VB 10とは? わかりやすく解説

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VB 10

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 04:57 UTC 版)

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VB 10
ヘール望遠鏡で撮影したVB 10の1999年から2008年までの固有運動
仮符号・別名 GJ 752B[1]
ファン・ビースブルック星[2]
星座 わし座
見かけの等級 (mv) 17.30[1]
変光星型 閃光星[1]
分類 M型主系列星[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  19h 16m 57.622s[1]
赤緯 (Dec, δ) +05° 09′ 02.18″[1]
赤方偏移 0.000097[1]
視線速度 (Rv) 29 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -582.307 ミリ秒/年[1]
赤緯: -1371.830 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 170.1 ± 0.8ミリ秒[1]
(誤差0.5%)
距離 19.17 ± 0.09 光年[注 1]
(5.88 ± 0.03 パーセク[注 1]
軌道要素と性質
元期:J2000.0
グリーゼ752Aからの平均距離 74 ミリ秒
(約434 au)
惑星の数 1?
物理的性質
半径 約0.102 R[3]
(0.497 RJ)
質量 0.0779 M[4]
(81.6 MJ)
自転速度 6.5km/s[5]
スペクトル分類 M8.0V[1]
表面温度 2,600 K[3]
色指数 (B-V) 2.12[1]
金属量[Fe/H] 0[4]
年齢 <1.0×109[4]
発見
発見年 1944年
発見者 ジョージ・ファン・ビースブルック
発見方法 天体写真
他のカタログでの名称
BD+04 4048 B[1],
わし座V1298星[1],
WDS J19169+0510B[1]
Template (ノート 解説) ■Project

VB 10グリーゼ752B、ファン・ビースブルック星[2])は、わし座の方向に、地球から約19光年離れた位置にある赤色矮星である。

概要

大きさの比較
木星 VB 10

VB 10は、M型のスペクトルタイプを持つ小さな赤色矮星である[1]。質量は太陽の0.0779倍しかなく、木星と比べても81.6倍しかない。これは恒星褐色矮星の境界部に相当する。これは発見当時、ウォルフ359の0.09Mを下回る、最も軽い恒星であった[3]。地球から約19光年という近い距離にあるにも関わらず、視等級は17.3しかない非常に暗い恒星である[1]

VB 10は、非常に大きな固有運動を持つ[1]。この大きな固有運動のため、発見以前の乾板写真で撮影されていたにも関わらず、VB 10自身の暗さもあって存在が見逃されていた。

VB 10は閃光星であり、大規模なフレアを放出する。ハッブル宇宙望遠鏡は1990年代半ばに、普段は表面温度が2,600Kしかない冷たい恒星から、最大で10万℃に達する高温のフレアを観測している[3]。VB 10は、グリーゼ752Aと重力的に結び付いた連星である。グリーゼ752Aも変光星であり、りゅう座BY型変光星であるが、グリーゼ752AはVB 10の6倍重い恒星である。VB 10とは約434au離れている。

グリーゼ752AとB (VB 10) の大きさの比較と、内部のダイナモの図。

発見

VB 10は、マクドナルド天文台オット・シュトルーベ反射望遠鏡を利用して、ジョージ・ファン・ビースブルックによって1944年に発見された[6]。VB 10は、連星であるグリーゼ752Aの大きな固有運動の観測中に発見された。グリーゼ752Aは、マックス・ヴォルフによって25年前に同様の方法で「ウォルフ1055」としてカタログされていた[6]

