})^{\frac {2}{3}}}}} 主星の揺れの振幅は惑星どころか、人間の身長よりも短い場合がある。例えば、木星が太陽にもたらす揺れの振幅は 12.4 m/s なのに対して、地球の場合だとわずか 10 cm/s しかない。しかし、1 m/s ほどの速度で恒星が揺れているならその揺れを分光器で捉えることが可能で、現時点ではそのような高性能な分光器としてチリ、ラ・シヤ天文台にある口径3.6メートルの高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)やW・M・ケック天文台のHIRESなどがある。現在主に使われているドップラー偏移の観測法は、EDI(Externally Dispersed Interferometer)とよばれる方法である。EDIとは、モアレ(干渉縞)を使用することで精度の低いスペクトルであってもドップラー偏移を観測する方法であり、通常のスペクトルの偏移を確認するよりも簡単にさらに安価に行うことができる。 2012年頃までは太陽系外惑星の発見に最も使用された発見方法であった。ドップラー分光法は恒星との距離には依存しないが、高精度の識別には高いSN比を要する。そのため、ドップラー分光法は地球から約160光年以内にある比較的近い恒星がよく対象にされるが、木星質量を越える惑星ならば地球から数千光年離れていても検出することは可能である。1つの望遠鏡で複数の恒星を同時に観測する事は出来ない。現在の分光器では主星から約10 au離れた惑星も捉えられるが、発見までには長い時間がかかる。現在の観測技術で地球質量程度の惑星が検出できるのは、主星が低質量であって軌道が主星に近い場合で、例えばプロキシマ・ケンタウリbなどに限られる。 ドップラー分光法は質量が小さい恒星の周りを公転する惑星も検出しやすい傾向がある。それには2つの理由があり、1つ目は低質量の方が相対的に惑星の重力の影響を大きく受けやすい事と(上記の式でも、恒星の質量が小さいと振幅が大きくなることがわかる)、2つ目は低質量の主系列星は自転周期が遅い事にある。自転が速いと、観測者から見て恒星面の半分がすばやく遠ざかり、一方でもう半分も急激に近づくため、スペクトル線が不明瞭になってしまう。そのため、ドップラー分光法による惑星探索がよく行われるのは、太陽のようなG型星を含む晩期K型星から早期F型星までで、自転が速い傾向にある晩期F型星、A型星やB型星ではドップラー分光法による惑星探索はあまり行われていない。一方で、主系列星の段階を離れて準巨星や巨星、レッドクランプの段階へ進化すると、外層の膨張により表面温度が低下してスペクトル線が多くみられるようになるのに加えて自転も遅くなるため、質量の重い恒星であってもドップラー分光法による惑星の検出が容易になる。 複数惑星系(多重惑星系)や多重連星系でドップラー分光法による観測を行うと誤った信号が生成される事があり、磁場や太陽フレアのような激しい恒星活動によっても誤った信号が生成される事もある。誤った信号が正確な観測記録として残され、後にこれが誤りと判明し発見自体が撤回される事もある。実際に2010年にドップラー分光法で発見された、グリーゼ581gは地球に非常に似た惑星として注目を集めたが、後にこれが誤った観測結果であることが判明し、発見は撤回されている。 地球から見た観測者に対して大きい軌道傾斜角を持つ惑星は目に見える揺れが小さくなるため、検出がより困難になる。ドップラー分光法の主な短所として、上記の式の通り惑星の真の質量は惑星の軌道傾斜角 i {\displaystyle i} に依存するため、軌道傾斜角が分からなければ惑星の質量は下限質量 ( M true sin i {\displaystyle M_{\text{true}}\,{\sin i}\,} ) しか得られないというものがある。ただし、惑星系内に比較的接近した軌道を描く十分な質量を持つ複数の惑星がある場合、軌道安定性の分析により、これらの惑星の上限質量を制限することができる。 惑星の真の質量を求めるには、下記のトランジット法やアストロメトリ法で観測で求められた軌道傾斜角の値を組み合わせる必要がある。 基本的に、ドップラー分光法で発見された惑星の物理的特徴は下限質量しか得られないが、惑星のスペクトル線が得られている場合は、恒星の揺れている速度と距離とを組み合わせる事に成功すると軌道傾斜角を求める事ができ、惑星の真の質量を導く事が出来る。また、この場合だと、信号が誤検知である可能性が除外され、さらに惑星の構成に関する情報ももたらされる。しかしこの場合、惑星が比較的明るい恒星の周りを公転し、惑星が大量の光を反射または放出する場合にのみ、このような検出が可能であるという問題がある。
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