アストロメトリ法
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「太陽系外惑星の発見方法」の記事における「アストロメトリ法」の解説
「位置天文学」も参照 アストロメトリ法(英語: Astrometry method)または位置天文学法は、恒星の周りの天体との相対的な位置などを正確に測定し、その位置が時間と共にどう変化するのかを追うものである。元々、眼視観測の時代から行われ、記録も全て手作業で行っていた。19世紀末までは、この方法は写真乾板を使って行われた。写真乾板は、測定の精度を飛躍的に向上させ、それを基にデータアーカイブが作成されるようになった。上記のドップラー分光法で述べた通り、恒星が惑星を持っている場合、惑星の重力によって恒星もわずかに揺れ動く。ドップラー分光法では、この揺れによって生じるスペクトルのドップラー効果から惑星を検出するが、アストロメトリ法では、恒星の位置のずれを観測する事で検出する。ほとんどの場合、共通重心は大きな方の天体の内部に位置してしまうため、質量差が小さく、共通重心が外側寄りの低質量星や褐色矮星を公転する惑星の検出に有効である。 アストロメトリ法は太陽系外惑星を探索する最古の方法であり、また、位置天文的連星の特徴付けに成功していたため、天文学者達の注目を集めた。アストロメトリ法に関する記述は18世紀後半の天文学者ウィリアム・ハーシェルの記述にまで遡る。彼は、地球から16.6光年離れた位置にあるへびつかい座70番星を観測した際、未知の伴星が、恒星の位置に影響を及ぼしている事を主張した。1855年、ウィリアム・ステフェン・ジェイコブ(英語版)は、この恒星に惑星が存在する可能性があると強く主張し、この惑星の為だけの正式な天文計算を行った。同様の計算はその半世紀後まで続き、最終的に20世紀初頭に否定されるまで行われた。この2世紀に渡って、近隣の恒星を巡る「見えない天体」を確認するために、何度もアストロメトリ法による観測が行われた。1996年、George Gatewoodの発表で、近隣にある恒星の1つであるラランド21185に存在する複数の惑星がアストロメトリ法で発見されたと報告された。これらの主張のどれも観測結果が曖昧で、はっきりとした確証が無かったため、他の天文学者による賛同は得られなかった。恒星の位置の変化はとても小さく、大気の揺らぎなどの影響で、最高性能の地上望遠鏡でも、正確な測定値を得る事は出来ない。1996年までに、この手法によって発見されたとされた太陽質量の0.1倍未満の天体はすべて存在しないとされている。2002年、ハッブル宇宙望遠鏡は、以前からその存在が知られていたグリーゼ876を公転している惑星をアストロメトリ法で観測する事に成功した。 2013年に打ち上げられた探査機ガイアは、アストロメトリ法を使用して数千個の惑星が発見する事が期待されているが、ガイア打ち上げ以前で、アストロメトリ法を使用して初めて発見された惑星は無かった。アメリカのSIM PlanetQuest(2010年中止)は、ガイアと同じような手法で太陽系外惑星の探索を行った。 アストロメトリ法の利点は、軌道長半径が大きい惑星が検出しやすい事にある。そのため、軌道長半径が短い惑星が検出されやすい、他の大部分の発見方法の補完として用いる事も出来る。しかし、軌道長半径が長いと公転周期も長くなるため、トランジット法と同様に長期間の観測が必要になる。また、連星の伴星をアストロメトリ法で観測する場合は、互いの恒星に生じる摂動によって、容易に観測出来るが、そこに存在する惑星を観測するには、他の発見方法による追加観測が必要となる。 2009年、アストロメトリ法によって、赤色矮星VB 10を公転している惑星候補が報告され、VB 10 bと名付けられた。観測から、VB 10 bは木星の約7倍の質量を持つとされ、確認されれば、アストロメトリ法によって確認された初めての太陽系外惑星となるが、近年のドップラー分光法による観測で、その存在に懐疑的な意見が出されている。 2010年には、6つの恒星に、伴星が存在する事が判明し、そのうちの1つHD 176051系には、惑星が存在する可能性が高いとされた。
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