名前

惑星の存在可能性

2009年5月28日NASAジェット推進研究所は、ヘール望遠鏡を使用して、VB 10に太陽系外惑星VB 10b[7]を発見したと発表した[8][9]。ヘール望遠鏡は、大気によるゆらぎを補正する補償光学装置を備えており、高い精度で恒星の位置を観測する事が出来る。その結果、VB 10に非常に小さなずれが観測された。この揺らぎは、3km離れた髪の毛1本分という非常に小さな揺らぎである。この揺らぎは、質量が木星の6.4倍、公転周期が271.6日である惑星によるものとされた[7]。VB 10とVB 10bの質量差は12.8倍もの差があるのに対して、直径はほぼ同じとされた[8][9]。VB 10bが実在するならば、位置天文学法によって発見された最初の太陽系外惑星である[8][9]。しかし、その後ドップラー分光法による観測では、予測される程度のドップラー効果を検出する事は出来なかった[10][11]。これは、この惑星の真の質量が、最初の観測値の半分以下、木星の3倍程度である可能性がある。いずれにしても、VB 10bの存在はまだ確定していない[7]

VB 10の惑星
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b (未確認) 6.4+2.6
−3.1
[4] MJ
0.360 +0.006
−0.016
[4]
271.56+3.0
−3.0
[7]
< 0.98[4] 96.9 +7.4
−1.8
[4]°

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v VB 10 -- Flare Star”. SIMBAD. CDS. 2017年3月12日閲覧。
  2. ^ a b c Stuart Lowe、Chris North『COSMOS - インフォグラフィックスでみる宇宙』吉川真訳、丸善出版、2016年12月10日、135頁。ISBN 978-4-621-30072-5
  3. ^ a b c d Linsky, Jeffrey L.; Wood, Brian E.; Brown, Alexander; Giampapa, Mark S.; Ambruster, Carol (1995). “Stellar Activity at the End of the Main Sequence: GHRS Observations of the M8 Ve Star VB 10”. The Astrophysical Journal 455: 670. doi:10.1086/176614. ISSN 0004-637X. 
  4. ^ a b c d e f g Pravdo, Steven H.; Shaklan, Stuart B. (2009). “AN ULTRACOOL STAR’S CANDIDATE PLANET”. The Astrophysical Journal 700 (1): 623-632. doi:10.1088/0004-637X/700/1/623. ISSN 0004-637X. 
  5. ^ Jenkins, J. S.; Ramsey, L. W.; Jones, H. R. A.; Pavlenko, Y.; Gallardo, J.; Barnes, J. R.; Pinfield, D. J. (2009). “ROTATIONAL VELOCITIES FOR M DWARFS”. The Astrophysical Journal 704 (2): 975-988. doi:10.1088/0004-637X/704/2/975. ISSN 0004-637X. 
  6. ^ a b van Biesbroeck, G. (1944). “The star of lowest known luminosity”. The Astronomical Journal 51: 61. doi:10.1086/105801. ISSN 00046256. 
  7. ^ a b c d Planet VB 10 b”. Extrasolar Planets Encyclopaedia. exoplanet team. 2017年3月12日閲覧。
  8. ^ a b c Planet-Hunting Method Succeeds at Last”. NASA (2009年5月28日). 2017年3月12日閲覧。
  9. ^ a b c 古典的な系外惑星検出法がついに成功”. AstroArts (2009年6月2日). 2017年3月12日閲覧。
  10. ^ Bean, Jacob L. et al. (2010). “THE PROPOSED GIANT PLANET ORBITING VB 10 DOES NOT EXIST”. The Astrophysical Journal 711 (1): L19-L23. doi:10.1088/2041-8205/711/1/L19. ISSN 2041-8205. 
  11. ^ Anglada-Escudé, Guillem; Shkolnik, Evgenya L.; Weinberger, Alycia J.; Thompson, Ian B.; Osip, David J.; Debes, John H. (2010). “STRONG CONSTRAINTS TO THE PUTATIVE PLANET CANDIDATE AROUND VB 10 USING DOPPLER SPECTROSCOPY”. The Astrophysical Journal 711 (1): L24-L29. doi:10.1088/2041-8205/711/1/L24. ISSN 2041-8205. 

関連項目

座標: 19h 16m 57.622s, +05° 09′ 02.18″


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